現実世界の一般人
それから1カ月半後の現実世界。日本。
俺は大和建人、普通の高校生だ。夢はトラックにひかれて異世界転生する事だったんだけど、最近彼女ができて現実世界も悪くないなと思い始めた。
でもやっぱりファンタジー物は好きで小説や漫画を読んだり、ゲームをして妄想の世界で冒険している。あー、やっぱり異世界転生したいなぁ。
「タケル!また異世界転生とかっていう変な宗教の事考えてるの!?そういうのはもう辞めるて言ったよね?タケルが死んじゃったら私凄く悲しくて耐えられないよ!?」
妄想に花を咲かせていると隣を歩いていた俺の彼女、弟橘姫が注意してきた。お前、俺の心が読めるのか?彼女の事がちょっと怖くなってきた。
「ちっ違うよ!?ヒメ可愛いなって思ってただけだからな!?それに異世界転生は宗教じゃないって何度言ったらわかるんだよ?」
彼女、ヒメは俺の大好きな異世界転生を宗教だと思い込んで毛嫌いしている。この間、ヒメの前で異世界転生したいなんてうっかり言ってしまって1日中死なないように後をつけられてトイレの中まで入ってこようとしたくらいでちょっと異常だと思う。それさえなければ凄く可愛い彼女なんだけどなぁ。
「幸せな世界に行くために死ぬだなんて怪しい宗教に決まってるじゃない!私、絶対タケルの事死なない様に守るんだから!」
「はぁ……」
そう言ってヒメが抱きついてきて制服ごしにぬくもりが伝わってきてとてもドキドキするし、俺の事を大事に持ってくれる事は凄く嬉しい。嬉しいんだけどなんか愛が凄く重すぎるから複雑な気持ちだ。
そんな日常の会話をしながら俺達は学校に向かって歩いていく。
そんな時、ブーンブーンとスマホが振動してメッセージが来た事を伝えた。
「ん?誰だ?」
宛先はアマテラスという名前の人。こんなニックネームの友達いたっけかな?
メッセージには、【ダンジョンを作ろう!】アマテラスさんが作ったクランに招待しているよ!本日アップデートイベント開催中!
っと書いてあり、ゲームアプリをダウンロードできるリンクが貼られていた。
「なぁ、アマテラスってニックネームのヤツって誰かいたっけ?」
「あ!メッセージで来たダンジョンを作ろう!って言うのの広告でしょ?私にもきたよ」
「誰かアカウント乗っ取られたのかな?でも何か聞き覚えのある名前なんだよなぁなんでだろ?」
「私も何か遠い記憶で会った事があるような気がするんだよね」
どれだけ考えても思い出せない。何か記憶にモヤがかかった様なそんな感じがする。
「よし!このゲームやってみようか!」
「え~?このゲームって異世界転生物じゃないの?」
「何でも異世界転生物にするんじゃねぇよ。普通にファンタジーだよ」
コイツ、全てのゲームや創作物を禁止する気か?恐ろしい!
「ふ~ん、なら私もやる!」
ヒメは勝ち誇ったような表情で俺を見た。ゲームとかやった事ないだろコイツ。
「はぁ、勝手にしろよ。じゃぁダウンロードするからな」
「は~い!」
カカシストアーの画面でゲームをダウンロード完了したので、ゲームを起動した、その時だった。
「うわ!」
「きゃっ!」
スマホの画面が激しく光って俺達を包んだ。
『ふふふっ、良く来たのじゃ!ヤマトタケル!』
気がつくと俺達はレンガで作られたうす暗い部屋の中にいた。
「あんた誰?」
「あれ?ここどこ?」
『妾の事を忘れたのか、良いだろう教えてやる!妾はアマテラス、この現実世界の神じゃ!』
神!?このシチュエーションはまさか!
「俺は異世界転生するのか!?」
「え!?」
『いや…、普通にゲームの中に呼んだだけだからここは異世界じゃないわよ?あえて言うならVR?』
「何だと!?チクショウ!異世界転生じゃないのか!」
「タケル!異世界転生なんて私許さないからね!」
『あー!もうっ!そんな事はどうでもいいのじゃ!ゲーム説明するから妾と戦うのじゃー!』
「うわぁぁあ!」
アマテラスが叫びながら襲い掛かって来た!
その頃、黄泉の世界、イズモビルオフィスでは、
『アマテラス様ガ、現実世界デプレイヤーヲ集メテクレテイル様デス』
「おっ!?ついに引きこもりから脱出したのか?」
「いえ、まだ引きこもってゲームだけをしている様ですよ?今日のアップデートでゲーム内に招待ボタンを設置したので知り合いを招待してくれているのではないでしょうか?」
「ちょっとずつでも元気を取り戻してくれるといいな」
「そうですね」
そう言って月食で隠れた太陽を温かい目でながめる僕達だった。