コラボって何?
イズモビル、天照ソフトの応接間で、僕達はとあるお客さんを迎え、打ち合わせをしていた。
「こちらがその資料です」
眼鏡をかけて灰色のスーツを来た若いサラリーマン風の男性が紙の束を机に広げた。
「我が社【雷神】が契約している会社の内、天照ソフトさんのダンジョンを作ろう!とのコラボレーションが可能な会社は10社あります。お菓子メーカーからオモチャ屋に兵器メーカーまで様々です。我々は多くのゲームアプリと会社をコラボレーションさせて成功して来た実績があります。その内容はこちら3番の資料に書いてあります」
この男性は、ダンジョンを作ろう!の宣伝をして貰っている広告代理店【雷神】の営業マンだ。四天王ッ娘に実況ライブさせたりしたのも雷神の提案で、この会社はおそらく裏でカカシちゃんが関わっている気がする。
実況ライブ以外にも、他社のアプリやインターネットに広告を掲載してくれたり、公式サイトを作って更新してくれたり、SNSを使った宣伝もサポートしてくれていて、今のダンジョンを作ろう!の人気も、これらの宣伝おかげと言って間違いないだろ。
今月も課金での利益がかなり良かったので、来月からの広告費を大幅に増やそうと言う事で打ち合わせをしているのである。
それで、広告と言ってもポスターを貼ったり街中でイベントをしたり看板を立てたり多種多様な物があって、お金があればアニメにして配信するという事までできるらしいので、話を聞いていたのだが、その中にコラボレーションと言う物に興味が湧いて説明を聞いているのだ。
「ひとことにコラボレーションと言っても様々な方法があります。お菓子を例にあげますと、お菓子にゲーム内のアイテムチケットを付けたり。お菓子の箱のデザインにゲームのキャラクターを使ったり。天照ソフトさんのゲーム内で回復アイテムとしてそのお菓子を配布や販売をしたり。そのお菓子をテーマにしたダンジョンを期間限定で公開したりできます」
他者のゲームで実際にコラボした時の画像や、コラボ中に増えたプレイヤー数のグラフを見せて貰った。
なるほど、確かにかなりの効果が見込めそうだ。ただ、あまりに変な物とコラボするとゲームの世界観が壊れてしまう気がする。まぁ、その辺は自由にダンジョンを作れるが売りのゲームだし余程の事がない限り大丈夫か。
「それで気になるのは、それに必要な広告料なのですが結構お高いですよね?」
これだけ手の込んだ事をやるんだ。コラボ相手の会社にもお金を払わないといけないだろうし予算内でできるか不安だ。
しかし、予想に反して営業マンは自信満々の笑みを浮かべながら、クイッと眼鏡を直した。
「良くそう思われる会社もありますが、コラボレーションに掛かる広告料は一切必要ありません。コラボ相手の会社さんにも何も払う必要はありません。むしろお金が貰える場合すらありますよ!」
「なっ!?何だってー!?」
「ヤマヒコさん!」
「わっ、分かってる……」
月読さんが注意をうながしてくれたけど、確かに無料なんて言葉に騙されてはいけない。無料だったら営業マンの給料もでないハズだし何か裏があるに決まっている。
僕は決心して言葉を選んで話し始めた。
「すみません、言いづらいのですが本当に無料なんて事は無いですよね?それだと雷神さんお仕事にならないと思うのですが」
よし、言ってやったぞ!これで相手の反応待ちだ。
僕と月読さんは営業マンをジッと見つめ、何を言いだすかかまえる。エヒメちゃんはそんな事おかまいなしに、お茶菓子のドングリクッキーをモリモリ食べている。空気を読んでよ。
しかし、営業マンは自信満々な表情を崩さず1枚の資料を手に取り、僕達に見せた。
「コラボアイテム販売による収益?」
資料にはそう書いてあった。
「そうです。ゲーム内で他社の人気キャラクターやブランドとのコラボアイテムを販売して収益をあげる方法です。そのアイテムが売れたら売り上げの何割かをコラボ会社や広告代理店に入れていただければ、天照ソフトさんが広告料を払う必要もない上に、売り上げの残り何割かが儲けとして入ってきます」
あーなるほど、売り上げから儲けを取るわけか。初期費用はいらないけど売れたらその分払わないといけないのね。
「通常コラボアイテムはゲーム内のガチャガチャで販売するのですが、ダンジョンを作ろう!にはガチャガチャがありません。しかし課金で得たポイントを使ってアイテムを買って貰う事ができますし、コラボ会社のイメージに合ったダンジョンを作れば、プレイヤー達が作ったダンジョンの様に違和感なく探索してもらえて、コラボ会社も思う存分宣伝できて、コラボ用に作ったコラボダンジョンパーツもガンガン売れて、我が社も何割か貰えて皆大満足です。ビジネス業界で言うWINWINと言うやつですね」
確かに人気キャラクターとかのアイテムをゲーム内で売ったら、それの人気だけで売れるな。ゲームをやった事が無い人気キャラクターのファンでも気になってゲームをはじめてくれるかもしれない。結構これは良いかもしれないな。
「分かりました。やりましょうコラボレーション!」
「ありがとうございます!」
僕と営業マンはガッシリと握手した。月読さんはその姿を満足気に見ていた。
エヒメちゃんは、お菓子を食べ終えて昼寝していた。エヒメちゃん、コラボアイテムのデザインを沢山頼むから頑張ってね。