Let's養殖
それは、ゲームでみたアメーバと全く同じ姿形で、金色に輝いていた。
ゴールデンアメーバ、噂には聞いたことがある。Lv99なのに臆病過ぎて攻撃して来ない魔物。倒すと大量の経験値が入るため見つけたら超ラッキーなんだけど、Lv99なだけに逃げ足が超速いという。さすがエヒメちゃん、よく捕まえれるなぁ。
「さぁ!ドンドン叩いて倒しちゃおう!」
エヒメちゃんが、ゴールデンアメーバを地面に押さえつけたので、僕は持ってきたハンマーで思いっきり叩いた。
ビヨ〜ン!っと音がしてハンマーが跳ね返される。僕は諦めずにひらすら叩き続けた。
3時間後、パンッと音を立ててゴールデンアメーバが弾けた。身体中に力がみなぎる感じがして、ハンマーの使いすぎで豆だらけになった手が綺麗に治った。
「Lv55か〜、あと2匹くらいで私に追いつくね」
エヒメちゃんがスマートホンのステータスチェックアプリで僕のLvを確認した。この世界のスマートホン便利すぎる。エヒメちゃんのLvを見たらLv75になっていた。ドンドン強くなるなぁ。
「そろそろお昼ご飯にしようね〜」
「あぁ、母さんにお弁当持たされたから一緒にたべよう」
エヒメちゃんがゴールデンアメーバの黄金の残骸を拾い集めている間に、レジャーシートをひいて弁当箱を並べた。
エヒメちゃんがシートに座ったので弁当箱を開けると、様々な人参料理やクローバーのサラダが入っていた。
「わぁ〜、さすが兎人だねー、お肉がない〜」
エヒメちゃんがモソモソと腰袋からサラミを取り出し、ナイフで小さく切ってサラダに入れた。
「兎肉のサラミだよ〜。これを食べるとヤマビコ君の兎耳を思い出して、寂しさがやわらぐんだ」
僕は口に入れたサラミ入りサラダを吹き出しそうになったが、何とか耐えた。共喰いさせる気ですか!
「今日からはヤマビコ君と一緒だから寂しくないね!」
満面の笑みを向けてくるので、僕は何も言えなかった。昔から見慣れてるけどやっぱり可愛いよな。かなりお節介な性格だけど許せてしまう。
僕はコソッとサラミを避けてサラダを食べた。
「さあ〜!お腹いっぱいになったし、お昼寝しよ〜!」
「えっ!ここで!?危なくない!?」
「部屋の通路は土嚢でふさいであるから大丈夫だよ〜。お腹いっぱいで戦う方が危ないよ〜」
なるほど、だからさっきからずっと魔物が来ないのか。
「さあっ一緒に寝よ〜」
「えっ?」
エヒメちゃんが、スマートホンの瞬間移動で取り寄せた布団をレジャーシートにしいて飛び込んだ。
「1つの布団で寝るの!?」
「2つも布団を持ってるわけないじゃない」
「いや、寝袋持ってるんだけど……」
「いいの!ヤマビコ君は将来の私の王子様なんだから今から練習するの〜」
エヒメちゃんに引きずり込まれ、1つの布団で昼寝をする事になってしまった。エヒメちゃんはいったい何をする気なんだろうか?
「スゥスゥ〜むにゃむにゃ……だいすき……」
普通に昼寝でした。
可愛い寝顔で寝息を立てている。彼女もダンジョンが好きで探索しているわけじゃないんだろうな。きっと1人で何が居るか分からない不気味な洞窟で、恐怖や不安と戦っていたに違いない。これからは少しでも一緒にいて支えになってあげないとな。