リアルダンジョン事情
3日後、僕とエヒメちゃんは慎重に魔物を倒しながら階を進めていき76階まで来た。
カランカランッ!
……カッ!!!
僕が投げた閃光発音筒が閃光と爆発音を放ち、魔物達を気絶させた。
その隙にエヒメちゃんが部屋に飛び込んで魔物を次々と切り裂いていく。
最後の魔物を倒し終わるとエヒメちゃんが剣をかまえ周囲の警戒をして、僕がスマートホンのステータスチェックアプリで魔物が隠れてないかチェックした。
「大丈夫だよ」
「ふう〜、一瞬だけど疲れるね〜。ヤマビコ君のおかげで少し楽だよぉ、ありがと〜」
僕が弱すぎるから作業系の事しかできなくて、戦いに参加しないで経験値ばっかり貰ってるから申し訳ない。でもエヒメちゃんは、喜んでくれているからいいのかな?
「前は閃光発音筒を投げるのも魔物のステータスチェックも1人で全部やってたから、道具の持ち替えの間が隙だらけで危なかったんだよ。だから十分助かってるから大丈夫だよ〜」
この3日間でエヒメちゃんのダンジョン探索の手順はゲームとかなり違う事が分かった。
部屋に入る前に必ず閃光発音筒で魔物を気絶させるから、向き合って戦う事はあまり無くて一方的に倒している。30秒以内に倒せない場合はその魔物が自分より強いという事なので気絶した魔物を放置して撤退する。
こんなゲームがあったらさぞかしつまらないだろうけど、【死んだら終わり】これが現実だから楽しさなどにこだわってられない。むしろストレスばかり貯まり、これまで何人もの探索者が精神をおかされ引退したそうだ。
僕は少しでも気分を紛らわそうと、スマートホンでゲームをしていて気づいた事がある。
通信回線がダンジョン76階まで届いている。
こんな地中深くに来ているのに、普通にメッセージも電話もゲームアプリもできる。
エヒメちゃんの話によると、探索者達が電線を引っ張って来て、そこから電波をとばしているそうだ。そういえば、ダンジョンの壁にコンセントがあってスマートホンを充電できた。
いまや探索でスマートホンは必須になっているので、ダンジョン探索は電線をひく作業が最も重要で、電線の最深階が人類のダンジョン攻略前線になるそうだ。そういう僕達も電線をひいて来ている。壁のコンセントに延長コードを挿して次の階まで引っ張るのだ。
おかげでゲームアプリ【天の岩戸ダンジョン】も、エヒメちゃんやツクヨミ先輩と楽しくプレイできて、ゲーム内で20階のボス、鰐鮫を倒した。一面海のステージで中々楽しくって、ボスを倒した時は横にいたエヒメちゃんとハイタッチして勝利を祝いあった。
リアルダンジョンもこれくらい楽しく気軽にできると良いんだけどね。