赤と緑の追憶
枯葉舞う歩道を少し前の歌を口ずさみながら歩く
日にを重ねるごとに寒さが体を小さくしていく
通り過ぎる人々も道に並ぶ店のガラス窓にも
なにやら機嫌がいいような気がする
見上げる先々に緑や赤の光が差し込む
あぁ この季節がまた来たのかと首元の服を少し引き上げる
少し前まで楽しみに感じていた光景
明るい表情で電話をかけて来ていた君
今の僕は寒空に引きずられ周りの喧騒が嫌になっている
いい訳も何もなく
部屋の中から出て行った後ろ姿を
どうして追いかけなかったんだろう……
追いかけて後ろから抱きしめていたら
今抱いている気持ちを味わわずに済んだのかな
どこかの街で誰ともわからぬ人に笑顔を見せる君を
僕は下を向いてみてみないふりをするだけ
新しい服も新しい家具でさせ
揃いで買ったマグカップはまだ隣り合ったまま
誰の帰りを待っているのだろう
ずっとずっと側に居ると思っていた
わがまま言う事も何も思えなかった
後ろから抱きしめたかった
どうしようもない心の隙間に冷たい風が舞いこむ
冷たい風の吹く中で小さな買い物袋を提げて歩く
右隣にいるのが君の定位置だった
眩しい光と共に緑や赤の光が差し込む
この季節が来るたびに思い出す隣にいる温もり
ケンカもしたことなんてない
なのに泣きながら出て行く後ろ姿を
どうして追いかけなかったんだろう……
抱きしめてキスしていたのなら
この光る景色が嫌いにならずに済んだのかな
笑顔を眺め
いくつも残ったモノを眺め
君のいた景色を思い出し
ギュッと拳を握りしめる
君の側に……
ここで君が側に居たのに……
久しぶりに……




