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討伐実習編その9

 魔動車で1時間ほど走り、わたしたちは今回の依頼を出したランバー村についた。

 村長が出てきて、アルドア様とシーベル様が改めて依頼内容の確認をする。


 そして村の北側に広がる田園地帯の先にある、森の近くまで来た。


「この辺りで実際の依頼を消化することになる。基本的に田畑には足を踏み入れないが、もしも田畑に侵入した魔獣がいた場合は、その限りじゃあない。それでも可能な限り、作物に被害が出ないように注意してほしい。

 たとえばランクが低い魔法でも畑に向かって乱発すると作物を駄目にしてしまうことがあり、その分評価を下げないといけなくなる。

 だからもしも田畑に侵入した魔獣を見つけたら、魔法を撃つ場合はできるだけピンポイントで狙い撃つか、もしくは武器を使うほうがいいだろう。

 ただしこれも絶対ではなくマナーのようなものだから、例えば大量の魔獣が一度に畑に侵入してきた場合や、ランクの高い魔獣を相手にする場合は、より大きな被害を抑えるために高ランク魔法で素早く退治する必要がでてくる。

 そのあたりは臨機応変な対応になるだろう」


 ダブタン氏がそのように説明を終えた。この後、彼は監視官として基本的にはわたしたちの行動を見るだけとなり、口出しすることはなくなる。


 いよいよ本番ということで、いかにも気分が高揚しているアルドア様がわたしたち全員を集めた。


「さっそくだけど、俺のウイングオウルで森の中を偵察、ホーンラットを見つけたらこちらへ誘導ということでいいか」


“その前に、まずこの辺りの地形を確認したほうが良いので、そのように伝えてください”


 う、レーリーが口をはさんできた。


『さすがにそこまでは必要ないと思うんだけど』


“……わかりました。それではわたしがこの辺りの地形を見てきてもいいでしょうか”


 いや、従魔を勝手にうろつかせるわけにもいかないし。

 ……おそらくレーリーのほうがわたしたちよりも経験は豊富だし、正しいのだろう。


「あの、狩りを行う前にこの辺りの地形というか、ようすを下見したほうがよいのではないでしょうか」


「下見しなくても大丈夫だろ」


「ですが、実際に戦っている時にくぼ地があったり、小川があったりすると思い通りに動けないかもしれません」


 わたしがそういうと、アルドア様も考え込んだ。


「確かにその通りですわね。わたしたちはホーンラット退治の依頼を受けた訳ですが、同時にこれは実戦訓練なのですから、できることは手を抜かずきちんと行うべきでしょう」


 サシャ様がわたしの言葉に同意してくれた。


「サシャもそういうなら、そうしよう。確かにこれは俺たちにとってはただの討伐依頼ではなく訓練でもあるんだった」


 おお、さすがサシャ様。アルドア様も納得してくれた。


 それから1時間ほどかけて周辺の地形などを確認したが、やはり下見は大事だった。


「こんな深い溝があるなんて聞いていなかったな」


「おそらく村人たちが魔獣除けに掘った空堀でしょう。知らずに戦っていたら、わたしたちのほうが落ちていたかもしれませんわね」


「しかしこの空堀は利用できるではないか。あいてをここまでおびき寄せて落としてしまえば、かなり安全に仕留められるぞ」


 空堀を超えた先も一応確認していく。


「こんなところでも細い道があるんだな」


“これはいわゆる獣道ですね。たぶんここを通ってホーンラットが畑まで来ているんでしょう。ですから、この道に沿ってウイングオウルに探索させて、このあたりで待ち伏せするのが効率的でしょうね”


 そうか。魔獣たちも自分のテリトリー内で通り道を作ると学んだっけ。


「たぶんこれは獣道です。ですからまずはこの道沿いに探索や待ち伏せをするのがよいのではないでしょうか」


 レーリーに聞いたことに合わせて進言する。

 するとサシャ様が同意してくれた。


「確かにそのようですね。効率を考えればメイリンが言う通り、ここを中心に行動するのが良さそうですわ」


 その言葉にみなも賛同し、最初はこの獣道を中心にホーンラット狩りをすることになった。




 また一匹、ウイングオウルがホーンラットを追い立ててくる。


 空堀の手前の灌木に身を隠していたわたしたちは、姿を現したホーンラット目掛けて魔法を撃ち、簡単に仕留められた。


 あれから1時間ほどだが、すでに10匹を討伐している。


「本当にこんなに簡単でいいのでしょうか」


「だが地形を利用して、敵をこちらの有利な場所へ誘導することは別に間違っていないだろう」


 サシャ様の言葉に、シーベル様が答えた。

 確かに、安全に戦える環境があるのに、無理に危険な方法を試す必要はない。


 ちなみに効率が良い理由にはもう一つある。


 現在、戻ってきてアルドア様の肩に乗っているウイングオウルだが、なぜか私の方を向いている。


 正確にはわたしの肩に乗っているレーリーの方を向いている。

 そしてレーリーも、なにやらウイングオウルと向かい合っている。


 これは最初にホーンラットを探しに行くときから行っていたんだけど、何を行っているのかを聞いたら、なんとホーンラットの居場所をウイングオウルに教えていたそうだ。


 レーリーの魔力探知能力は相手に気づかれないほどの高度なものだが、その範囲も非常に広いらしい。

 つまり、ウイングオウルはレーリーの探索範囲にいるホーンラットを順番にこちらまで追い立てているわけで、効率がいいのも当然なのである。


“ただ、1時間足らずで10匹というのは少し多いのではないかと思います。

 実際、わたしの探知範囲には、まだ20匹くらいいますから“


 うーん、もともと探すのに時間が取られることも見越しての2泊3日という日程なのだけど、確かにこれだけいると、多いようにも思える。


 わたしはダブタン氏のほうを見た。


 ダブタン氏は基本口出しすることはないが、なにか異常を察した場合はその限りではない。


 現状をどう感じているのか難しい顔をしてはいるが、まだ口出しするほどではないと考えているようだ。


「まだ時間はありますし体力もあまり使っていませんから、まだまだいけますけど、一応依頼数は超えています。

 いったん休憩としませんか」


 エリナ様の言葉に、皆が頷き休憩となった。


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