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討伐実習編その7

 さて、レベル2ということで、今度はレーリーは火魔法と魔法障壁を解禁とした。

 魔獣の中には、毛皮自体が魔法の効きにくい相手もいる。

 まあレベル2ではそこまで魔法耐性の強い相手はいないが、いわばこちらが魔法を本気で撃ったときにレーリーが怪我をしないためである。


 ただ火魔法については、一度に一回とし、連射は禁止となった。さすがにレーリーにファイヤーアローを連射されるとこちらが危ない。


 レーリーが先ほどのように物理障壁を出すか、わたし経由で降参の合図をしたならレーリーの負け。

 もしもこちらの攻撃が届く前にレーリーが所定のエリア外に逃げきるか、もしくは誰かひとりでも大けがで戦闘続行不能の判定になった場合はこちらの負けである。




 さて、レーリーは先ほどと同じ場所で待ち構えている。

 アルドア様も、先ほどと同じようにウイングオウルを使って追い込みを行う。


 先ほどはレベル1のホーンラットをイメージしてウイングオウルから逃げたレーリーだが、今回は別に逃げなくても良いと判断したようだ。


 風魔法を避けると、ウイングオウルに向き合っている。

 ファイヤーアローで反撃するかと思ったけど、そうでもないらしい。


 ウイングオウルに対しては、アルドア様が事前に敵をこちらへ誘導するよう指示を出しているので、風魔法が通じないとわかると、今度は爪で直接攻撃するために空から接近していく。


 レベル1程度の魔獣なら爪による攻撃を避けて、逃げ出すのだろう。

 だがレーリーは多分違うことを狙っている。


 案の定、レーリーは爪の攻撃を躱すと、わたしたちと反対方向へ逃げてしまった。


「おいメイリン、あれは卑怯じゃないか?!」


「一応、向こうから来たという設定なので、危険を察知して自分の巣へ帰るという意味では間違いないと思います」


 先ほどレーリーから言われた通りに返答する。


「くそっ、何とか追いつけ―」


 アルドア様が大声で叫ぶ。

 今回の訓練エリア内から出てしまうとこちらの負けというルールなので、なんとかその前に追いつかせようと必死だ。


 ただ、レーリーはただ逃げているわけじゃないんだよね。


 訓練エリア内ギリギリのところに立っている木に、レーリーは駆け上がる。

 おお、さすが木登りもうまい。


 木の上からこちらを見ているレーリーに向けて、ウイングオウルが向かっていくが、実はそれは罠なのだ。


 近づいてきたウイングオウルを躱すと、そのまますれ違ったウイングオウル目掛けて、枝の上から飛び乗った。


「な!戻ってこい!」


 驚いたアルドア様が慌ててウイングオウルに戻ってくるよう指示を出している。

 本当にレーリーが予想した通りに進んでいく。


 ウイングオウルの背中に乗ったレーリーは、アルドア様の近くまで来るとそこから飛び降りて彼の頭の上に乗った。


「アルドア様、大けが判定です。わたしたちの負けです」


 わたしがそう宣言する。


「いや、今のはズルいだろう! なんでウイングオウルに乗って戻ってくるんだよ!」


「ウイングオウルに乗った時点で、本当ならウイングオウルが戦線離脱扱いなんじゃないか?」


 アルドア様とシーベル殿下がそれぞれ抗議をしてくる。


「ウイングオウルに乗ることができたので、レーリーは乗ったにすぎません。もしもその時点でウイングオウルが戦線離脱扱いになるなら、そのままエリア外に逃げられるので、やはりわたしたちの負けです」


 二人とも反論できないようだ。


「連携訓練は、こうした予想外の事態に遭遇しても、慌てずに対処できるかも合わせて行うべきでしょう。魔獣はわたしたちの都合よく動くとは限りませんので」


 と、レーリーは言っています。わたしは代弁者に過ぎないので、そんなに睨まないでください。

 といってもわたしが矢面に立つしかないんだけど。なにこの理不尽さ。


「本当ね。では先に今の流れの反省から行なうのはいかがでしょう」


 おお、エリナ様が同意してくれた。

 第一印象は最悪だったけど、今はとってもいい人だと思えます。


「そうね。まずウイングオウルによる偵察と誘導自体は問題ないと思うけど、ウイングオウルが対応できないような魔獣だった場合の対応が問題ね」


 サシャ様が感想を言うと、アルドア様も同意した。


「確かに俺はただ獲物を追い込むようにしか命じなかったな。もしも予想以上に強い敵だった場合は、それに対応できるように命じるべきなのか」


「だがそうなると追い込めなくなるぞ」


「ウイングオウルで魔獣の強さをある程度でも判断できませんの?」


「自分が敵うか敵わないかくらいは判断できる。つまりウイングオウルが敵う相手の場合はそのまま追い込みをさせてよいが、敵わない相手のときは別の方法をとらせればよいのか」


「少なくとも、そのままウイングオウルを突っ込ませるよりはよいと思いますわ」


「であれば、相手が強い時は単純に戻ってくるよう指示を出せばよいであろう。そうすれば、その後の対応を改めて検討しやすい」


「そうね。殿下もお分かりになってきたようね」


「殿下はやめろ」


「ではシーベル様と」


「うむ、皆もわたしのことを殿下と呼ぶ必要はない」


 わたしも含めて皆が頷く。


「で、基本的な対応を今のうちに決めると、ウイングオウルが戻ってきた場合は、今度はわたしのナイトゴーレムと一緒に相手に向かわせ、わたしたちはその後ろから近づくのが良いだろう」


「ですが、それでは逃げられる可能性もございますが?」


「今の訓練で思い出したのだが、今回の課外授業の目的は『魔獣を倒す』ことよりも『依頼を達成する』ことだ。だからこそ、学園にも依頼の達成報告が行われる。

 つまりどんなに強い魔獣を倒そうが、あるいは数多くの魔獣を倒そうが、依頼を達成できなかったり、だれかが大けがをしたりしたなら、グループ全体として今回の課外授業の成績がつかないだろう」


 え、本当にシーベル様本人?


 もしかするとわたし以外の皆も同じ顔をしていたのだろう。

 シーベル殿下が怒り出した。


「なんだその顔は!? わたしが何か間違っているというのか!」


 誰も口を開けない中、何事もないようにエリナ様が答える。


「いえ、おそらく皆、本当にシーベル様ご本人だろうかと疑っているのですわ」


「なんだそれは?」


「いえ、非常にまともなことを言われたので……。エリナはうれしく思いますよ。シーベル様がこんなに成長してくださって」


「おまえ、わたしを馬鹿にしているだろう」


「そんな恐れ多い。わたしはシーベル様をお慕いしていますわよ」


 エリナ様って、本当に強心臓だ。他のメンバーではあんな言い方はとてもできたものではない。


「それよりも、先ほどの話を続けましょう。シーベル様が言われる通り、もしもアルドア様のウイングオウルより強い敵が出た場合は、倒すことよりも追い返すか、相手の正体を探ることを前提に動き、相手をするのはあくまでも倒せそうなときに限るということでよろしいでしょうか?」


 エリナ様がまとめられる。


“そのあたりが現状の目標としては無難でしょうね”


 おお、レーリーからもお墨付きが出た。


“ただし本当に強い敵に出くわしたときは、逃げることも難しいということもわすれないようにお願いします”


 おお……そういうことを言うと、本当になりそうだから言わないでほしい……。


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