プロローグその26
魔力探知に反応があります。外の世界の魔物のようですね。
森の中なのでわたしが身を隠す場所はいくらでもあります。とりあえず気づかれないようにそっと相手の様子を探ことにしましょう。
しばらく待っていると、角鼠―ホーンラットがやってきました。
感覚的には、ダンジョンで出会ったものより弱そうに思えます。
ダンジョン内では隠れる場所もほとんどありませんから、むしろ積極的に戦っていましたが、森の中であればいくらでもやり過ごせるので、無理に戦う必要はありません。
そのままやり過ごすこととしましょう。
しばらく進むと、また別の魔物がいました
今度は体長が十尺はありそうな猪のような魔物です。
魔力探知でもかなり強く反応していましたが、見た目も強そうです。
とはいえハイオークと比較すれば、あれほどの強さは感じません。たぶん時間をかければ倒せないこともないでしょう。
余裕のあるうちに、一度戦ってみようかとも思いましたが、森の中では火矢が使い辛いですし、時間をかけると他の魔物が寄ってくる可能性もあります。
ここはやはり安全をとってやり過ごすことにしましょう。
とにかくダンジョン内では戦い続けていましたので、しばらくはのんびりしたいという気持ちが強いということもあります。
魔物を探知しても、観察だけをしてできるだけ戦わずに済むように進んでいきます。
そんなこんなで3日ほど進みましたが、未だに人の気配を感じられません。
ダンジョンマスターが召喚されるかもしれないといっていましたが、そのような気配もありませんね。
と思っていたら、突然、大きな魔力の動きを探知しました。
何かと思って周囲を警戒していたら、突然目の前に魔力でできた光る円陣が現れました。
驚きましたが、同時にこれが召喚陣というものなのだろうと感覚的に理解できました。
陣に引き寄せられるような感覚がありますが、抵抗できないほどでもありません。
つまり陣に入るかどうかはわたしが決められるということです。
改めて目の前の陣を観察しますが、そこに現れた魔力は優しいもののように感じます。
この魔力の持ち主であれば、それほど悪いことにはならないのではないでしょうか。
もちろんわたしの経験で正しい判断を下せるわけではありませんが、どうせ人里へ向かっていたのです。
博打のようですが、自分の感覚を信じてみようと思います。わたしはその召喚陣へそっと入ることにしました。




