エヒメちゃん復活!
僕は、ゲーム説明部屋の壁に映し出された5階の映像を見てモヤッとしていた。
「さっきのアマテラスさんの攻撃、必要なかったよね?」
『ソウデスネ、あのままデモ勝手ニ自爆シテ勝ってマシタネ』
「というか、アマテラスさん6階に行ったけど何してるの?」
『天照様はヤマヒコサンが倒されて戻って来る前にココに来て現実を調べて、激ムズモードとか燃える〜!とか言ってマシタヨ?アノ方はカナリのゲームマニアなノデ、普通にゲームを楽シンデイルダケだと思イマス』
「何だよ、全然反省してないじゃないか、ボスを倒すの手伝ってくれるから良いけど先に行っちゃったし何考えてるんだよ、自己中心的だなまったく……」
僕はモヤッとしながらも楽しそうにゲームをしているアマテラスさんが頭に浮かんで中々憎めなかった。なんだかんだ言って無鉄砲な彼女の事がちょっと好きなのかもしれない。
「ヤマビコ君……」
「え!?」
ゲーム内ではなく現実の自分の後ろから声が聞こえ、ビックリして振り向くと、さっきゲーム内で倒されたはずのエヒメちゃんがいた。
「ヤマビコく〜ん!!」
エヒメちゃんがジャンプして抱きついて来た。涙と鼻水で顔がぐちゃぐちゃで服にべったりと着いちゃうけど気にしないでギュッと抱きしめ返してあげた。
「ボスになった人を倒すと、その人は解放されるようです」
抱きしめあっている横から月読命さんが説明をしてくれた。
「それなら全てのボスを倒せば、みんな助かるわけだね」
「その様ですね。ただ、かなり強くなっている様ですし、今のままで戦い続けられるかどうか……」
「せめてアマテラスさんが一緒に戦ってくれたらいいのにね」
「普段は優しい姉なのですが、ゲームになると何故か常に1人で好き放題暴れる一匹狼になってしまうので、恐らくムリでしょうね。勝手にボスを倒してくれるのを期待するくらいですね」
アマテラスさん普段は優しいのか、意外だなあ。ゲームをすると人が変わるとか車を運転すると人が変わるみたいなやつだよな何か分かる気がする。……あれ?
「そういえば、99階を目指した時はアマテラスさん、ちゃんと2人で戦ってくれたよ?」
「え!?あの姉がそんな事したのですか!?」
「そんな珍しい事なの?」
「姉が誰かとゲームするなんて一度も見た事が無いですよ?きっとヤマヒコさんの事がよっぽど気に入ったのですよ」
いや、多分ガチャガチャをしてくれる金ヅルだと思っただけじゃないかな?
「スゥスゥ……」
腕の中をみるとエヒメちゃんが泣き疲れて眠っていた。
エヒメちゃんの可愛い寝顔を見ていたら頭がフラッとした。
「そういえば、徹夜でゲームしてるんだよね」
「そうですね。私は夜型なので慣れているのですが少し寝て休みましょう。狭いですがどうぞ入ってください」
月読命さんが入っていり小屋へと手招きした。
「え?それはちょっとどうかと思うんだけど」
「徹夜明けは体が冷えます。タダの小屋ですが外よりは暖かいですよ」
確かに、地面で寝ると底冷えしそうだしエヒメちゃんの体調も気になるから甘えさせてもらうかな。
「じゃあおじゃまします」
寝てるエヒメちゃんを引っ張って小屋に入れて3人、川の字になって寝た。月読命さんとエヒメちゃんの体温を感じて暖かい。
僕は長い長い戦いの束の間の安息を楽しむのだった。