サービス終了
街灯で照らされた夜道を走って、僕は家の隣にある首相官邸に行った。そこに僕の3人兄弟の次男、火須勢理首相が政治を行なっている。
僕は首相官邸入り口の受付嬢に面会を申し込み火須勢理兄貴のいる部屋に案内された。
「こんな夜にどうしたんだ山幸彦、官邸に来るなんて珍しいな、やっと政治をやる気にでもなったか?」
丸々と太って白髪に兎耳の生えた海幸彦兄貴そっくりの火須勢理兄貴が革張りの椅子に座って忙しそうに執務をしながら話しかけきた。やっぱり3兄弟で僕だけ痩せているんだよな。
そんな事より早く伝えないと。
「海幸彦兄貴が、ゲームの中に閉じ込められてしまったんだ!エヒメちゃんや王女様に四天王まで一緒に!」
「はぁ…………」
僕が必死に話したのにもかかわらず、兄貴は溜息をついた。
「山幸彦、お前ゲームのやり過ぎだぞ……。兄貴達は今、黄泉比良坂ダンジョンの邪神討伐に出征中だ。お前も早く体を鍛えて戦える様にするか、勉強してこっちの仕事を手伝え」
どうやら信じてくれてない様だ。
「いや、本当なんだって!邪神が兄貴達を閉じ込めて、このゲームなんだけどさ……あれ?」
ゲームのタイトル画面に何か書かれていてそこから進まない。
《長い間、天の岩戸ダンジョンをプレイして下さりありがとうございました。本日をもちましてサービスを終了させて頂きました。》
えっ!?これはまさか……。
「俺は忙しんだ、用がないなら早く帰って風呂に入って寝ろ。おい守衛!弟を家に連れ帰ってくれ!」
「「「イエッサー!」」」
部屋に筋肉ムキムキな守衛達が入ってきて、僕は彼らに引きづられて官邸から追い出されてしまった。
仕方ないので自分の部屋にスマホでゲームを起動しなおしてみた。
《長い間、天の岩戸ダンジョンをプレイして下さりありがとうございました。本日をもちましてサービスを終了させて頂きました。》
やはりゲームできない状態になっている。エヒメちゃん達はどうなってしまったのだろうか?
あれ?
タイトル画面をよく見ると、【お問い合わせはこちら】と書いてあるボタンがある。そのボタンを押して見るとメッセージアプリが起動して天照ソフトにメッセージを送る画面が開いた。
これってツクヨミ先輩にメッセージが届くんじゃないか?
『ツクヨミ先輩へ、ヤマヒコです。ゲームができません。どうすればいいですか?エヒメちゃん達は無事なんですか?』
すぐに文字を打って送信した。
すると、すぐにメッセージが帰ってきた。
『ツクヨミです。申し訳ありません。こちらの事情でゲームサーバーが使用できない状態になってしまいます。電話番号を教えますのでこちらに瞬間移動で来てください。電話番号は、0…………』
僕は書いてある番号を押した。
「はい、天照ソフト、月読命です」
電話を掛けると鈴が鳴る様な綺麗な女性の声が聞こえ、凄くドキドキした。
「ぼ、僕、ヤマヒコです!あの……瞬間移動しますね」
僕は緊張しながら瞬間移動のボタンを押した。