討伐実習編その5
出発までの間に改めてチームメンバーと能力を確認して、連携の練習をすることになった。
まずサシャ様は魔法については水魔法と風魔法に適性があり、それぞれランク3まで使える。
次にアルドア様は魔法が火魔法、土魔法、風魔法の3属性に適性ありそれぞれがランク2まで使える。また召喚獣としてウイングオウルという鳥系の従魔を従えている。
さらに剣術も得意だということだ。
アルドア様の従者でもあるゲイツ君は、水魔法がランク3まで使える。
あと、アルドア様を守るための壁役として、盾を持つだけでなく、さらに魔法障壁、物理障壁の魔法をランク3の強度まで使えるそうだ。
エリナ様は回復魔法単独でランク4まですでに使えるということだ。
で、シーベル殿下は土魔法、水魔法が使えるが、ランク2まで。
あと召喚獣としてご存知ナイトゴーレムを使える。
ついでに槍を扱えるらしい。
「で、メイリンの従魔は火魔法が使えることと、メイリン自身は全魔法適性持ちで、それぞれランク2までの魔法が使えるわ」
サシャ様がわたしの能力を説明してくれた。
「討伐対象はホーンラットでしょう。少々戦力過剰気味かもしれませんわね」
「あくまで5匹というのは最低ノルマで、村の近くにでた分は可能な限り討伐してほしいということだから、何匹討伐できるか競うこともできるかもな」
エリナ様もアルドア様も自信があるようだ。
「それで、どのような連携で戦いますか」
念のためわたしがそう尋ねたが、皆、あまり乗り気でないようだ。
「別に、ホーンラット相手に真面目に連携を考えなくてもいいだろう」
シーベル殿下が真っ先にそう答えた。
珍しく、皆がその意見に同意しているようだ。いや、ゲイツ君だけは別意見を持っているようだが、口出しを控えている雰囲気だ。
“たとえ相手が弱くても、これはそういう訓練なのですから、きちんと連携を考えるべきでしょう”
うわ、珍しくレーリーがちょっと怒っている。
『そういっても、わたしからそれを言うのはちょっと憚られるかな』
“油断は事故につながります。今からわたしが言う通りに言っていただけませんか”
そういえばレーリーは皇太子の教育係をしていたこともあると言っていたっけ。厳しかったのかな?
とにかく、命令されたわけではないがレーリーの言葉を無視するわけにもいかない。
“一応、これも連携を試す実戦訓練の一環ですから、連携の確認だけでもしておくのはどうでしょうか”
おお、さすがにわたしの立場をわかってくれている。
「あの、差し出がましいようですが、一応これも連携を試すための実践訓練の一環ですから、連携の確認だけでもしておいたほうがよいのではないでしょうか」
サシャ様がびっくりしてわたしを見ている。
確かにこういう場で平民が口を出すのは、滅多にない事だから。
ただわたしの意見は好意的に受け入れてくれた。
「確かにそうですわね。学校側はグループでの行動訓練を前提にしていますし、ダブタン氏がどこまでわたしたちを見るのかわかりませんが、もしも碌に連携もせず倒していたと報告されては不本意ですわ」
それを聞いて、アルドア様も頷いた。
「確かにその通りか。少なくとも最初の5匹は連携を試し、もし余裕があれば、その後に個人で倒すこともできるわけだしな」
思ったよりもスムーズに受け入れられてほっとしていたら、レーリーからさらに爆弾が投げ入れられた。
“わたしが敵役をやるので、どのように連携するか試してみましょう。火矢は使いませんから”
「え?」
思わず声が出てしまった。
「メイリン、どうしました?」
サシャ様が訝し気に声をかけてくださる。
「いえ、あのですね、せっかくなのでわたしの従魔を敵役としますので、どのように連携できるか試してみるのはいかがでしょうか」
「レーリーをか。そうだな。少し小さいがホーンラットの代わりにはちょうどいいか」
アルドア様から了承をいただけた。
「だがそうなると、メイリンが連携に参加できないのではないか」
おお、エリナ様の尻に敷かれて発言を封じられていると思っていたら、思いのほかまともな意見を。
「メイリンは後方支援メインで、レーリーもファイヤーアローによる遠距離からの牽制がメインだ。とりあえず現時点では連携に入らなくてもいいだろう」
アルドア様がそういうと、シーベル殿下もそれ以上は何も言わなかった。
初対面がアレだったので評価が低かったけど、意外とまともになってる?
とにかくレーリーの思惑通り、連携の練習を行うことになった。
「では、俺のウイングオウルで敵をこちらに追い込み、殿下のナイトゴーレムとゲイツが前衛で相手の攻撃を足止め、敵を抑え込んだところで俺と殿下でとどめを刺す。
逃げようとしたら、サシャとメイリンが妨害。
もしもけが人が出た場合はエリナ嬢が治療。
とりあえずこんなところだろう」
さてアルドア様の指示で動くとして、レーリーは空気を読んでくれるかな?




