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指名依頼編その17

“もしも下見に行くなら対象に遭遇することを覚悟しておいた方が良いと思いますよ”


「え、どうして?」


 レーリーの言葉にわたしが思わず声を出してしまったので、皆の視線が一斉にわたしに向いた。


「すみません、レーリーが意見があるようなので確認して伝えます」


 わたしは皆にそう伝えてから改めてレーリーの話を聞いた。


“今回の対象は強い相手を探しているようです。強さだけでいえばうちにはナナコがいますし、シラバタスさんも強いですからね。森に入ったら向こうからやってくると思います”


「だけど、それなら昨日の夕方に到着した時点でこちらに接触しに来るんじゃないの」


“昨日までに集めた情報では、対象が森の外まで出たのは最初だけだったようです。その後は森に入ってから襲われた人ばかりだったという話でした。つまり相手はこちらが森に来るのを待っているということです。

 さらに言えば、強い相手ばかり選んで襲っているということは少なくとも相手の強さを見極められる力があることの証拠です。あるいは魔力感知のような能力を持っていて、わたしたちがこの村に入った時点からこちらの動きを捕捉している可能性も考えるべきでしょう”


 うーん、そういう可能性もあるんだ。とりあえずレーリーの言葉をみなに伝える。


「レーリーによれば、すでに調査対象がこちらの動きを補足していて、森に入った時点で向こうから接触してくることを覚悟した方がいい、ということです」


 わたしがそう説明すると、エリナが頷いた。


「そういわれると、その可能性は高そうね。そもそも今までの目撃情報も、明らかに強い相手を選んで攻撃してきたということでしたし」


「ううん、確かにその通りだ。ならばもう少しコンディションが良くなるまで待った方が良いか」


「ですがすでに昨日までの雨で森の中は足元がかなり悪くなっています。今日以降も雨が続くようなら、いつまでも調査に行けなくなってしまいませんか?」


 アルドア様やサシャ様も意見を出すが、こういう時はリーダーが決断すべきだ。

 わたしたちはシーベル様を見た。


「……一つ確認したい。おそらくこの中で対象が戦う相手として見るのはナナコかレーリーだろう。二人はどう思っている?」


 シーベル様がわたしにそう確認してきた。


“わたしは戦う気がないというか、そんな戦闘狂と戦いたくないんだけど”


 わたしがナナコを見ると、ナナコがそう言ってきた。

 ナナコはそうだろうね。


“実際、ナナコが出れば負けはしないでしょうが相手が納得できるかはわかりません。とにかく強い相手を倒したいという思考であればナナコが出た方がいいのですが、強い相手と手合わせをしたいという思考だとナナコでは物足りないでしょうからね”


「それじゃあレーリーが戦う?」


“そうですね……”


「どうしたの?」


“気のせいかと思ったのですが、どうやら今もこちらの様子を探っているようですね。わたしも試しに探り返してみたのですが、わたしの魔力探知では見つけられません。

 わたしよりも探知範囲が広いか、もしくは魔力隠蔽の仕方が自然で見つけられないのか……。この探知の技量からすると両方かもしれません”


「ということはレーリーよりも強いかもしれないの?」


“魔力操作だけうまいという可能性もありますが、こちらよりも強いと思っておいた方が間違いないと思います”


「それじゃあレーリーも戦いたくない?」


“それで済めばよいのですが、私たちの仕事は対象を見つけ出してなんらかの対処することです。少なくともこちらを探るだけの知性を持ち合わせているようですし、やはり早目に一度会っておいた方が良いと思います。

 結果として戦う必要が出たなら、その時はわたしが戦います“


「おい、レーリーは何と言っているんだ?」


 レーリーの決意にわたしが言葉を失っていると、アルドア様がそう聞いてきた。


「今回の対象は今もこちらを探っているようです。レーリーはかろうじて気付いたようですが、相手がどこにいるかまでは分からないそうです。

 それで、早めに森へ行って対象と会っておいた方が良い、もし戦う必要があるなら自分が戦うと」


 わたしがそう手短に答えると、アルドア様が唸った。


「うーん、相手に監視されているのなら、あまり時間を置くのはよくないな」


「こちらの情報が筒抜けになっているわけだからな。仕方がない。今から出発しよう」


 シーベル様がそう決定して、わたしたちは慌ただしく準備を始めることとなった。


 「鼠の牙」の皆さんにも今から出発することを伝えたところ、彼らからも雨の後で足場の悪い森に入ることについて難色を示された。

 彼ら自身が入りたくないというより、経験の浅いわたしたちのことをおもんばかってのことだ。

 しかしレーリーからの情報として、相手がこちらをすでに調べているらしいことを伝えると、彼らも驚いていた。


「マーサ、わかるか?」


 シラバタスさんが一番魔法の得意なメンバーに尋ねると、マーサさんは目をつぶってしばらく集中した。


「意識して確認したら、かすかだけど確かに違和感のある魔力を感じるわ。だけどよくこんなのがわかったわね」


「どう思う?」


「これだけ繊細な魔力操作のできる相手よ。かなりの実力者だとみるわ。時間を置けばこちらが不利になるという意見にも同意できるわね」


 マーサさんの返答を聞いたシラバタスさんは、今から森へ行くというわたしたちの決定を受け入れてくれた。


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