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召還編その12

 改めてレーリーの能力に戦慄を覚える。


 え、なんで見たこともない文字を眺めているだけで単語が分かるの?


 いや説明はしてもらったけど、もしもわたしがよその国に行って知らない文字を見ても、同じことができるとは思えないんだけど。


 そもそもアルファベットもまだ知らない段階なんだよ。

 本を読みたいみたいだけど、思っていたよりも早く読めるようになるかもしれない。


「さあ、そろそろ消灯時間なので、明かりを消すよ」


“あら、もうそんな時間なんですね”


「レーリーはどこで寝る?」


“わたしは部屋の隅ででも寝ますよ”


「いや、わたしのベッドがあるんだから、そんなさみしいことは言わないでよ。

 レーリーのサイズなら、ここで一緒に寝られるよ」


 わたしがそういってベッドを叩くと、レーリーがまた首をかしげる。

 だからそういう可愛い仕草をいちいちしないでほしい。理性が吹っ飛ぶ。


“この体はそもそも睡眠をとらなくてもいいようなので、あえて寝床に入る必要はないですし、わたしがごそごそ動けばメイリンの睡眠の邪魔になってしまうと思いますよ”


 う、それはちょっと困るかも。


“それなら、休みたいときはこちらの足もとの方で休ませてもらいます。それならあまり邪魔にならないでしょう”


「ええ、自由にしてくれて構わないよ。明日の学校は一緒に行くから、お願いね」


“わかりました。楽しみですね”


「そんな楽しい場所でもないわよ」


 そういって、わたしは明かりを消してベッドで横になった。

 いろいろあって今日は疲れたのか、すぐに眠ってしまった。




 次の日の朝、目を覚ますとレーリーがちょうど足元のあたりで丸くなって寝ていた。


 ……だからいちいち可愛いんだけど。


 おもわずモフりたくなるのを我慢して、魔物で元人間なんだと自分に言い聞かせていると、すぐにレーリーも起き上がった。


“おはようございます”


「おはよう。……わたしは朝食を食べに行ってきますが」


“どうぞ。わたしは待っていますので”


「ごめんね。多分、明日以降は大丈夫だと思うから」


 とにかく今日の学校で、わたしの従魔について学校側から説明があるはずなので、それまではできるだけ人目につかないようにしておきたい。


 いや、別に従魔を連れ歩くこと自体は問題じゃないんだけど、なにしろレーリーは見た目が可愛いだけで強そうに見えない。

 迂闊に連れ歩くとトラブルの原因になりそうな気がする。


 そんなことを考えていると、毛づくろいを終えたレーリーは机の上にするりと移動し、昨日書いてあげたアルファベット表と簡単な単語の一覧を熱心に見始めた。


 わたしも子供のころは勉強の虫と言われたけど、あれは両親や領主様の期待を背負っていたからだ。


 レーリーは別に文字が読めなくても誰も困らないのに、自分が読みたいからとあんなに熱心に勉強している。


 思わず特待生として学園に入学した自分の生活を省みてしまいそうになる。

 いや、わたしはきちんと勉強しているし。

 とにかく早く朝食をとらないといけない。わたしはレーリーに留守番をお願いして部屋を出た。



 いつも通り、朝食も何事もなく食べ終わる。


 そもそもこの寮は各地からの推薦や特待生枠で入学してきた庶民のための寮なので、ここで問題を起こせばその生徒は簡単に退学させられてしまう。

 そうなれば推薦した領主の顔に泥を塗ることになるので、普通はそうそうトラブルを起こすような者はいない。


 ただやはり皆が仲良しという訳でもなく、全員ライバルとも言えるので中には常に相手の弱みを探る者もいる。

 だからもう少し様子を見てからでないと、レーリーを食堂に連れてきたくないのだ。


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