やり直し
気がついたら僕達は、茶色い土壁の四角い部屋にいた。
狭い部屋にツクヨミ先輩とゲーム説明の麦わら帽子をかぶった可愛い女の子のキャラクター【カカシちゃん】がいる事から、僕達は負けて最初からやり直しになってしまった様だ。
「あーっ!!」
急にツクヨミ先輩が、珍しく感情をあらわにして叫んだ。
「どうしたんですか!?」
「私の大事なコレクションが全て消えてしまいました……」
彼女が何千時間もかけて集めたアイテム達もキャラクターと一緒に消えてしまった様だ。着ていた巫女服も無くなって、Tシャツみたいな麻の服になってしまっている。そういえば兄貴の大金をかけて手に入れた僕の神器も無い。
『ようこそ天の岩戸ダンジョンへ!初心者装備をプレゼントします!』
ゲーム説明キャラクターのカカシちゃんが初心者装備を渡してゲーム説明を始めようとする。
「運営チームの月読命です。ボスデータが改変されています。システム状態を確認してください」
ツクヨミ先輩が前にでてカカシちゃんに話しかけた。すると、カカシちゃんの動きが止まって話し出した。
『OK.BOSS DATA LOAD. …………BOSS DATA二アクセス失敗シマシタ。BOSS DATAニ改変ニヨルロックガカカッテイマス』
「ロック解除できる?」
『改変二使ワレテイル神気ノ強サガ、カカシノ神気ヲ上回ッテイル為、解除デキマセン』
「そう、確かに母の神気なら私と天照姉さんを合わせても勝てないでしょうね」
「姉さん?」
僕は耳を疑った、あのアマテラスがツクヨミ先輩の姉だなんて、確かに似てる様な気はしたのだけど、何かエヒメちゃんにも似ていたんだよな……あれ?
「エヒメちゃん達はどこに行ったんだろ?」
「あっ!!」
ツクヨミ先輩も気づいた様で声をあげた。
まさか本当に死んだとかじゃないよね?
「カカシ、プレイヤーの座標確認、プレイヤー名エヒメ」
『OK.座標5F105.3』
「エヒメさんは5階にいる様です」
「ボス部屋!?もうそんな先に行っているの?まだ負けて5分とかかってないけど?」
「嫌な予感がします。他の人も確認しましょう。カカシ、プレイヤーの座標確認、プレイヤー名…………」
『……………………』
ツクヨミ先輩が次々とプレイヤーの位置を確認していく。その位置は10階15階20階25階……とボス部屋ばかりだった。
「これはマズイ事になったかも知れません。天照姉さんに相談してきますので少々お待ちください」
そう言うとツクヨミ先輩はゲームを終了して、部屋は僕1人になってしまった。
エヒメちゃん達に一体何があったのだろう!?こうしてる間にも何か悪い事が起きているんじゃないか?僕もただ待っているだけじゃダメだ!……そうだ、政府はまだ兄貴達の事を知らないはずだ、僕が伝えに行かなきゃ!
僕もゲームを終了して急いで家をでた。