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独り言 ~詩かエッセイか何なのか~  作者: 藤谷 K介(武 頼庵)
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ずっと

気付いたらもうどこにも帰り道が無い感覚がした

ホンの一瞬見ただけの君に心を奪われた

いつも通りの帰り道 

いつもと変わらぬ店の窓の向こうに

高鳴る胸に戸惑いを覚えた


何度声を掛けようと思った事か

何度声を聞いてみたいと思った事か

それでも勇気がなかった僕は

君が笑うその前をただただ通り過ぎていく


時が過ぎて諦め忘れていた僕の前

君が突然現れた

本当に突然に……

でも隣には僕ではない誰かの姿があった


言い知れぬ絶望 声に出せぬ叫び

部屋の中でうずくまる僕は何に絶望していたのだろう?

まだ何もしていない

まだ何かをしたわけじゃない


想いは毎日膨らんだ

忘れる? なんてもう考えられない

だから

だから僕は


決心の鈍らぬうちにと臨んだ君の前

いつも見かけていた店の中

飛び出しそうな心臓をギュッと掴んで話しかけた

一緒に()()人がいたけど関係ない


精一杯でできる事

なさねばならないその行動

言わねば届かぬその言葉をあなたに

何を言ったのかなんて覚えていないが


気付かぬ間に一緒に右手を差しだしていた


キョトンと僕を見る君の瞳に吸い込まれる

見ているだけの一秒が一分にも一時間にも感じる

背中に流れる汗 ごくりと鳴る(のど)の音


緊張の沈黙を破ったのは君の声

「ふふふ……あははは」

その澄んだ笑い声


差しだした右手に添えられる柔らかい右手

「座りませんか? ここに……」

荷物のおかれた横にスッと移動した君を

僕はどんな顔で見ていたのかな?


一緒の人が兄だと知るのはすぐの事

赤くなっているだろう顔を上げられなかった


それが僕と君の出会いと始まり


一緒に歩いた街の中

買い物で口論したあの店

一緒に

いつでも一緒で


嬉しくて楽しくて

笑って 怒って 泣いて 喜んで

そんな日々はすぐに過ぎて行く


僕らは何処に向いているのだろう?

君は何を待っているのだろう?

何も言わなくてもお互いに想う事が分かったあの頃

あの頃にはもう戻れないから


だから



「結婚しようか」



僕はまたあの店に居る君に逢いに行く

こんな言葉を胸に秘めながら

君はどんな顔をするかな?

楽しみでもあるし 不安もある


目の前にした君にそっと手を出した

そしてまた沈黙が訪れる


「ふふふ……あははは……座らない?」

あの時と同じセリフで僕を迎えてくれた君

そして差しだされた左手


今度は向かい側に座る

この席はもう他の誰かのものじゃない


そして君はスッと一筋の涙を流した。


「ありがとう……待ってた……」


これからの長い道のりも君となら

辛くても 悲しくても

ずっと きっと 何度でも

ゆっくりと歩んでいける


僕と君だけの物語を

ずっと ずっと 永遠に


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