討伐実習編その8
で、結局その後も何度かレーリーを相手に連携訓練を行ったが、結局レーリーには勝てなかった……。
“実際のところ、最後の方はかなり本気で対応していましたし、これだけ対応できていれば実戦も問題ないでしょう”
『いや、その前に全員の心が折れかけているんだけど。というか、まだ全力じゃないんだ』
“皆さん、打たれ強いようなので大丈夫でしょう。心配であれば、わたしが以前、ハイオークを倒したことがあると言えば、かえって自信がつくのではないでしょうか”
『さすがにそれは言えない。というか、いつ倒したんだという話になるし』
だけど、確かにいい考えなんだよね。
そうか、別にハイオークを倒したこととか、正確な情報を伝える必要まではないのか。
「今更ですが、一応伝えておきます。レーリーについては、カイル先生によるとランク3以上の可能性があるそうです」
「ランク3……」
「いや、確かにこれだけやって勝てないのだから、ランク3以上というのも納得できる。というか、それぐらい強い相手だったのでないと俺たちが情けないだろう。
少なくとも俺たちだけではランク3以上の魔獣の相手はまだ早いということが分かっただけでも良しとしよう」
アルドア様の言葉に、皆も頷いた。
とりあえず皆の自尊心が守れたようなので良しとしよう。
翌日、学園に到着したときに珍しくゲイツ君が話しかけてきた。
「メイリンさんはあまり感情が表情に出ないので、周りに関心がないように思っていましたが、意外といろいろ見ているんですね」
なんと、無関心少女と思われていた。
確かに昔から落ち着いている子だと言われていたけど、なんでだろう。
「それに貴族の方々にも思っていることをはっきり言えて、びっくりしました」
それはレーリーのせい。わたしは基本臆病なのですよ。
とはいえ、レーリーのことを明かすわけにもいかない。
“メイリンには勇気がいるけど、シーベル様やアルドア様には人の話を受け入れる度量があるようですね”
おお、いい言葉だ。
「別にわたしが凄いわけではありません。人の話を聞いて、それを考慮に入れてくださる方がえらいのだと思います」
「確かに、アルドア様はわたしにも分け隔てなく接してくださいますので、良い方です」
実際のところ、アルドア様やサシャ様は今後の進路如何では貴族籍から外れる可能性もあることを理解しているので、平民に対しても過度に見下げた態度はとらない。
アルドア様がわたしに絡んでくることがあるのも、どちらかというと競争心みたいなものだと思うし。
“それはどうでしょうか”
どうでしょうかって、どういう意味かな?
「それにしても、メイリンさんは本当にすごいですよね。レベル3の従魔を従えていることもそうですが、その従魔を自在に指示して、わたしたち全員を相手にしてまったく敵わなかったんですから」
あ、それ過大評価というか、全部レーリーがやったこと。わたしは何一つやっていない。
「わたしはなにもことはしていませんよ」
「謙虚でもあるんですね」
なんか、盛大に勘違いされているようだけど、面倒だからほっとこう。
出発当日の早朝、わたしたちはダブタン氏と魔動車乗り場で待ち合わせをし、依頼を出した村へ向かった。
「まず依頼者に会い、わたしたちが依頼を受けた場所の確認を行う。現地でも簡単に心構えの説明はするが、そこからは基本的にわたしは皆さんを見ているだけになるので、自分たちで考えて動くように」
ダブタン氏が車の中で今後の流れを簡単に伝える。
「今回は、夜は動かない。村に戻って休むことになる。たぶん夜間の行動については来年以降にまた実習があるだろう」
「ダブタンさんも、魔法学園の卒業生ですか」
アルドア様が尋ねた。
「そうだ。卒業後は一度国軍に所属したが、俺には合わなかったんで、1年で除隊して傭兵になったんだ」
「傭兵は仕事が安定しないとも聞きますが」
「贅沢はできないな。ただこういう仕事もあるし、国中の村落からの討伐依頼はほぼ途絶えることはない。まあ家族を養うくらいの稼ぎは、その気になれば可能だ」
「ダブタンさんは結婚なさっているのですか」
今度はサシャ様が尋ねた。
「ああ。傭兵になってからだが、結婚して娘もいる」
おおー、という声が上がる。
その後もしばらくその話題で盛り上がっていた。




