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討伐実習編その13 もしくは街田奈々子編後編

 今さらですが、ここにきて数日経過しているのにおなかがすきません。

 虎だと思っていたのですが、実は虎に似た何か別のものかもしれません。


 ごはんが食べられないのはさみしいですが、食べられるものが見つからないので食べなくてもいいのはラッキーといえるでしょう。


 ということで、今日はわたしのうっすいチート知識が炸裂するぜ!


 今まではやみくもに歩いていたのでどこに向かっているかもわかりませんでしたが、たしか道に迷ったときは稜線に向かっていけばよいはずです。


 問題はここが山ではないことでしょう。


 チート知識終了しました。


 つぎのチート知識です。

 森の中で迷ったときは、少し離れた2本の木に目印を付けて、後ろを向いた時にその2本が重なって見えるように歩くことを繰り返していけば、まっすぐ歩けるはずです。


 ではこのわたしの真っ白な前足が勝利をつかめと轟き叫ぶ!


 少し高めの位置に爪で傷跡を付けてみました。

 そして適当な方向へ向かい、ぶつかった木にもまた爪痕を付けます。


 時々振り返りながら進んでいきます。

 おお、今のところはなんとかなりそうです。


 今日はそこそこ進むことができました。

 久しぶりに心安らかに眠れます。




 引き続き今日も昨日と同じように印をつけながら進んでいきます。


 しかしこの森は全然動物がいません。

 もしかしてわたしに恐れをなして逃げ出したのでしょうか。

 そんなわけないか。


 で、お昼も過ぎてもうすぐ夕方かなあという頃。


 何か近づいてくるような気がしたと思ったら、目の前になにか飛び出しました。


 あ、やっと生き物を見つけました。ちょっと、凄いかわいーんだけど!


 小さくて白くて細い体をしています。

 イタチ? それともミンク?


 相手もこちらを見て驚いているようですが、逃げる気配は今のところありません。


 さて第一異世界動物遭遇です。

 これで意思疎通ができれば、言うことなしなのですが、動物相手では無理ってものです。


“あなた、言葉が分かるの?”


 おおう、いきなり脳内に声が響きました。

 ちょっと中二病っぽいですよ。わたしは中二病なんかなった覚えはありませんよ。


“チュウニビョウ? あなたの言っている言葉の意味がところどころわかりませんが、わたしはあなたの目の前にいるシロテンで、レーリーといいます”


 シロテンのレーリーさんですか。

 これはこれはご丁寧に。わたしは城西高校1年3組 街田奈々子といいます。


“あなたは、なぜここにいるのですか”


 なぜって、それはわたしが聞きたいくらいですよ。なぜなら授業中に気を失って、目覚めたらこの森の奥で虎になっていたんだから。


“ああ、そうするとおそらくあなたも私と同じ境遇なのですね”


 ほう、レーリーさんと同じ境遇ですか。それはどういうものでしょう。


“わたしも聞いた話ですが、少し前に別の大陸で異世界から勇者召喚というものが行われたそうです。

 そして、その余波に巻き込まれて、関係ない人たちがいろんな世界からこちらに飛ばされてきているそうですが、その際に体が作り替えられることもあるようです。

 わたしも元の世界では人間でしたが、いまはこんな姿になっています“


 え、ということはもう戻れない?


“おそらく難しいと思います”


 あー、やっぱりそうだったのね。まあこの体になっていたから難しいかもとは思っていたけど、現実を突きつけられると落ち込むなあ。


“それで、マチダナナコさんといいましたか。あなたはこの後どうしますか?”


 どうする、とは?


“実は、あなたが森の奥から出てきたおかげで、あなたに追われた魔獣がどんどん森から出てきており、ちょっとした騒動になりつつあります”


 おおう、動物に合わなかった理由がまさかの正解。


“それで、わたしはあなたが発している強い魔力を探知して、あなたをどうにかして森の奥へ誘導するつもりでここにきたのです。

 あなたがもしも今後人と関わらないのであれば、森の奥へ行ったほうがよいでしょう。

 人と関わりたいのであれば、わたしが言うのもなんですが従魔になることをお勧めします“


 ううん、やっぱり人恋しい気持ちはあるし、森の奥で引きこもりたくはないなあ。

 だけど従魔ということは、だれかの僕になるんだよね。


“ええ。ただそれが受け入れられないと、あなたは討伐対象になるから、人里に近づくと命を狙われることになります。

 ですから、森の奥で引きこもり人との交わりを断つか、従魔になり人と共に生きるかの二択になります“


 そっかー、たぶん頑張れば他にも選択肢はありそうだけど、それはそれで面倒そうだしなー。どうしよっかなー。


「レーリー! レーーリーーー!」


 お、なにやら声が聞こえてきた。

 と思ったら人が現れた。

 第一異世界人です。正真正銘人間が、それも私と同じくらいの少女現れました。


 ただ、わたしを見て固まっています。明らかに驚いて動けなくなっています。

 そっかー、改めて実感したけどわたしって恐怖対象なんだ。


 考えてみれば、元の世界でも、もしも歩いてていきなり虎と出くわしたらびっくりするよね。


 で、レーリーがその少女に近づいて行って、なにやら話しているようだ。

 少女が時々何かを言っているけど、何を言っているかは理解できない。

 わたしの知らない言葉のようだ。万能翻訳とかあればいいのに。


 あれ、そういえば勇者召喚とか魔力とか従魔という言葉が出てきてたよね。

 じゃあ魔法はあるのかな?


 しばらく二人の話が続いたので、わたしはのんびり待つことにします。




“ナナコさん、この人はメイリンといい、召喚士です。もしも人の中で暮らしたいなら、この人と従魔契約することで可能になるでしょう。

 ただし一度従魔契約を結ぶと簡単には解除できませんし、メイリンの命令には絶対服従になります。また命令がなければメイリンから長時間離れることも難しくなるでしょう。

 そうした覚悟はありますか」


 話し合いが終わったと思ったら、レーリーから改めて提案が。

 おおっと、結構契約の条件はわたしに厳しいものらしい。

 そっか、危険な動物を使役するんだから、ペナルティを設ける必要があるわけね。


 絶対服従といっているけど、少なくともレーリーを見ている限り自由がないわけじゃないと思う。


 そう考えると、契約対象が女子なのはポイント高い。

 少なくとも小汚いおっさんと契約するよりはましかな。

 だけどイケメンのお兄さんとかと契約できるなら、ちょっとそっちのほうがいいかも。

 だけどそれは贅沢ってもんだ。


 そもそもわたしはそれほど自発的な方じゃないし。

 趣味で小説を書いているけどどうせ10万文字越えてもブクマが二桁に届かない程度だし。

 会社を起業する側ではなく、使われる側。社会の歯車になるタイプ。

 歯車の何が悪いんですか。歯車が一つ欠けたら、機械は正しく動かないんですよ。

 鶏口となるも牛後となるなかれとは確かに良い言葉です。

 ですが牛後の何が悪いというのですか。

 しっぽにだって役割はあるんですよ。

 皆が鶏口になったら、だれが牛の体になるんですか。そしたら焼き肉も食べられないじゃないですか。


 ……。


 ちょっと混乱しました。


 とにかく、冒険より安住です。

 そもそもわたしが契約せずに人里に近づくのはトラブルの元らしいし、ここはいっちょ思い切りましょう。

 女は度胸なんですよ。


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