星を宿す少年
夢の内容をそのまま文章化しました。リハビリみたいなものです。
私の夢は、平和な世界にすることだった。
王国の姫として生まれた私は、常に星の間で行われる戦争が嫌いだった。星の海で散っていく数多の艦艇に星の数に匹敵する人々が流れ星となる。
そんなのが嫌だった。もちろん、嫌いだからとやめることはできないのは先刻承知している。
だからこそ、それでもなんとか交渉の末に戦争をやめて平和を築くことができないのかを模索していた。
それが気に入らない者がいたのだろう。暗殺、妨害、足の引っ張り合いは当たり前で。
もはや何もできないほどに追い詰められて、疲れてしまったそんな時だ。
私は彼に出会った。
私が保有する庭園の中に彼はどういうわけか侵入していてねこけていたのだ。
「おい」
「んー」
「おい。ここは私有地だ。何をしている」
「ん? ああ、おはよう」
「おはようではない。ここで何をしているのだ」
「何って……昼寝だよ。ここは綺麗だ。ここには自然が残ってる。だから、ここで眠ってる。良い風が吹くよ。気持ちいし、君もどう?」
そう悪びれるようもなくいうものだから、すっかりと毒気が抜かれてしまった。疲れていたのだろう。普段ならばそんなことはしないのに、彼の隣に座って横になった。
風が吹いていた。気持ちの良い風。感じたことのない風が吹くのと同時にどこからか歌が響いていた。優し気な歌。どこか懐かしい母の子守歌のようなそれに私はたちまち眠くなり、眠ってしまった。
「ん――」
気が付くとすっかりと夜になっていて。いつの間にか彼に膝枕をされていた。
「っ――」
「おっと。よく眠れた?」
「あ、ああ、すまない。迷惑をかけた」
「いいよ。俺もここを勝手に使わせてもらっちゃったからね。俺はホムラっていうんだ。君は?」
「私は、レイナという」
「レイナ! 良い名前だ」
他愛のない話をした。彼は星々を旅してまわる旅人で、とある使命の為に星々をめぐっているのだという。いろいろな星の話を彼はしてくれた。
熱い星の話。冷たい星の話。青い星の話を。
「それで、君の使命というのは?」
「世界平和、ってところかな」
「世界、平和……」
「そのために星の力を借りたくて寄ったんだ。マルスはいい奴だね。平和の為ならばと力を貸してくれたよ」
「そうか。それは何よりだ」
何を言っているのか私にはわからない。けれど、彼が世界平和といった時。ああ、一人ではないのだなと思ったのだ。
ゆえに、私はまだやれるのだと決意した。彼がひとり頑張っている。ならば私が諦めてどうするのだと。
「ありがとう。ホムラ」
「なに? 俺全然お礼言われることなんてしてないけど?」
「いいや、してくれたよ。君という存在がここに来てくれたこと、それだけで、私は救われた。だから、ありがとう」
久しぶりに浮かべた笑顔はちゃんと笑顔だっただろうか。私にはわからない。
「――――うん。こちらこそ。さて、それじゃあ行くよ。まだまだ力を借りないといけないから」
「そうか……また会えるか?」
「君がそう望むのなら。俺を呼んでくれたらどこからでも駆けつけるよ」
「そうか。ありがたいな」
そう言って彼と別れた。彼は旅立ち別の星へ行ったのだろう。その後、私は精力的に動き、戦争を止めるべく議会を動かしていった。
その裏で、戦争を主導する議員の汚職の証拠をつかむべく彼の邸宅などに侵入した。ミスをして見つかり追われたが、幼少の頃から世話になっている大司教に匿ってもらった。
それによって追手は撒いたが、それは間違いだった。
「まさか君の方から来てくれるとはね」
「――」
私は殴りつけられ、車に押し込められた。ずっと彼は裏切っていたのだ。私のパトロンとして動きながらその動きを全て相手に流していた。
ずっとずっと協力するふりをして裏切っていたのだ。いいや、きっと最初から裏切っていたのではなくずっと掌の上で踊る私を見て嘲笑ってきたのだ。
地面が崩れるようだった。大司教がかけてくれた言葉の全てが嘘であったなどと信じたくはなく、それでもその事実は動かず。
挙句、自分はいくらでも代えの利く姫の複製品なのだと言われて。
「あ、っ――」
たまらず涙を流した。信じていたのに。どうしてと。自分の全てが、もはや意味のないものでしかないと思えず。
「ああ、いい顔だ。それが視たかったのだよ。さて、用済みのお姫様には退場願おうか。なに、君の代わりなどいくらでも作るさ」
そうして私は終わるのだろうと思った時。
「レイナ――!!」
彼が空から降ってきた。
走る車に巨大な拳をたたきつけて。放り出された私を空中で抱え上げる。
白き衣を守った星の使者。
「なん、で……」
「だって、呼んだでしょ。助けてって。だから、来た。君がなんであろうと関係ない。俺が君を助けたかったから。それにマルスがキミを助けたいってうるさいんだよ」
焔に纏う巨大な焔の拳が振るわれる。
「照れるなって――さあ、行こうか。君の願いを叶えに行こう」
そして、彼はそう言って笑ったのだ――。
とても素晴らしい夢だったので文章化しました。