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返事のない部屋
新しい環境に移ってはや数ヶ月
「ただいま」
誰もいない部屋に帰ってきて言う言葉
もちろん返事なんて返るはずもなかった
静まり返る部屋
暗く寒い広がり
[一人暮らし]
憧れと現実の違い
ギャップに戸惑う毎日
いつもと同じように帰って来た俺は
いつもと同じように言う
「ただいま」
やはり返るはずのない返事
いる時は気づかない事も
一人になっていろいろ分かる
有難さだ
自分がまだ子供だったのだと身に染みる
今日もまた同じことの繰り返し
「ただいま」
「おかえり」
返るはずのない返事が部屋に響く
部屋の中の灯りと
柔らかな温かさ
見覚えのある後ろ姿
俺は少し涙ぐむ
「ただいま、母さん」
笑顔という返事が返ってきた




