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第六話~一歩先は魔物ライフだったようです~


 俺、クラッド・アーヴィンは、村長と近隣の王国の大臣との話を終えて、村長の家に戻ると、子供たち三人が庭で倒れているのを見つけた。

 慌てて駆け寄ると、ライトとサラはただ眠っているだけのようだったが、リヒトだけは酷く衰弱していた。


「おい、リヒト!大丈夫か!」


 呼びかけるも返事はなく、ただ苦しそうに呻いていた。

 村長が遠くで「倉庫が……」とか言っているが、そんなこと後回しだ。

 俺は治癒魔法も使えるミレーヌを呼びに一度自宅に戻った。


 ミレーヌを連れて戻ってくると、リヒトの衰弱の原因は魔力の枯渇によるものだとわかった。

 三歳の子供が、魔力の枯渇なんて、初めて聞いた。あり得ないと思った。だけど、目覚めたライトとサラちゃんは「リヒトは、木の枝を思い切り振って、遠くにあった倉庫を壊して気絶した」みたいなことを言っていたから、剣術をつかって魔力の枯渇に陥ったということだろう。


 しかし、それは衝撃波のことだ。剣術において離れたものへの攻撃方法、即ち衝撃波を放つことのできる術は【断空斬(エアブレイク)】のみだ。だが、あの術は三級剣術である。間違っても三歳の子供が使える術ではないし、第一俺も使えないのだから、教えられる者は近くにいない。

 訳が分からなかった。


 だけど、【断空斬】を使ったせいで魔力が枯渇して、衰弱したというのなら、一応の説明にはなるし、辻褄は合っている。

 本人に聞くのが手っ取り早いか。

 今はミレーヌが魔力を分け与えているので、リヒトの顔色は優れてきているが、枯渇したままにしていると、魔物になりかねないからな。後で注意しておく必要がある。

 まさか、魔力の枯渇の注意を、三歳の子供にするとは思っていなかったが。


 リヒトは、初めて会った時といい、何者なのだろう……。

 成長は早いし、賢いし、やけにしっかりしているし、何よりも型無しなのに剣術が使えるし。

 俺も父親としてまだまだだな。子のことを何も知らないじゃないか。


 もっと知っていかないとな。


       ×       ×       ×


 目を覚ますと、知っている顔が五つも並んでいた。勢ぞろいである。


「あ、兄さん。良かった……」

「生きてた!」


 ホッと肩を撫で下ろすライトと、なにやら不吉なことを想像していたらしいサラ。

 それに両親や村長までもが、安堵した表情で俺のことを見つめていた。

 みんなどうしたんだ?

 というか、俺はどうしたんだったか……。


「リヒトは魔力の枯渇で倒れてしまったのよ」


 俺の疑問を察したのか、ミレーヌがそう答えてくれた。


「魔力の枯渇……?」

「魔力の消耗が激しいと陥ってしまうエネルギー不足みたいなものね」

「そうなんだ……」


 魔力枯渇、やはりそういったものがあるのか。


「それで魔力を回復させるためにはどうしたらいいの?」

「ちゃんとした休息をとって、お腹も満たせば、自然と回復するものよ。あとは、他人から分け与えてもらうこともできるけど、これは緊急時用ね。今は私の魔力を分け与えているけど、これも特例よ」

「じゃあ、逆に魔力が枯渇してしまって回復できなかったら?」

「文字通り体が朽ちて、魔物になってしまうわね。魔物ってこの世界の生物が、魔に取り込まれたもののことを言うのだし」


 うわあ、俺はあと一歩で魔物ライフだったわけか……。生前では、魔物とハーレムを築くような創作物もあったけど、その手のものの良さを俺はまだ理解しきれてないからな。俺に魔物ライフはまだ早い。


「助けてくれてありがとう、お母さん」

「いいえ。魔力の使いすぎは注意するのよ?」

「はーい!」


 魔力のシステムというのも、きちんと理解しておく必要があるな。

 あの成功した衝撃波だって、偶然かもしれないし。


 でも魔力を操作する感覚は掴めた。いい収穫だ。あれだけの威力があれば、俺も戦える。

 今では燃費が悪すぎて実用性は皆無だけど、ちゃんと鍛錬を積めば、数発は打てるようになるはずだ。


「ところでリヒト、目覚めたばかりで申し訳ないんだが、どうして魔力の枯渇に陥ったのか教えてくれないか?」

「ああ、えっと……」


 俺は、魔力を使った実験をしたことや、衝撃波を生むことに成功したことなどを正直に話した。歴戦の剣士であるクラッドなら、何か知っているのではないかという打算での正直さだ。


「そうか…………」


 しかし、クラッドは難しそうな顔をして、黙りこんでしまった。


「お父さん?」

「なあリヒト。もうその術を使うのはやめなさい。少なくとも、人前では駄目だ」

「どうして……?」

「その術が使えた理由は分からないが、それは剣士の中でも限られた者にしか使えない術だ。実際に見たわけではないから、もしかしたら違うかもしれないが、三級剣術【断空斬(エアブレイク)】。それが、その剣術の名前だ。三級以上の術を扱える者は、王国の王に仕えることを許される権利を持つ。そんな術、父さんすら使えない……」


 クラッドはどこら悔しそうな表情をしながらそう説明した。


「三歳の子供が、そんな術を使えるなんて広まったら、どうなるかわかったものじゃない。だから、人前では絶対に使ってはいけない。わかったか?」


 いつになく真剣に言う父に対して、俺は頷くしかなかった。

 これも、やはり経験値増加という二周目特典のおかげなんだろうな。


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