エヒメちゃん討伐
ツクヨミ先輩は、エヒメちゃんが空中に固定されて動けないのを利用して、エヒメちゃんの剣の攻撃範囲の外から、今買ったばかりであろうスコップ型の槍で突いていた。
剣より槍の方が遠くから攻撃できるので1ダメージしかでていないが一方的に突いてジワジワとエヒメちゃんの体力を削っていた。
【草薙!】
【穴堀!】
エヒメちゃんが広範囲攻撃の草薙を発動させようとすると、ツクヨミ先輩が地面に潜って隠れる穴堀を使って攻撃を回避した。
流石ツクヨミ先輩、エヒメちゃんの攻撃を全て回避している。このままなら倒せるぞ!
『ヤマヒコサン、5階にワープシマスカ?YES?NO?』
「え?」
『YESデスネ。ワープシマス……』
反射でYESを押してしまった。
画面が暗転して少し待つとツクヨミ先輩から少し離れた位置に立っていた。
【草薙!】
【穴堀!】
「うわっ!!」
僕は999ダメージ受けて倒れた。
また画面が暗転してゲーム説明の部屋に戻ってきた。
『ワープした意味ナカッタデスネ』
カカシちゃんが絵を張り付けた様な変化の無い笑顔のままユサユサと揺れてリアクションをした。
「ワープはツクヨミ先輩が勝った後にお願いします。あと初心者装備ください」
『アァ、忘れてマシタ。ドウゾ』
初心者装備を受け取った。
さっき装備無しで5階にワープさせられたんだよな。カカシちゃんって機械っぽい喋り方なのに色々自由だよな。どういうプログラムで動いてるのだろ?喋り方、カタカナが多いけど基本ツクヨミ先輩の喋り方に近いよね。
カカシちゃんをじっと見てみる。カカシらしく棒を十字にした両腕に地面に突き刺さって固定されている一本足。ピンクのゆるふわな髪に麦わらをかぶっていて何故かセーラー服を着ている。あれか元が空母のコンピュータだから水兵の軍服でセーラー服なのか。
顔はニコニコしてて可愛いけど、表情のバリエーションが無いらしく、1ミリも目や口が動かなくてちょっと怖い。
『ソロソロ、終わりソウデスヨ』
壁に映っている5階の映像を見ると、ギラギラと輝きだしたエヒメちゃんが映っている。他のボスでもよくみかけるHPが少なくなった時のパワーアップ状態だ。この時のボスは予想外の攻撃技を使ってきたりするので油断できない。
『アタイをよくここまで追い詰めたわね。でもこの攻撃に耐えれるかな?』
【自爆!】
エヒメちゃんが自爆のカウントダウンを開始した。
『5!』
『4!』
『3!』
『2!』
【穴堀!】
ツクヨミ先輩がタイミングを合わせて地面に潜て隠れ、ツクヨミ先輩の勝利が確定した。
大火炎!大火炎!大火炎!
急に画面の外から大量の火の玉が飛んできてエヒメちゃんを襲った。
『グアッ!まさか!アタイが負けるなんて……うわあぁああ!!』
ドカンドカンッと小さな爆発を起こしながらエヒメちゃんが消えていく。
「天照姉さん!」
ツクヨミ先輩が後ろを向いて叫ぶと、初心者装備のアマテラスさんが走って逃げる様に階段を降りて行ってしまった。
僕をダマした罪悪感で寝込んでたんじゃないのかよ。