望郷のウタ
見上げた鉛色の空に少しだけ飽きていた
夢と希望を描いていたあの頃
この空は都会に来たって悦びが
胸の奥から沸き上がっていた
いつからだろう……
こうして下を向きながら歩くようになったのは
新しいニュースも売れている音楽も
自分だけの世界には必要ないと
どこか楽に考えていた
遠い日に飽きるくらいに見ていた
沈みゆく夕日が赤かった事
今は思い出すこともなく
夕方を知ることなく夜に消えていく
あの頃の僕にはわからなかったモノ
生まれて育った町
一緒に過ごした友
優しく見守ってくれた風景が
たまる涙をぬぐえない
踏み出した街に見上げたネオン
どれもが新鮮な驚きだった
この光こそが求めていたモノだと
自信だけが溢れていた
いつからだろう……
他人の顔を見る事が出来なくなって
住んでいる街さえ楽しいと思えなくて
受け入れられない現実に
あの時の気持をなくしたまま
過去を考えていると笑顔になる
見上げた空はどこまでも高くブルー
重い足取りで帰る事もない
溶けるように眠って朝を迎えている
あの時の僕には知りえなかった事
いつもそばに笑顔があった
心から好きだった君
優しく語り掛ける声が
落ちる涙はぬぐえない
どんなに離れても
どんなに忘れていても
そこにいた自分がオリジナル
いつか……
またあの時に見た空を
こ゚の眼で
この手で
掴むことができるかな……
あの時の僕には知りえなかった事
いつもそばに笑顔があった
心から好きだった君
優しく語り掛ける声がする
たまる想いはぬぐえない
落ちる涙はぬぐえない




