召還編その5
「あ、たぶんそれは大丈夫だと思います」
今回は相手が特別だったんだ。
「なぜそういえる?」
わたしはここで、レーリーの過去をどこまで話してよいか迷った。
“わたしのことを話していただいてもかまいませんよ。ただ、できればわたしの身の安全は保障してほしいところですが”
そうですか。確かに魔獣の特殊個体は貴重だから、レーリーを欲しがる人は多いかも。
ここは味方になってもらう意味でも、少なくともこの3人にはすべて話したほうがいいか。
「ええと、信じていただけるか難しいのですが、ここで待っている間、この魔獣、シロテンという種族で、名前はレーリーというのですが、いろいろ話を聞きだすことが出来まして」
「話を聞く?どういうことだ。人間と会話できる魔獣なんて、それこそ最高位の魔獣くらいしかいないが、この魔獣がその最高位の魔獣だとでも?」
マダラン局長が興味津々という感じでレーリーを見つめている。
「いえ、最高位の魔獣かどうかはわかりません。レーリーの話によると、彼女は3か月ほど前にダンジョン内で生まれたそうですが、実はその前は別の世界で人として生活していたそうです」
「ほう、異世界から。まるで勇者召喚のようだな」
「で、3か月かけてそのダンジョンを攻略したそうです。最後は2か月かけてハイオークを倒して、ダンジョンマスターに外に出してもらったといっていました」
わたしの説明に、3人とも驚きの声を上げた。
「ならばそのシロテンという魔獣はランク4ということになるが、本当にそこまで強いのか?いや、従魔契約魔法を拒否出来て、ステータスも確認できないという時点で弱い従魔でないことは間違いないだろうがな」
「しかも人と会話できるというのも本当なのかね」
マダラン局長、ルース学園長が続けて聞いてきた。
「わたしもどのくらいの強さなのかはわかりません。ただわたしと会話できるのは本当です。他の人は何を言っているのかよくわからないということですが」
わたしがそう答えると、カイル先生が一つの提案をしてきた。
「それなら、こちらの聞きたいことを『はい』『いいえ』『わかりません』の三択で答えてもらうことはできるかな。質問は君が通訳して、『はい』なら首を縦に、『いいえ』なら首を横に振る、『わかりません』は組を横にかしげる、という方法で答えられるだろう」
わたしがレーリーに確認すると、かまわないとのことだったので、カイル先生にそう返答する。
すると早速マダラン局長が質問してきた。
「ではまず簡単な質問から。君は元は人間だったということで間違いないかな」
わたしがそのまま伝えると、レーリーが頷く。
「魔法は使えるかい」
これにも頷く。
「魔法は前に生きていた世界にもあったかい」
今度は首を振る。
「君はメイリン君を最初から隷属させるつもりだったのかい」
首を振る。
「ハイオークを倒したのは本当かい」
頷く。
「ハイオークは魔法で倒したのかい」
頷く。
「ダンジョンを出た後、メイリン君と会う前に他の人にあったかい」
首を振る。
「人間に対して危害を加えるつもりはあったかい」
首を振る。
「元の世界で、君は平民出身だったかい」
少し間をおいて頷く。なんで間が空いたんだろう。
そこでマダラン局長はにやりと笑った。
「最後の質問に対する答えだけ、嘘をついたね」




