プロローグその3
走って逃げるか、または反撃するか―。
一瞬の判断でわたしは反撃を選びました。
といってもこの体でできそうなことは爪で引っ掻くか、噛みつくくらいでしょう。
まずは足元を通り抜けながら、前足で脛のあたりを引っ掻いてみました。
血が少し流れて、小鬼が怒り出しましたが、それほど痛手にはなっていないようです。
またも棍棒が振り下ろされてきたので、間合いを図って避けたうえで、地面に叩きつけられた棍棒を伝って相手の肩のところまで一気に登り、その首元に齧り付いてみます。
小鬼は叫び声をあげましたが、やはりこちらの体が小さいため、致命傷とまではいきませんでした。
手で振り払われる前にいったん離れて、地面に降ります。
小鬼はますます怒り、やたらと棍棒を振り回してきましたが、狙いが定まっていないのでむしろ避けやすくなっています。
こんどは足元から駆け上り、喉元に噛みつきます。
喉を潰された小鬼は呻くような音を発し、しばらく暴れていましたが、やがて動かなくなりました。
小鬼は思っていたほど強くはありませんでした。
またはもしかしたら、この体が意外と強いのかもしれません。
とにかく当面の危機は去りましたので、改めて自分の置かれた状況を確認することにします。
改めて自分の体をまじまじと確認してみます。