プロローグその1
新作となります。よろしくお願いします。
私は子供のころからいろいろな経験をしてきました。
川に流されたり、山賊と勝負したり。
そのうち、なぜか兵を率いて戦う身分となり、しかし讒言により私刑を受けて半死半生となったりもしました。
けっきょく片目と鼻を失うことになりましたが、しかし生き残って再び出仕することになったのは、果たして運がいいのか悪いのか。
いや、またもや権力争いに巻き込まれて投獄される羽目になったわけだから、あまり運がいいとは言えないのでしょう。
そして陛下が私の存在を思い出す前に、わたしは牢獄の中で死を迎えることになったのでした。
そう、牢獄の暗闇で自分はもう死ぬんだと思い意識を失ったのは覚えています。
で、再び目覚めたら、薄暗い洞窟の中にいました。
もう死んだと思われてどこかの洞窟に投げ捨てられたのかと思いましたが、どうも体の具合がおかしいようです。
意識を失う前は、体を動かすこともできないほど衰弱していたはずなのに、今は普通に体が動かせます。
動かせますが……、どうも二本足でうまく立てる気がしません。
それでも何とか立ってみましたが、今度はそれ以上歩ける気がしません。
あと洞窟なのになんとなく周りの様子が見えるのは、どうも壁の所々がぼんやりと光っているからなのですが、なぜそのように光っているのかもわかりません。
とりあえず移動してみようと思いましたが、やはり四つん這いでしか動けないようです。
改めて自分の体を見て、手足が妙に短いこと、さらにいえば、服を着ておらず、代わりに体中が真っ白い毛に覆われていることにやっと気づきました。
もしかして、なにかの獣になっている?