たとえ君が人じゃなくても
初めての投稿小説です。至らない表現が多々あるかもしれませんが、がんばって描きましたので読んでいただければうれしい限りです。
人間じゃないのはわかっている・・・。でも彼女は僕にだけ優しい・・・。
近未来ー。いやもう少し未来かもしれない。人にそっくりなアンドロイドが普通に、生活に溶け込んでいる時代である。
僕は平凡なサラリーマン、中小企業に勤めている。この大きくはない職場にもついにアンドロイドが導入された。女性型の事務職のアンドロイドが入社した。
最初はアンドロイドという偏見があり、あまり積極的に接触していかなかった。しかし、その気持ちはだんだんと変わってきた。
女性型アンドロイドは細かいことによく気がついてくれた。
「山形さん(僕の名前)、おはようございます。尾崎部長から伝言を預かっております。」そういって、ちょっと微笑んでくれた。それは決して大げさではなく、心地よい表情だった。
僕は、その日の仕事は気持ちよく行うことができた。
「お先に失礼いたします。」女性型アンドロイドは、丁寧に挨拶をして帰った。(正確に言うと女性型アンドロイドは、終業後は会社の倉庫で待機状態になる。)
幸せな気分の日々が続いた。相変わらず女性型アンドロイドは、僕に対して親切だった。僕はあるときに、ちょっと勇気を出した。
「あの、ちょっといいですか。」僕は、女性型アンドロイドは(AHI763295)コードナンバーで呼ぶことになってるのだが、いい加減よそよそしいと感じるようになってきた。
「君のこと、アンドロイドのだからアンちゃん、と呼んでいいですか?」僕はものすごく恥ずかしかったが勇気を振り絞って提案した。
「・・・・。いいですよ、山形さん。」以外にも、彼女はニコッと微笑んだ。反応が怖かったけど、嫌がられていなくてよかった。僕は、最初は恐る恐るだったが、だんだんと彼女をアンちゃん、と呼ぶことに慣れていった。
次第に、僕は彼女に対して緊張がなくなっていった。お昼休みに、一緒に公園でお話ししたりもした。
そのうちに、社内で僕と彼女の仲が噂になっていった。僕はそのことを、あまり気にしなかった。いや、むしろ皆に認められてくれているような気がして、得意になっていた。
ある日、上司の尾崎部長に呼び出されて注意を受けた。「山形くん、アンドロイドが業務以外の事、つまり君とのやり取りに時間を費やすことは会社にとって良くないことだ。これは理解できるね?少々の事では、皆なにも言わないと思うが、ほどほどにしたほうがよいと思うよ。良識の範囲でね。」尾崎部長は僕に対して、比較的優しい物言いで言った。
僕はそれなりに、尾崎部長の言っていることは理解したつもりだった。しかし、僕の彼女に対する気持ちは止まることはなかった。そして僕とアンドロイドの彼女の関係の一線を越えようとする告白を行った。
「君が良ければー。アンちゃんの彼氏になりたいです。」僕は勇気を出していった。
彼女は僕の勇気を出した告白に言葉を返さなかった。そして、少し寂しそうな笑顔でお辞儀をして去っていった。
(たとえ君が人じゃなくても、僕は君のことを愛してる・・・・。)僕は、彼女が好きなことに迷いはなかった。
----その翌日----
社長から大切な話がある、と呼び出された。僕は社長室にノックをして入っていった。
「君は、アンドロイドがお互いに特別な感情を抱くと何かと不都合が生じる事を分かっていて、行動をエスカレートさせていったね。苦渋の選択だが、業務に支障をきたすのでアンドロイドは処分をすることにしましたよ。」
「そんな・・・。彼女を助けてあげてください。もし業務に支障をきたすのであれば・・・僕を解雇してください!!」僕は社長に哀願した。
「それは無理な相談だね。しかも彼女を処分するつもりはないですよ。」
「・・・??処分すると言っておいて、彼女を処分するつもりはないとは・・・?」僕は社長の言ってる意味が理解できなかった。
「だからー処分の対象は君ですよ。」僕は社長に指さされた。
「アンドロイド同士で恋愛なんかするから業務効率が下がるんですよ。彼女の方が、いくらか高級品の部類に入るのでね・・・。」
「・・・・・・!!」僕はすべてを悟った。どうして僕たちは人間に生まれなかったのだろう。アンドロイドでなければ、いまごろきっと・・・・・。
次回作も考えておりますのでよろしくお願い申し上げます。