邪神の困惑
「そんなっ、ばかな……」
黄泉比良坂ダンジョン最下層で邪神はスマホを食い入るように眺めていた。
ゲーム内に封印して10階に配置した兵隊100人が50人を超える人間に攻撃されてどんどん数を減らしている。
しかも数で押し切る作戦だった100人はいくつかの空間に分けられて、その数をまばらにされてしまい人間どもに反撃を受けていて、何より驚いたのがピンク色の髪の人間?足が棒の何者か分からない者が同時に複数存在していて兵隊達の攻撃を全て受け止めている。
妾の影響を受けている空間で分身などという芸当が使える者は神しか考えられない、しかも妾に迫る力。一体こやつは何者なのだ?
邪神が知る限りこの世界で神の力を使えるのは自分の子供達の天照、月読、素戔嗚だけだ。あんなピンクの髪の神は見たことも聞いたこともない。
「まずい!このままでは負けてしまう!」
焦った邪神はスマホに神気を送り込みゲームシステムを支配しようとした。
神気はインターネット回線を通って兵隊を強化しピンク髪を袋叩きにし、ついに倒した。
「よし!忌々しいピンクの化け物を倒したのじゃ!」
ピカッ!
「なっ!?なんじゃこれは!」
しかし、次の瞬間スマホの画面が真っ白になりゲーム画面が見えなくなった。
『フフフ、オ金ノ匂イガシタカラ見逃シテイタケド、余リ調子ニ乗ル様デシタラ削除シマスヨ?』
「な!!?何じゃキサマは!?いったどうやってこの領域まで入った!!?」
余りの出来事に震えが止まらない邪神が握りしめるスマホの画面には、あのピンク髪の女の顔が映っていた。
「10階は間違いなく神気で妾の領域になっていた!それを乗り越えて妾の前に現れるなどありえない!ありえないのじゃ!」
『神気デスカ、ソンナ物モウ古イノデス。今ノ時代オ金ガ全テ。オ金ヲ持タナイ貴方ハ無力デス。貴方ハゲームヲ盛リ上ゲル為ニ生カシテアゲテイルダケデス。今度サッキノ様ナフザケタ真似ヲシタラ黄泉比良坂ゴト潰シマスカラ覚悟シテ下サイ』
お金?なんじゃそれは?分からないのじゃ。そんな事よりもこの者から感じる力は間違いなく妾を超えている。一体何なのじゃこの化け物は。
仕方ない、ここはいったん退いて様子をみるしかない。
「わかったのじゃ、スマホへの干渉はやめるのじゃ」
そう言うと、ピンクの化け物は笑顔で一瞬止まった。
『イエ、ボスノ配置ハ続ケテ大丈夫デス。シカシワタシノ用意シタアプリヲ使ッテ神気ハ禁止デス。分カリマシタカ?』
なんじゃと?この化け物、考えが読めない。何て恐ろしいヤツだ!
『フフフ、ワタシハオ金儲ケガシタイダケデス、コレナラオ互イWINWINデショ?デ
ハ、頑張ッテ下サイ』
ピンクの化け物がそう言うとスマホの画面は元のゲーム画面に戻って、兵隊の全滅の表示と何故か、30人にお気に入りされましたと表示されていた。
「サラちゃん採掘終わったミャ?」
『鉄が沢山とれたよ!バンザーイ!』
「おお!銃製造祭りだポコリンね!」
3人で戦利品の収穫を祝っていると、プリマちゃんがふと後を振り向いて固まった。
「……!?皆!後をみるのですわよ!!?」
「ミャ?」
「ポコリン?」
「……!?」
4人の後ろにはハナちゃんの部屋いっぱいの兵隊達がびっくりした顔で立っていた。
「「「!!!???」」」
4人と100人が向き合ってお互い固まっている。
「あ……!」
兵隊の1人から声が漏れる。
「ハナ様、サラ様、ミッピ様、プリマ様!」
「「「助て下さりありがとうございます!!!!!!」」」
「「「えぇ~~~~~!?」」」
100人の兵隊達は一斉に土下座し4人はあまりの驚きに腰を抜かした。