怪奇日食
あれ?ここどこだっけ?
目が覚めると見知らぬ天井、というか木の板が目に入った。
「うわっ!」
横を見るとすぐ目の前に美しい黒髪の美女の顔があった。
そうか、月読命さんの小屋で寝たんだった。
スゥスゥと寝息があたるほど近くでドキドキしてしまう。月読命さんは白く綺麗な肌で唇は赤くて触ったら柔らかそう。人間とは思えない神々しい完璧な美しさだ。
そういえば、邪神の事を母と言ってた気がするけどまさかね。
「グーピーッグーピーッ」
反対側を見るとエヒメちゃんが鼻ちょうちんを作って寝ている。何か凄く幸せそうな表情だ。エヒメちゃんも凄い美少女なんだけど、美しいと言うより可愛い感じだし、何か親しみやすい雰囲気なんだよね。何かこの2人少し似ている気がするんだけど、月読命さんって王族とかエヒメちゃんの親戚なのかな?
2人を見比べているとチュンチュンと小鳥の鳴き声が聞こえてきた。
そういえば今何時だ?
小屋のコンセントで充電していたスマホを起動して時間をみた。
あれ?もう朝の9時?
小屋の外に飛び出している足元をみたけど何だか薄暗い。真っ暗じゃないから凄い曇りとかかもしれない。
雨が降ったらこの小屋だと水が浸水してきそうで怖いな。
心配になって外にでて見てみる事にした。絡み付いているエヒメちゃんの手足をどかして2人を踏まないように外に顔をだす。
「なっ!?」
そこには予想外の光景が広がっていた。
皆既日食だ……。
雲1つない晴れた空に、太陽が浮かんでいるが、月と重なって隠れてしまっている。月の周りから光が漏れて完全な暗闇になっていないので、かろうじて周りを見渡せる明るさになっていたのだった。
「ヤマヒコさんおはようございます……あっ!?……これは」
月読命さんが起きてきて、太陽の様子を見て驚いている。
「月読命さんおはようございます。僕も今起きた所です。この太陽ですが、転生前の世界で見た事があります。皆既日食という現象でそのうち元に戻ると思いますので安心してください」
僕は転生前の知識で月読命さんに説明してあげた。
しかし、月読命さんの何かを心配している様子で、さらに暗い表情になった。
「ヤマヒコさん、これはただの日食じゃありません。このままだと何日か下手すると何年、何百何千年も暗いままかも知れません」
「えぇ!?」
月読命さんの言葉に耳を疑った。