ダンジョンを作れる機能
「誰でもダンジョンを作れるってどういう事ですか?」
「ウサギダンジョン作れる!?」
月読命さんとエヒメちゃんが体を乗り出して質問してきた。顔が近い!もうちょっと離れて!エヒメちゃんは目が肉食獣みたいになってて怖い!
「文字通り、ダンジョンを作れる様にするんだよ。ダンジョンを探索して集めたアイテムで壁や魔物や罠を作って自分だけのダンジョンを作るんだよ。
そして、5階10階と5の倍数の階だけはボス階だからいじれないけど、他の階はプレイヤー達が作ったダンジョンを1階ずつランダムに並べてプレイヤー同士で探索できる様にする事で、自分が作ったダンジョンで遊んでもらえる面白さを体験できる。クリアした時に評価ボタンを付けて人気が高いダンジョンがより多くの人が来る様にしていけば自然と面白いダンジョンに成長して行くって仕組みだよ」
「なるほど、それなら他のゲームに無い珍しいシステムですし人が集まってきそうですね。しかし、ボスを倒すためのリニューアルでしたよね?」
月読命さんが不思議そうに手を頬に当てて首を傾げた。
「ボスは何万何十万という人数でゴリ押しすれば倒せるはず。それに邪神を倒すだけが目的ではないんだよ」
「と言いますと?」
「勇者達がダンジョンを作る事によって、ボス部屋を占拠している邪神も同じ1人のプレイヤーとして扱う事ができる。そして自分の作ったダンジョンが評価されたりプレイヤー達と交流する事によってお互い分かり合えたらいいなと思うんだよ。邪神って月読命さんのお母さんなんでしょ?元はきっと月読命さんに似て優しい人だったと思うんだ」
「ヤマヒコさん!」
月読命さんが感動して抱きついてきた。
「私、ずっと1人でお母様を見守ってきて、誰も助けようとしてくれなくて、私も何もできなくて……。お母様を理解しようとしてくれたのはヤマヒコさん、貴方が初めてです!」
月読命さんが涙を流しながら震えている。僕はそっと抱きしめてあげた。
「い〜なぁ〜」
エヒメちゃんが羨ましそうに指をくわえてこっちを見ている。頼むからいまだけは邪魔しないで!っと目で訴えたら分かった様でおとなしく待ってくれた。
「ぐすっ、すみません取り乱しました……」
5分ほどで月読命さんは落ち着きを取り戻した。月読命さんって冷静そうなのイメージに意外と情熱的だよね。
「じゃあアタイのばん!」
月読命さんが離れるとエヒメちゃんが待ってましたとばかりに抱きついてきた。いや、エヒメちゃんは関係ないでしょ?何で抱きついて来るの!?
「あっ!雨です逃げましょう!」
「えっ!?」
小屋の外を見ると、いつ降り出したのか凄い勢いで雨が降っていて、すこし雨水が小屋に進入してきていた。
「行きますよ。早くしないと小屋が沈みます」
「マジで!?」
僕は急いで小屋から出ようとしたが、エヒメちゃんが抱きついていて重い。
「エヒメちゃん!逃げるから離れて!」
「えー?もうちょっとだけ〜」
仕方なくエヒメちゃんを引きずって逃げ出した。
雨や泥で全身ベタベタになってしまった。後ろを見たら小屋が水たまりの中に沈んでいた。もうちょっと高い場所に作るとかすればいいのに。月読命さんは本当に謎だらけだね。
僕達はそのまま近くにある村の門に逃げ込んだ。