ツクヨミさんとの出会い
黒髪に巫女服のプレイヤー【ツクヨミ】が、魔物のアメーバにポコポコ叩かれている。
よく見ると1ダメージずつしか受けていない様だが、相手は8匹、1回で8、10回で80ダメージにもなる。
今の僕は天叢雲剣の効果で全ステータス+100になっていて、HPは110あるが、元のHPは10。地下2階にいる様なプレイヤーならあっという間に倒されてしまうだろう。
しかもこのゲームは死ぬとプレイヤーデータが消滅する。彼女を早く助けなくては!
『え!?人が居る!?』
僕はあたふたしながら、壁の向こう側をみていると、彼女が喋った。
どうやら画面の端にあるキーボードのボタンを押すと、文字を打ってチャットができる様だ。
『大丈夫ですか!?』
『あっ、ごめんなさい。このゲームはプレイヤーが誰もいなゲフンッゲフンッ!いえ、地下2階には人があまり来ないので、アメーバの養殖をしていたんです』
『養殖?レベル上げですか?』
チャットで会話を続けると彼女は、採掘場や工事現場とかで使いそうな、木の棒に前後に伸びた鉄の爪が付いたの工具、ツルハシでアメーバを殴り始めた。
すると、999っとダメージがでて次々と一撃でアメーバを倒して行く。
『999ダメージ!?そのツルハシ、天叢雲剣並みの攻撃力なの!?』
『あ……、私はこのゲーム始めてかなり長いので、ツルハシだけではなくて全装備を最大強化してあるので、この位のダメージは普通にでますよ』
彼女は初心者じゃなかったのか!でもそんなに強い人が何で、地下2階なんかに居るんだ?
彼女は倒して地面に散らばった粘液を拾い集めて行き、その中に1つだけ落ちていた赤瑪瑙を拾うと話し始めた。
『私、趣味で赤瑪瑙を集めているんです。これで6859個目。アメーバを倒すと0.1%の確率で出るのですが、中々出なくて、アメーバは時間が経つと分裂して2匹に増える能力があるので、少しだけ残して増えるのを待っていたのですが、他のプレイヤー様の邪魔になってしまうので、もうやめておきますね』
そうか、彼女が言っていた養殖とは、魔物を養殖して増やすと言う意味か。
この前やっていたゲームで養殖と言うと、高レベルな人に手伝って貰って初心者のレベルを上げるというのがあったからそっちかと思った。
そういえば、僕も赤瑪瑙をさっき拾ったんだった。
『よかったら、1個持ってるけどあげようか?』
『えっ?本当ですか?それでしたら貴方が持っている天叢雲剣の耐久を回復できる、殺人粘液と交換しますよ?』
そういえばガチャで、そんな名前のアイテムを1つ手に入れていたなあ。それにしても殺人粘液って何だ?高レベルな階層に殺人アメーバって名前の魔物でも居るのかな?
『凄く助かります!じゃあそちらに行きますね!』
僕は、地下2階をグルグル周って、やっと彼女の居る部屋にたどり着いた。
『ありがとうございます。よかったら、貴方には色々教えた方が良さそうですし、低級ボスの居る地下5階まで案内しますよ?』
『わーい!ありがとうございます!ベテランの方にレクチャーして貰えるなんて、ガチャをしたら天叢雲剣も出たし凄くラッキーです!』
本当に僕、今日は運が付いてるぞ!最強武器に、素敵な先輩!もしかしたらヒロインになってくれるかもしれない!これまでずっと不運の連続だったから、その分が今日来たんだねきっと!
『それでアドバイスその1、なのですが、その天叢雲剣は使わない方がいいですよ?』
『えぇーっ!?』
まさかのアドバイスに僕は絶句した。