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召還編その14

「昨日、メイリン君が召喚した従魔は、まだ正体は判別できていないが珍しい魔獣のようだ。魔術局も関心を持っており、調査中でもある。珍しいからとあまりおかしなちょっかいを出さないように」


 カイル先生が授業に入る前に、そのように念を押してくれた。


 まあ普通であれば、魔術局が関心を持っているという時点でなにかをする気はなくなるだろう。なぜなら相手は国の直轄機関なので、たとえ貴族であっても下手なことをするなら自分の将来を左右しかねないのだから。


 というわけでわたしと一緒にいるレーリーについてそれ以上は特に何も言われることなく授業が開始する。




 レーリーはまだわたし以外が話す言葉と文字はわからないはずなのに、熱心に先生の話を聞いている。

 わたしも勉強は嫌いではないけど、自分が聞き取れない言語に対してここまで集中できるかというと、どうだろうか。


 そんなことを考えていたら、先生から教科書を読むよう指名された。

 わたしが立ち上がって教科書を読もうとすると、それまで机の上にいたレーリーが背中を通って肩の上まで登ってきて、そこから顔を出して一緒に教科書を見ていた。


 なんだか周りからの視線が生暖かい気がするけど、気にしないことにする。


 教科書を読み終わって、席についたところ、レーリーがぽつりとつぶやいた。


“メイリンが読んだところから、文章がどんどん分かるようになっています……”


 え、なにそれ。


“詳しくはあとで”


 なにか非常に気になることを言われたけど、確かに授業中だから、とりあえずはそちらに集中することにしよう。




『レーリー、授業中に言ったことはどういう意味なの?』


 授業が終わった後、わたしは次の授業の準備をしながら、頭の中でレーリーに話しかけた。


“まだ断言はできないのですが、メイリンが本を読んだ部分からわたしもそこの文章が理解できるようになっていましたようです。あと、メイリンが一度話した言葉であれば、他人が話したときにも聞き取りがしやすくなっているようにも思えます”


『え、それならわたしが本を読み上げれば、それだけでレーリーはどんどん言葉を覚えられるということ?』


“その可能性が高いように思えます”


『なにそれズルい』


“ズルいと言われても……。おそらくメイリンとの主従関係が影響しているのではないでしょうか”


『そうか。従魔契約を交わすと召喚主は従魔の思考や感情がある程度分かるようになるというけど、わたしたちの場合は今のようにもっと直接的に伝えられるから、それで言語習得も早くなっているということかもしれないのね』


“おそらくそういうことなのでしょう。それで、メイリンが黙読した場合でも文字が理解できるようになるか試してみたいのですが”


『そうね。それができるとより早くなるわね』


 さっそく次の授業で使う教科書を開いて黙読をしてみる。


“……黙読でもある程度効果はあるようです。ただ音読のほうが音を耳でも聞けるので、特に他の人の会話を聞き取るという点では効果は高いかもしれません”


『わかったわ。とりあえず授業中の音読は難しいから、できるだけ板書されたものなんかはレーリーにわかるよう黙読してあげる』


“ありがとうございます。ですが、メイリンの勉強の邪魔になりませんか”


『大丈夫。そもそも板書されたものはノートに書き写す必要があるし、そのときに黙読しているようなものだから、手間でも何でもないよ』


“そうですか。それではよろしくお願いいたします”


 うん、レーリーはかわいいだけでなく礼儀正しいから、こちらとしてもいろいろとやってあげたくなっちゃうな。


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