いきなりラスボス現る
僕とエヒメちゃんは、現実の黄泉比良坂ダンジョン80階に繋がる階段を、足音を立てない様に気を付けて降りている。
僕はLv85になった。心配していたHPも300まで増えた。それでもこの辺の凶悪な魔物に襲われたら即死なのだが、街周辺の魔物相手なら戦えるかもしれないと思うととても嬉しい。
エヒメちゃんが手を振って合図をしたので、80階入り口に向かって閃光発音筒を投げた。
カランッカッカッっと音を立てて転がり落ちていき、爆音と閃光を放った。
「キャーッ!!」
80階から女性の叫び声が聞こえた!
あれ!誰か居たのかな!?
僕が階段を駆け下りると、真っ黒な衣を身にまとった女性がうずくまって居た。
「大丈夫ですかー?」
「ヤマビコ君どいて!」
女性に近寄ろうとしたらエヒメちゃんが僕を突き飛ばした。
グシャッ!!
エヒメちゃんの天叢雲剣が女性を真っ二つに切り裂いた。
「エヒメちゃん何を!……え?」
エヒメちゃんが人を斬ったと思ったら、女性は漆黒の霧の様になって消えた。人間じゃない?
「邪神だよ!」
邪神、それは魔物に不正な力を与える女神。ダンジョンの最深階に居ると言われていて、ありとあらゆるチートスキルを使い、倒したとしても世界中に無限に分身がいるために完全に倒す事はできないと言われている。
「まだ居るかもしれないから気を付けて!」
「えっ!?まさか!?」
「ここはまだ80階、最深階はおそらく99階まであるはず!昔、ダンジョンに邪神が2体いた事があったらしいの。1体は最深階を守って、もう1体が探索者を倒して回る役割で、遭遇した邪神を倒しても最深階の邪神が復活させてしまうから、倒すのが非常に大変だったそうよ。このダンジョンで亡くなったお父様も、もしかしたら複数の邪神に出会って負けてしまったのかもしれない……」
邪神が2体、いや、もしかしたらそれ以上居るかもしれない。天叢雲剣で一撃で倒せたとしても、邪神の力は未知数。先手必勝で確実に確実に倒していかないとな。
「ヤマビコ君!危ない!」
また僕はエヒメちゃんに突き飛ばされ転がる。
「エヒメちゃん、もうちょっと優しく扱ってよ……え?」
エヒメちゃんの脚に剣が突き刺さっていた。