リニューアル会議
床には食べた兎肉のサラミの包み紙が大量に落ちている。
僕は空腹に負けて共食いをしてしまった。兎耳も唾でカピカピになってるし兎人としての尊厳を完全に失ってしままった。こんな屈辱は転生して初めてだ。
「私は、ツルハシで穴を掘って採掘するゲームにするリニューアルを希望します」
落ち込んでいる僕を無視して、月読命さんが熱演をしている。
「いや、発掘とかボス戦で役に立たないよね?目的間違えてない?」
僕は冷静に指摘する。
「え?では、持ち歩けるアイテムの数を9999個から99999個に増やすとかは?あと、見た目の面白い収集アイテムを増やすなんてどうですか?」
月読命さんの自分でゲーム作りたかったって言ってたのってこういう事なのか。頼もしい味方がどんどん頼りなく思えてくる。
「ハイ!アタイは、装備強化の上限+99を+999に上げて神器+999を作れば強いと思います!」
うーん、エヒメちゃんはまだボス戦を意識してくれているからいいんだけど、普通に攻撃力があげるだけじゃ、邪神の改変には勝てないんだよな。
「う〜ん、難しいね。何かゲームを作るのって邪神がやってる事に似てるよね。ダンジョンを作って勇者達をおびき寄せるとか。邪神は何が楽しくてダンジョンなんか作ったんだろうね〜。面倒くさいからアタイはやりたくないなぁ」
邪神はべつに楽しいからダンジョン作ってるわけじゃないと思うよ?勇者達が命を狙ってくるから仕方なくダンジョンみたいに深い洞窟に隠れているだけだと思う。
「私なら、宝石や鉱石がいっぱいでキラキラしているダンジョンを作ってみたいですね」
月読命さんがおかしな話をしはじめた。女神がダンジョンを作ったら邪神になっちゃうからね?
「そっかー面白そうだね〜、じゃあアタイはウサギさんがギッシリ詰まったダンジョンを作る!ウサギさんを倒すとサラミと毛皮を大量に取れるの!」
エヒメちゃんはウサギを大量虐殺するつもりなのか!兎人達に要注意人物として知らせないといけないな。
そんな事を考えていると、2人はこんなダンジョンやあんなダンジョを作ってみたいと盛り上がっていた。ゲームのリニューアル会議だったはずなんだけど、話が脱線しすぎだ。
……あれ?ダンジョンを作る?
ふと、浮かんだキーワードにこれまであった様々な事がピースとなってカチカチッと頭の中で組み上がっていく。
魔物が強すぎるために冒険しないでゲームをしている勇者達が沢山いる。
現実のダンジョンはいつ死ぬか分からなくて楽しむ余裕なんかない。
邪神は元々は女神で人々が魔物を襲うため邪神となり人類の敵となった。
ダンジョンは勇者達から魔物を守るために邪神が仕方なく作った。
ゲームのダンジョンは楽しい、現実のダンジョンは辛い。それなら、みんな現実のダンジョンに行くのをやめてゲームのダンジョンに来ればいいのだ。
そして、現実の魔物を狩るのをやめれば邪神も人類に心をゆるしてるのではないか。そうなれば戦う必要もない。
それにはまず、この世界の人々を魅了するゲームにリニューアルしなくてはならない。そう、ボスを倒すための無意味に強い装備を作るリニューアルでは無く、楽しめるゲームにリニューアルするのだ。そして人が集まって100万人を超えればアマテラスさんも元気になって太陽も元どおり一石二鳥だ。
そして肝心のリニューアルの内容だ。
「月読命さん、エヒメちゃん聞いてくれ」
「ん〜?」
「何でしょうか?」
盛り上がっていた2人を呼びかけこちらを向かせる。
「今回のリニューアルは、誰でもダンジョンを作る事ができる機能を追加したいと思う」
「「えーっ!?」」
僕の意外すぎる発言に2人は驚いた。