ツルハシ1万P
エヒメちゃんを連れてオフィスに帰ってきた僕達はご飯を食べ、またゲーム制作作業に入った。
ゲームもだいぶできあがってきており、エヒメちゃんと僕はバグなどの不具合が無いかテストプレイしている。
「ガチャガチャがどこにも無いよ〜?」
「ガチャガチャはいい思い出がないから廃止したんだよ」
「え〜!神器ないとつまらないよ〜」
そう、僕が散財しまくったガチャガチャはもう無い。
初回プレイのダイヤプレゼントでガチャガチャを回せるのもやめた。ガチャガチャででる神器は強くなりすぎてゲームを純粋に楽しめなくなる。もちろんダンジョン90階辺りで手に入る超レアな素材を集めれば神器を作る事はできるし、それを誰かがショップに売れば買う事もできる。
装備の強さや手に入る階やレア度はゲームバランスが崩れない様に慎重に考えて調整した。これなら誰もがコツコツとゲームライフを満喫してくれるはずだ。
「あっ!ゲームのPは現金で買えるんだね〜。あっ!お金使わなくても無限にP交換できる〜!」
「ちょっ!今はテストプレイだからお金減らないんだよ!おかしい事になるからやめて!」
エヒメちゃんが1万金を1万Pに変換するボタンを連打して、エヒメちゃんのゲームポイントが10万Pまで増えてしまった。
ガチャガチャに代わるゲーム会社の収入源としてゲームポイント購入システムを導入した。ポイントがあればショップで流通している物なら何でも買えるので、仕事が忙しくてダンジョン探索で稼げない人は、現金でポイントを買って装備やダンジョンを作るパーツを買ってゲームを進める事ができる。
ゲームアプリは、お金を払わないけど暇で沢山プレイしてゲームを攻略する無課金プレイヤーと、お金を払って効率良くゲームを攻略する課金プレイヤーの2種類がいる。
ゲーム会社にとって、お金払わない無課金プレイヤーは居ない方がいい様に思いがちだけど、無課金プレイヤーの数と課金プレイヤーの数は比例する。無課金プレイヤーが沢山居ればゲーム内はにぎわって盛り上がる。その楽しい雰囲気に課金プレイヤー達が集まってくるのだ。
ガチャガチャに頼るシステムだと、無課金プレイヤーはお金を払わないがゆえにガチャガチャができない。ガチャガチャの装備が無いと魔物が強すぎて倒せなくてゲームをやめてしまい、ガチャガチャをしてくれる課金プレイヤーはプレイヤーが少なく感じてやめてしまうという悪い流れになってしまう。
無課金プレイヤーのために初回プレイでガチャガチャを回せるとか、1週間毎日ゲームを起動したらガチャガチャを1回できるとかのサービスもよく見かけるけど、あれは最強装備のばら撒きにしかならないし、わざわざお金を払ってガチャガチャしている人が馬鹿らしくなってくるから良くないと思う。何よりガチャガチャって人間がギャンブルにのめり込む習性を利用した法律的にもギリギリの物だからあまり好きになれない。
それなら、ガチャガチャというギャンブルで最強装備を手に入れるのではなくて、そのお金をゲームポイントに変換してショップで無課金プレイヤーが頑張って探索して出した装備を買って貰った方が、課金プレイヤーや無課金プレイヤーにも絶対良いと思うんだよね。
ガチャガチャだと、ただシステムから装備を手に入れるだけだけど、相場システムのショップなら生きた人間が出した装備を買う事ができる。せっかくオンラインゲームなんだから、でプレイヤー同人で交流しないともったいないよね。
「あっ!ツルハシが売ってる!え〜!これ1万Pもするの!?でも買っちゃおう!」
「ちょっ!エヒメちゃん!交換したポイントは相場が崩れるからショップに使わないでよ?」
「えー?もう買っちゃったよ?10本」
「えー!?10本も買っちゃったの!?新しい合成システムだと複数あっても意味無いよ?あー!ツルハシの相場がめちゃくちゃ高くなちゃったじゃん!もう!月読命さんすみません、テストデータリセットしてください」
エヒメちゃんのせいでテストプレイを、はじめからやり直すはめになってしまった。
ちなみに、何故ツルハシがゲームを始めたばかりの状態のショップにあるのかと言うと、初期状態のショップの在庫リストに月読命さんが勝手に入れたからだ。消してって頼んだけど採掘システムを知ってもらうのに必要だと説得されて仕方なく残したのだ。
前のシステムの時の普通の武器だったツルハシと違って、これには採掘能力が付いてるから初期相場1万Pという高い値段が設定になっている。ゲーム初めてすぐに1万も払ってこんな物を買う人なんて絶対いないと思う。月読命さんのアイテム収集趣味も困ったものだね。この会社みんな自由すぎだよ……。