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召還編その9

 レーリー視点


 メイリンが住んでいる部屋にきました。どうやら子供たちが住む寮という場所だということです。

 それほど広くはありませんが、寝床と机、それに本棚が置いてあります。


“メイリンは字も読めるのね”


「もちろんよ。学生だもの」


 おお、学生ということは優秀なのでしょう。


“ということは役人を目指しているの?”


「え?確かに学園を卒業したら国に仕える人もいるけど、ほとんどは貴族だから実家に戻る人の方が多いんじゃないかな?」


“え?貴族なのに学校に通うの?”


 貴族であれば家で学問は学べるだろうし、親の伝手で役人にもなれるでしょうから、学校に通う必要などないのではないでしょうか?

 ……よく考えたらここはわたしの世界と常識が違うのですから、学校の在り方が違っている可能性があるのですね。


“わたしのいた世界では、学校は基本的に役人を目指す人が勉強するところでした。

 ただ、貴族であれば親の伝手で役人になれるから、わざわざ学校に通う必要もありません。

 ですから学校に通う人はある程度お金のある一般人ということになります”


「ああ、それはこちらとは全然違うわね。こちらの学校は基本的に貴族の子弟を教育する場所だから。

 わたしは庶民だけど、魔力量が多かったので、領主様に推薦を受けて特待生として入学したの。だから卒業したら領主様の元で働くことになるわ。

 ただ成績によっては国から声がかかる可能性もあるけど、その場合は国と領主様の間でいろいろ交渉がなされるみたい。

 あとはごく稀に、わたしのような特待生から領主様の養女となることもあるって噂も耳にするけど、眉唾物ね」


 やはりわたしの世界とは異なるのですね。

 どちらにしても勉強しているというならわたしにとっても好都合です。


“それなら、もし時間があれば字を教えてもらえないでしょうか”


「え、字を読むの?」


“この世界の字が読めるようになれば、いろいろ便利だと思いますから。ただこの体では書くことは難しいでしょうが”


「確かに、その体ではペンを持つのは難しそうね。そうだ。あなたの能力について知りたいんだけど、ステータスの確認はできる?」


“『すてーたす』とはなんでしょうか?”


「貴方の世界には魔法はないんだったっけ。ステータスというのは、その人の能力や才能のことで、魔法を使って確認する方法があるのよ」


 そんなことができるとは。


“どうやったらいいんですか”


「そうか、ステータス魔法はまだ使えないのよね。じゃあ私がサポートするわ。わたしの詠唱に続けて『ステータス』と唱えて」


 そういうと、メイリンがわたしの体に触れて何やら唱え始めました。

 体の中を探るような感触があります。

 ……詠唱が途切れたので、言われた通りにしてみましょう。


“ステータス……ああ、何か目の前に文字が表示されました。ですが、たぶんこちらの言葉で表示されているようなので、まだ読めませんね”


 やはり文字の勉強は必須のようです。


「ええと、こんな文字が上から順番に書いてあるかな」


 そう言って、メイリンが紙に文字を順番に書いていきます。


“そうです、それぞれの行の冒頭はそのように書かれています”


「じゃあ間違いないね。これは上から『種族』『名前』『魔力』『スキル』『状態』と書かれているの。文字はまだ難しいと思うから、『魔力』と書かれているところの数字だけでもおしえてもらいたいのだけど。わたしたちの数字はこういう表記だけど、わかる?」


 こんどは10個の文字が紙に書かれていきます。


「順番に1,2,3,4,5,6,7,8,9,0よ」


“そうすると、1,5,3,2と書いてありますね”


「魔力1532……」


 この数字がどれほどのものかわかりませんが、もしかしたらそれなりに大きな数字なのかもしれません。


 少なくとも魔力探知した感じでは、メイリンよりは多いように思えます。

 先ほど会ったマダラン氏やルース氏は、おそらくわたしと同じか多いくらいでしょう。


“わたしの魔力というのは、一般的にはどういう値になるのですか”


「あ、ええそうね。かなり多いほうよ。ただ従魔の中にはもっと多い魔力を持つものもいるわ。……本当にハイオークを倒せたの?」


“証明はできませんけど”


 その後、メイリンがなにかぶつぶつ言っていましたが、よく聞こえませんでした。


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