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召還編その13

 食事を終えて部屋に戻り学園へ行く準備をしている間も、レーリーは熱心に私の書いた紙を見ていた。


「レーリー、そろそろ学園へ行くわよ」


“わかりました”


 わたしの呼びかけにそう答え、伸ばした手を伝って首のあたりまで登ってきて、そのまま首に巻き付いてくる。


 やっぱりモフモフは正義!


 ちょっと幸せな気分で登校したが、やはり従魔を襟巻にしていると目立つのだろうか、ちらちらとわたしに視線を送ってきている人がいる。


 やがて学園に近づくと、サシャ・マイナル様が向こうからやってきた。


「ごきげんよう、メイリン。今日は素敵な襟巻をしているのね」


「ええと、これは昨日召還したわたしの従魔です」


 わたしが答えると、それを聞いていたのかレーリーも顔をサシャ様のほうへ向けた。


「あら、そういえば昨日召還に成功したのでしたわね。そんな身近におけるなんて、1日も立っていないのにずいぶん従魔との関係が良好なのですわね」


「はい。レーリーとはうまくやっていけそうです」


“この方はどのような方なのでしょうか?”


 レーリーから質問がきたが、普通は従魔に自分の領主の寄り親の家のお嬢様ですよ、なんて紹介できないし……。


“だいたいわかりました。昨日もいいましたが、わたしに向かって頭の中で答えていただければ、わたしには通じますよ”


 おおう、そういえばそんなことを言っていたっけ。


「どうしたの?黙ってしまって」


「申し訳ありません。うちの従魔がサシャ様に興味を持ったようなので……。はい、レーリーとは良好な関係を築けそうです」


「それはよかったわ。きちんと召喚術に成功したのなら、わたしとしても鼻が高いわ」


「ありがとうございます」


 わたしの返事にあわせるように、レーリーも頭を下げた。多分相手の言葉が分かったのではなく、わたしのお礼に合わせたのだろう。


「まあ、いまわたしに頭を下げたのね。可愛いだけでなく賢いのね」


 サシャ様が上機嫌になってくれたことでわたしもほっとした。


 なにしろ本来であればわたしが口を利くことなどできないほど身分は離れている。

 たまたまわたしが魔力が多いことが領主様に伝わり、この学園へ入学させるための勉強をさせてくれるという話になったとき、それを聞いたマイナル伯爵様がそれならちょうど同じ年の娘がいるから、勉強相手によろしかろうということで一緒に学ぶことになったのだ。


 幸いなことにサシャ様は気さくなたちで私との身分差など気にしない性格だったので、このように今でも気軽に話しかけてくれているが、わたしもそんな彼女の態度に甘えないよう、普段から気を付けるようにしている。


 親しき中にも礼儀あり、だ。



 その後、サシャ様と一緒に教室まで移動したので、特に問題もなかった。


 そう、教室までは。

 そこにわたしの天敵が待ち構えていた。


「おい、昨日は召喚術を使った後、そのまま戻ってこなかったが、何をしていたんだ」


 アルドア・ステイン様が絡んできた。


「召喚された従魔があまり見ないタイプのものだったので、カイル先生が念のため確認されていたんです」


 真実は伝えない。というか、言わないように局長と学園長から口止めされている。


「ふん、これがその従魔か。小さくて弱そうだな。こんなのを召喚して、役に立つのか?」


「なによ。最初は小さな従魔が召喚されることなんてごく普通のことじゃないの。なにか文句あるの?」


 アルドア様がわたしに何かと絡んでくるのはいつものことだ。そしてそれにサシャ様が噛みつくのもいつものこと。


“あの男の子はなんて言ったのですか”


 あなたが小さくて弱そうだと言ったのよ。


“まあ、見た目で判断するなら事実ですね”


 気にしないんだ。


“実際のところ、わたしが強いのか弱いのかもよくわからないですし。何とか役に立てるよう努力します”


 ああ、うん、お願いします。


 なんか本当はレーリーがわたしの主人なのに、レーリーがわたしを立ててくれているから、たぶん隷属契約のせいだと思うけど感覚的に気持ち悪い。


 かといって、レーリーから命令されるのも困るから、わたしが慣れるしかないんだけど。


 そんなことを考えていたら、予鈴がなった。

 もうすぐ先生が来るので席に着く。


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