プロローグその19
大豚人が雷を落としてきたので、いよいよ作戦開始です。
まずは雷から逃げてからいったん立ち止まり、あえて時間をかけて火矢を放ちます。
これは相手に、こちらも立ち止まって時間をかけないと火矢を放てず、一度放つとしばらく使えないと思わせるためで、今までも何度か行ってきました。
大豚人が、わたしの放った火矢を斧で打ち消すのを確認したところで、わたしは4つの火矢をいつでも放てるよう妖力を練り上げ、同時に身体強化も行います。
そしてそれを維持したまま、接近してくる大豚人の攻撃を避けつつ、一旦はこれまでと同じように接近戦による攻撃を仕掛けます。
大豚人もここまでは今までと変わらないので、同じようにわたしの攻撃に合わせてきてくれました。
つまりそこに油断があります。
わたしは至近距離から大豚人の目と鼻に向けて火矢を放ちます。
初めてまともに当たった火矢は、さすがの大豚人にとってもかすり傷とはいかなかったようで大きな叫び声をあげています。
大きく開いたその口の中へ向けて、残り二つの火矢も放ちます。
それも交わされることなく口の中へ命中し、大豚人の喉と肺を焼きます。
ここで手を抜くわけにはいきません。
さらに複数の火矢を練り上げると、続けて口内へ向けて火矢を放ち続けます。
やっと有効打を与えられたのです。これを逃せば、次はいつになるかわかりません。
とにかくわたしの妖力が続く限り連続して火矢を撃ち続けようと決心したところで、ついに大豚人が倒れました。
大豚人が持つ妖力も消えているので、おそらく倒せたのでしょうが、まだ実感が湧きません。
とりあえず倒れた大豚人にも、すでに練り上げた火矢を全て叩き込みました。
そしてすべてを撃ち尽くしたところで、大豚人が動き出さないかしばらく様子を見ていましたが、どうやら完全に倒せたようです。
やっと倒しきったと実感できたところで、これまで張り続けていた気が抜けたためでしょう、久しぶりにひどい疲れを感じました。
まずはこの大豚人の中の石を取り出して食べることにします。
出てきた石は、大豚人の強さを象徴するように今までで一番大きなものでした。