エヒメちゃん!?
僕は、ゲームのガチャガチャで、《激レア》天叢雲剣×10本を手に入れた。
10個とも激レアとか、一体どれだけ低い確率なのだろうか。こんな所で運を使う位ならエヒメちゃんを助けてくれよ……。
そんな他力本願な事を考えながらダンジョンに入って次々と階を進め、5階のボス毒アメーバを天叢雲剣で倒す。ツルハシだったらあんなに苦労したのに瞬殺だった。天叢雲剣の使い過ぎで耐久が0になって折れてしまったが、まだ後9本ある。ボキボキ折りながらも階を進めて行く。
目指すはツクヨミ先輩と行った21階。あそこまで行けば、どこかにツクヨミ先輩が居るはずだ。早く会って話したい。きっと彼女と一緒にいれば、このやり場のない気持ちも紛らわせれるはず。
20階のボス鰐鮫は、1人で倒すには少し強かったので、天叢雲剣を2本合成して天叢雲剣+2を作って倒した。やはり耐久0で折れてまた+2を作り直したら最後の1本になってしまった。
21階に到着した時、現実の自分の部屋が振動しはじめ、ゴウンゴウンッと音が外から聞こえてきたので、窓を開けて見ると、歪んで七色に光る空に巨大な魔法陣が浮かび戦車や装甲車が吸い込まれていた。
あれは王国軍の瞬間移動魔法で、大量の兵器とそれに搭乗した兵を同時に移動させられる、スマートホンの瞬間移動の規模を大きくした物だ。
あのどれかに兄が乗っているのだろう。
僕は何も考えずボーと見ていると、全ての物が魔法陣に吸い込まれ、カッと空が光り魔法陣が消えていつも通りの空に戻った。
その時、手に持っていたスマホのゲーム画面がチラッと目に入った。
……あれ!?
画面の端に一瞬だけツクヨミ先輩と、居るはずのないエヒメちゃんが通り過ぎて行った……気がした。
そんな、まさか!エヒメちゃんが生きていてゲームをしてる!?
僕は急いで画面を操作してダンジョン内を走り回って画面の端に見えた部屋に行ったが誰も居なかった。
しかし途中で魔物が居なかった事を考えると間違いなく僕の前に誰かが通って倒している。おそらく先に進んでいるのだ。急げば間に合うかもしれない。
僕は急いで進み、22階に降りていった。
22階最初の部屋に入ると、遠くから何かが戦っている様な音が聞こえる。
やっぱり、エヒメちゃん生きているんだ!良かった!
音がする方にどんどん走って行く、もう少し、もう少しで追い付く!
そして、戦っている部屋にたどり着き僕は叫んだ。
「エヒメちゃん!」
1人戦う彼女は燃え盛る部屋の中、炎の様に赤い髪と着物を揺らし、ネズミ(ドリルマウス)にトドメの炎魔法を打ち込んでいた。
彼女はこちらに振り向いて返事をした。
「エヒメって誰?」
それが、僕とアマテラスとの出会いだった。