黄泉比良坂
スマホとやらを通して娘達が作った仮想世界の支配も着実に進んでいる。その上、この仮想世界はどうやら人間どもが使っているスマホとやらに繋がっている様だ。しかも現実世界の物にまで繋がっている。
このまま妾の神気で少しずつ人間どもを侵食していけば、近いうちに2つの世界は妾の物となるだろう!ああ、なんて愉快なのだ!
あははっ!あははははっ!!
邪神は黄泉比良坂ダンジョン最下層で高らかに笑った。
ここ1ヶ月で溜まりに溜まった邪神の神気が爆発的に膨れ上がり、ダンジョン内に充満して魔物達を凶暴化させる。魔物達は力を増大させて巨大化しダンジョンから外へ溢れ出した。
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ウヴーッ!!
はじめての村に警報が響き渡る。
「旦那様!黄泉比良坂から大量の魔物が溢れ出しています!ただいま門番が戦っていますが魔物がチートで鬼強化されていて村に攻め込まれるのも時間の問題です!」
イズモビルの村長の間に警備員さんが現状を伝えた。
「分かったのじゃ!今すぐ魔物の駆除に向かう。母上様にも困ったものなのじゃ」
山幸彦の祖父は、はじめての村の村長として村と周辺を統治し、黄泉比良坂ダンジョンを監視する役割をしている。
しかし、今回の様に黄泉比良坂ダンジョンから魔物が激しく溢れ出たのは1000年ぶりで、かなりの異常事態で祖父も動揺を隠せないでいた。
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「なっ!?何だ!?サイレン!?」
「ヤマヒコさん外を見てください!」
「何だあれ!?村の外壁に何かが大量に押し寄せて来ている。まさか魔物!?」
「あれは黄泉比良坂ダンジョンの魔物です。母上、邪神の神気が増大した影響で溢れ出たのでしょうね」
「あれが押し寄せて来たら村は壊滅するんじゃない!?」
「村人ではチート強化された魔物は倒せないでしょうね。でも大丈夫です。スーちゃんが居ます」
スーちゃん、お祖父ちゃんか!
外の様子を見ているとお祖父ちゃんが物凄い速度で魔物に向かって走っていくのが見えた。
確かお祖父ちゃんって戦神なんだよね。
お祖父ちゃんが村の門に入って行き戦い始めようとした、その瞬間。
《イズモ……起動シマス。乗組員ハ戦闘配置ニツイテクダサイ》
「え?」
オフィスの壁に付いているスピーカーから謎の放送が流れた。
「ヤマヒコさん!窓が勝手に閉まっていってます」
窓を見ると開けていた窓が自動で閉まりロックまでかかってしまった。そして窓のガラス面を覆う様にシャッターが降りて外が見えなくなってしまった。
「いったい何が起こっているんだ?」
意味が分からない、押し寄せて来た魔物と関係あるのかな?ビルのセキュリティーかな?でもさっき放送で乗組員って言ってたよな。
《ヤマビコ君!ヤマビコ君!》
スピーカーから何か聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「ヤマビコ君!ビルの最上階まで来れたんだけど何か機械がいっぱいで、触ったら何か動きはじめて止まらなくなっちゃったよ〜!」
壁に映像が映り、そこにエヒメちゃんが居てあたふたしていた。エヒメちゃんの後ろに大量のディスプレイやコンピュータらしき物が映っている。エヒメちゃん、何かやらかしたな。