現実はゲームじゃない
そうか、現実とゲームは違うんだ。
現実のダンジョンで楽しいとか言って浮かれていたらあっと言う間に死んでしまう。誰も楽しくてダンジョンに行っているわけではなく、生活のためや立場上仕方なく死の危険をおかして探索しているのだ。
だからリアルダンジョンを探索しているエヒメちゃんに楽しさを説いても、ダンジョンを楽しむという事自体が分からないのだ。
僕も、ゲームの世界しか知らなかったからリアルダンジョンを拒否しているだけで、それはただのワガママなのかもしれない。国民の税で生活しておきながら働かないのは問題なのだ。
僕は10歳だけど、転生者ばかりのこの世界での年齢など関係ないから子供でも大人扱いだ。
「ごめんねエヒメちゃん、僕、ちゃんとダンジョンに行くよ」
「え!本当!?嬉しい!じゃあ黄泉比良坂ダンジョンにいるから来てね!」
ウリ坊を倒したエヒメちゃんが飛び跳ねて喜んだ。
「今日はこの辺にしますか、また一緒に遊びましょう」
キリがいいので解散する事になった。ツクヨミ先輩とはフレンド登録した。これでいつでも連絡できるらしい。ツクヨミ先輩、今後もよろしくお願いします。
僕はゲームアプリを終了して、スマートホンを充電器にさして、リアルダンジョンに行く支度をはじめた。
黄泉比良坂ダンジョンか……、また恐ろしい場所を選んだなぁ。
黄泉比良坂ダンジョン、世界最難度のダンジョン。そのあまりの難易度にエヒメちゃんの父である米原王も挑み崩れ去った。
米原王は世界最強と呼ばれるほどの強さを持った勇者だったときく。
エヒメちゃんはきっと、自分の父親が何故死んだのか知るために、ダンジョン探索を続けているのだろう。
それに便乗するみたいになってしまうが、僕も勇者という立場であるがゆえに、国民を守る力を付けなくてはならない。今は平和でもいつ魔物が街を襲うか分からないのだから。HPが低いから引きこもりますなんて言ってられない。
そして次の日の早朝、僕は黄泉比良坂ダンジョンに向かった。