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指名依頼編その14

シーベル視点


 ゴブリンの攻勢が収まったと思ったら、レーリーがホワイトフォックスを連れで姿を見せた。

 どうやら彼女が関わっていたらしいが、メイリンがこちらに説明してくれないと状況がわからん。


 そう思っていたらハーマインが声を潜めて話しかけてきた。


「兄上、どうやらあのホワイトフォックスには魅了や思考誘導といった相手を操る能力があるようです」


 そうか、ハーマインはマサト経由でレーリーとホワイトフォックスの会話がわかるのか。


「ほかに何かわかったか?」


「どうやらあのホワイトフォックスはゴブリンを魅了したはいいけど、数が増えすぎて困っていたようです。それでレーリーに間引きを依頼したみたいですね」


「それがなぜこういう事態になる?」


 間引きして欲しければもっと別の方法もあっただろうに。


「どうもレーリーが実戦形式の訓練について考えていたらしくて、あのホワイトフォックスがそれを思考誘導でこういう形に持って行ったようです」


 思考誘導、それは危ないやつなんじゃないか?


「あー、だからゴブリンどもは次々に現れたとはいえ、対処しきれない程に殺到した訳でもなかったのか。確かに緊張感を保ちつつ実戦経験を積めるいい機会だった」


 アルドアが呑気にそんなことを言っている。


「おい、急にゴブリンどもが攻撃してこなくなったが一体何があった。あそこにいるのは調査対象の白い魔獣じゃないのか」


 シラバタス氏が後ろから接近しながら攻撃の手を止めたゴブリンを一掃してから、こちらに尋ねてくる。


「あー、そこは申し訳ない、すぐに答えることはできないが、とりあえずここでの調査目標は達成できたようだ。ゴブリンについてもおそらく問題なくなるはずだ」


 彼らは傭兵としてのランクはこちらより上だが、今回の依頼を受けたのはこちらであり、自分たちはあくまで『皇族』を守るための護衛として雇われている。

 白い魔獣が元異世界人である可能性については明確に口止めされているわけではないが、かといって誰彼構わずに伝えていい話でもない。


 彼らも今回の指名依頼がわざわざランク4の護衛まで雇って俺たちのような学生に出されたことの裏側は察しているだろう。


「なるほど、指名依頼の内容にかかわる話ということか」


「そういうことだ。すまないが一応周囲の警戒だけを続けてくれ。あの白い魔獣についてはこちらで対処する」


 そう言い残して、俺はハーマインと一緒にメイリンに近づいた

 エリナ、アルドア、サシャも一緒だ。




「メイリン、やはりそのホワイトフォックスも転移者なんだな?」


「ええ、そのようです。ですがどうも危険な相手みたいです。精神操作系の魔法か能力を使えるみたいです」


 やはりそうか。


「ですが、レーリー経由で聞いた話は、魅了魔法は人間相手だと成功率が下がるし、思考誘導は対話できる相手限定の上、相手がもともと検討している考えの中から誘導できる程度だそうです。しかも相手に警戒されると成功率がさらに落ちるそうです」


「ふむ、それだと俺たちにそれを明かしたということは、今後俺たちにそれらの能力を使う気はない、ということか?」


「一応、そう言ってはいます。本当かどうかは知りませんが」


 メイリンはどうやら信用していないらしい。それもそうか、レーリーを思考誘導したようだしな。

 それよりも重要なことがある。


「それで、そいつは従魔になる気があるのか」


「レーリーが昨夜のうちの説明したそうで、従魔契約を受け入れると言っています。ただ、ちょっとした問題もあって……」


「なんだ?」


「彼女、この森にいたゴブリンを魅了で配下にしていたらしいんですよ。

 ただ魅了した個体が増えすぎたので、レーリーをそそのかして私たちが討伐しやすいように仕向けて間引きを狙ったそうです。

 結果としてだいぶ減りはしましたが、それでもまだ五十匹ほどいるらしくて」


「そいつらも討伐すればいいのか?」


「シーベル様は無抵抗の魔獣をすべて殺せますか?」


 ああ、そういうことか。

 今まではこちらを襲う魔獣だと思っていたから倒せた。

 だが魅了されて危険がないといると分かっている魔獣を殺すということは討伐ではなくただの殺戮だ。あまり気分の良いものではない。


「やる必要があればやれない事はないが……」


「あまりやりたくない作業だな」


 アルドアも同意見のようだ。


「それらのゴブリンはそのホワイトフォックスの言うことなら何でも聞くのですか」


 エリナがメイリンにそんなことを尋ねている。


「そのようです。ドロテアというのが名前だそうです。で、ドロテアが指名すれば、今回のレーリーみたいに他人でも指示はだせるようになるみたいです」


「ああ、今回のゴブリンの動きはレーリーが指揮をしていたのか。納得だな」


「そうだな。わざわざ大回りさせて“鼠の牙”へぶつけるゴブリンの数を増やしたり、こちらにもぎりぎり対応できる数のゴブリンを絶妙なタイミングで投入したりと、確かにいい訓練にはなった。さすが前の世界では実際の戦争を経験したというだけのことはある」


 俺とアルドアが感心していたが、エリナは別なことを考えていたようだ。


「では、たとえばこの森と隣の大沼沢の簡単な警備を任せることはできませんか」


「警備?」


「ええ。メインは隣の大沼沢ですが、今後開発が始まると奥から魔獣が出てくる可能性もありますからね。先にゴブリンたちが足止めしてくれれば、こちらとしても対応しやすくなりますので」


「面白い考えだが、そんなことができるのか?」


「やってみないと分かりませんが、大沼沢は広いので、ゴブリン五十匹でも足りないくらいです。もしもできれば警備のための人件費を減らせるかもしれませんし、検討の価値はあると思います」


 お、おう。

 意外とエリナは豪胆だな。


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