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指名依頼編その13

メイリン視点


 さっきから途切れることなく次々とゴブリンの部隊が接近してくる。

 一気に攻め寄せてこないだけまだマシだけど、休む暇もないし逃げることもできない。


 もちろんわたしとしてはレーリーを助け出すまでは逃げる気はないけど。


 厄介なのは、わたしたちだけでなく『鼠の牙』チームにも回り込んで攻撃を仕掛けてきていること。しかもそちらの方がこちらに来ているよりも数が多いから、彼らの助けを借りることもできない。


 あたかもこちらの力量に合わせてギリギリのところを攻めてくるような攻撃を受けていると、レーリーの訓練を思い出す。


 そう、レーリーの訓練もちょうどこんな感じでいつもこちらができるギリギリを見極めるような……。


 レーリーの訓練?


「レーリー! 近くで見ているでしょう!」


 わたしは大声で叫ぶ。


「レーリー! どこにいるの! 出てきなさいよ!」


「メイリン、どうしたの?」


 サシャが心配してわたしに声をかけてくるけど、構わず私は叫ぶ。


「レーリー! いい加減に出てきて!」


 わたしが叫び続けると、急にゴブリンの攻撃が止まった。


“そんなに大声を出さなくても聞こえています”


 そう言いながらレーリーが少し離れた茂みの中からひょっこりと出てきた。


「レーリー! あんた何をしていたの!」


“ええと、昨日はドロテアさんと話すことができて、その時に魅了したゴブリンが増えすぎて困っているという話になったので、それならと……なぜわたしは皆さんに伝えないまま訓練代わりにしようと思ったのでしょうか?”


「知らないわよ! そもそもドロテアって誰よ!」


“こちらの森に転移してきた方で、白狐のドロテアさんです”


 レーリーの言葉に合わせるように、レーリーのいた茂みからもう一匹の白い魔獣が姿を現す。


 大きさはレーリーよりも一回り大きい程度のホワイトフォックスだ。


「ああもう! とにかく心配したんだから!」


 わたしはレーリーに駆け寄って強く抱きしめた。




レーリー視点


 メイリンが私を強く抱きしめるので少し苦しいですが、心配をかけたのは事実なので文句は言いません。


 それよりも記憶の齟齬はないのですが、どうも私の思考がなにかねじれたような感覚が残っています。


“ドロテアさん、あなたわたしに何かの術をかけましたか?”


 ドロテアさんは私たちと同じようにこちらの世界に転移したときに白狐の姿になったそうですが、わたしたちと違って元の世界でも魔法はあったそうです。

 それで彼女はもともと魅了などの人の思考を誘導するような精神魔法が得意で、こちらにきてからもゴブリンの集落をまるごと魅了したと言っていました。


“ばれてしまったわね。別に悪気があったわけじゃないのよ。そもそもあなたは魅了も効かなかったし、思考誘導が何とか成功したけど、そもそもあなたの意志を全く無視するような誘導は無理だから”


“なぜそんなことをしたのですか”


“怒らないで。昨日も言ったでしょう、魅了したゴブリンが増えすぎて困っているって。だかといって自分で処分するのもいろいろあって難しいから、あなたのチームに頼んだでしょう”


“そうです。それでわたしはその時は戻って相談するつもりだったのです。ですがなぜかあなたと話しているうちに、実戦的な訓練ができるという話になって、わたしがその指揮を取ればいいということになったのでしたね”


“そうよ。あなた自身が心の底でその意見に何かしら魅力を感じたのでしょう。わたしはそれを後押しして実行に移させたのよ”


“……確かに私が戻って訓練代わりにゴブリンを倒すように言うよりも、知らないで森に入ってきた方がより実戦に近い訓練ができると思ったのは事実です”


“あなたがわたしを責める気持ちは分からないではないわ。でも先ほども言った通り、思考誘導は魅了と違って相手が全く思っていないことややりたくないことを行わせられるほどの強制力はないのよ”


“……今は使っていませんよね?”


“さすがにそこまで空気が読めないわけじゃないわよ”


“そもそもなんでそんなことを?”


 そうです、先ほども聞きましたがまだ答えてもらっていません。

 わたしがドロテアさんを見つめながら再度問い直すと、彼女は視線を外しました。


“……久しぶりに忌憚のない会話をできる相手と会えたから、ちょっと嬉しくてもう少しゆっくり話したかったのよ”


 その回答にわたしはあきれてしまいました。


“それだけで?”


“それだけっていうけど、わたしは元の世界でもいろいろあって本音を言い合えるような相手は作れなかったのよ。もう元の世界ではやることはやったし、こちらではもう少し自由に生きようと思って悪いかしら”


 どうやら彼女にもいろいろあったようです。




「レーリー、そいつに何かされていたの?」


 わたしがドロテアさんと話をしているのをメイリンは待っていたようです。メイリンには従魔ではないドロテアさんの話は聞こえませんからね。


“そうですね、私が『こういう方法もある』と考えたやり方に思考誘導されたようです。私自身に隙があったのでしょう”


「なにそれ! レーリーを操ろうとするなんてひどい!」


 おや、つい本当のことをそのままいってしまったのでメイリンを怒らせてしまいました。

 ドロテアさん自身には昨夜のうちに従魔契約の話は伝えて了解を得ているのですが、これでは実際に従魔契約をしてもらえるかわかりませんね。


“もしかしてわたしのことで怒られてる?”


“ええ、その通りです。相手を誘導できるようなスキルを持っているとなると、従魔契約についてもどうなるかわかりません”


“あらら自業自得か。だけど魅了は人間を相手にかける場合は結構条件が厳しいし、思考誘導についても私が使えることを知っている相手にかける場合は成功率が大きく下がるから、そこまで警戒する必要もないのだけどね”


 一応私からも説明はしますが、期待はしないでください。


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