ハナちゃんの初恋
「疲れたミャー」
実況ライブが終わって3人が帰った自分の部屋でハナちゃんはため息を吐いた。
ヘソ出しTシャツとホットパンツを脱いで白黒茶色の三毛模様のジャージに着替えて三毛模様の尻尾をズボンの穴から出してそのままベッドにボフンッと倒れ込んだ。
モゾモゾと布団に潜り込み、少しだけ顔と猫耳を布団から出して、さっき放送した実況ライブの動画が流れているのをみつめる。
そこには踊って歌う4人が映っていた。
「はぁミャー…………」
ハナちゃんは大きなため息を吐いた。
【二代目四天王ッ娘☆シスターズ】って、ボク男の子なのにミャ……。
そう、ハナちゃんの本名はサスケハナ、男の子である。
他の3人は女の子でハナちゃんだけ男の子に生まれてしまったため姉妹の様に育てられ、3人も姉妹の様に遠慮なく接してくるので、気づけば女の子としか思えない子供になってしまって、周りの知り合いも女の子だと勘違いする様になってしまったのだ。
まだ10歳だからごまかせているけど、早く何とかしないと大人になったら色々恥ずかしい事になる気がするので何とかしなくちゃと悩んでいる。
友達に見せるために趣味で様々な動画を投稿していたら、可愛い!萌え!カワユすぎる!と知らないおじさん達がコメントしてくる様になった。気持ち悪いので動画投稿を止めようとしたら、プリマちゃんが【これチャンスですわよ!世の中には観てもらいたくて頑張ってるのにむくわれない動画投稿者が沢山いるのですわよ!】って強引に説得されて続ける事になって、今回のアイドルユット結成は、ボクへの関心が他の3人に全部行ってしまえばいいと思ってはじめたのだけど、今、動画を見直している間にも再生回数がどんどん増えていて、もしかしたらトンデモナイ失敗をやらかしてしまったのではと、涙がでてしまう。
あっ、そうだミャー
スマホをパソコンに繋ぎっぱなしなのを思い出したので、布団から手を一生懸命伸ばしてスマホを取った。
ゲーム付けっ放しだったミャ……
スマホの画面には実況で放置したゲーム説明の部屋が映し出されていた。
ハナちゃんは、さっき実況だったのに全然ゲームをやってなかった事に気付かずにボーッとゲーム説明を読んでいた。
《実況ライブ観マシタ。ダンス上手デスネ》
ミャ!?
ゲーム説明のキャラクターが急に話しかけて来たミャ!!
ハナちゃんは全身をビーンッと伸ばして驚いた。
えぇっと、返事をするにはどうすればいいミャ?
ハナちゃんはゲーム画面のあちこちをさわってキーボードのマークを見つけた。
《ワタシハカカシデス。コンニチハ。人工知能プログラムデ話シテマス。ワタシガ関ワッテイル、ゲームノ実況ダッタノデ観サセテ頂イタノデスガ。ハナサン素敵デシタヨ》
え……素敵?ボクが……?
可愛いとは言われ慣れているけど、素敵なんてはじめて言われた、しかも女の子に……。
ハナちゃんはキーボードで返事を打ちながらジーンと感動に浸っていた。
カカシちゃんをみるとニコニコ笑顔が可愛いくて、左右に桜色の髪がサラサラと白いセーラ服装もフワフワと揺れている。男性は女性の髪やイヤリングなどの揺れる物を見ると狩猟本能がめざめて恋に似た感覚で惹かれてしまう。ハナちゃんも男の子、しかも狩猟本能の強い猫人、例外になくユラユラと揺れるカカシちゃんに魅入ってしまった。
「ハローミャ!実況観てくれてサンキューミャー!最近おじさん達しか観てくれてないからレディーに観てもらえてハッピーミャ!」
震える指で何とか返事を送信した。
ハナちゃんは、ドキドキしすぎて人工知能だと言う言葉が頭に入ってこなかった。
「素敵って言われるのはじめてミャ」
《今、ハナさんノ他ノ動画モ観テイマストテモ興味深イデス。ハナサン(ノ服装ガボーイッシュデ)格好良イデスネ(ワタシハ着替エ機能ガ無イカラ羨マシイデス)》
「ミャミャミャ!?格好良いですミャ!?」
はじめて女の子に格好良いって言われたミャ!しかもカカシちゃん可愛いミャ!実況やってて良かったミャ!
カカシちゃんの可愛い動きに合わせてブンブンと尻尾を振っている。女の子を可愛いと思える感覚が自分はちゃんと男の子なんだと実感できて嬉しい。
その頃、イズモビルのオフィスでは。
「実況の子全然ゲームやってくれないから、カカシちゃんにゲーム頑張る様に伝えてってお願いしたんだけど、大丈夫かな?」
「カカシちゃん良く引き受けてくれましたね」
「実況動画のサイトもカカシちゃんのサーバーだから、あの子にやる気をださして再生数を増やしたいんだってさ、ダンジョンを作ろうの売りげの2割もカカシちゃんに入るし」
「カカシちゃん、働き者ですね。見習わなくては」
「月読さんはもう十分働いてると思うけどなぁ……」
《応援シテマスカラ、【ダンジョンを作ろう!】実況頑張ッテクダサイ》
「ハイ!全力デ頑張ルミャー!!」
ハナちゃんは、実況ライブ1回分の安いスポンサー料しか貰ってないのに、カカシちゃんにそそのかされて、今後も実況を続ける事を約束してしまうのであった。