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STORY20-3 『一本勝負?』

学園祭当日。

深夜は一緒に見回りをすることになっている空手部の三年と一緒に昇降口の近くで立っていた。

空手部の三年は深夜と同じクラスで名前は大崎という。

深夜はあくびをしながら呟いた。


「暇…」


大崎は深夜の呟きに苦笑いを浮かべた。


「俺らが忙しいほうがマズイだろ」

「そりゃそうだけど暇すぎだろ。これだったら見回りとかなくてよかったんじゃねぇの」

「そういうことは俺じゃなくて倉田に言えよ」


そんな話をしていると深夜の足に何かがぶつかってきた。

深夜が下を向くと秀太がひっついていた。

深夜はしゃがみこんで秀太と目線を合わせた。


「お、秀太。楽しんでるか?」

「うん!」


深夜と秀太が話していると大崎も二人に近づいて深夜に話しかけた。


「この子山下の弟だろ?」

「よく知ってるな」

「今年の初めに教室に来たからさすがに覚えてるって。あの日は衝撃的な事実があったし」

「衝撃的な事実?」

「お前が山下と付き合ってるってことだよ」

「っていうか皆うすうす感づいてただろ?」

「まぁな。ところでこいつ一人で来たのか?」

「そんなわけないだろ。…秀太」


深夜は立ち上がって周りを見渡したが恭子の姿がないのでどこか違うところを向いている秀太に呼びかけた。

秀太は深夜の顔を見上げた。


「なに?」

「お前まさかとは思うけど一人で来たのか?」

「ううん。ママと」

「じゃあ、ママは?」

「え?」


秀太は周りを見渡した。

が、恭子の姿が見えないので深夜を見上げた。


「いないね」

「いないねってお前…」

「山上、どうするんだ?」

「どうするって言われてもなぁ。俺おばさんの携帯は知らないし」

「職員室に行ってアナウンス入れてもらえば?」

「そうするか。じゃあ、悪いけどここ頼む」

「おぉ」


深夜は大崎に声をかけてから秀太の手を握って職員室に向かって歩き出した。

途中、中庭が見える廊下を歩いていると中庭に造られたステージが盛り上がっている。

深夜は帰りに少し顔を覗いてみようかなと思い職員室へ歩いていると中庭から誰かに呼び止められた。

そちらを向くと司会の生徒が窓から顔を覗かせていた。

ちなみにこの生徒は金田という名前で深夜と同じクラスなので仲が良い。


「呼んだ?」

「お前今から中庭に来い」

「は?俺今仕事してるんだけど」

「大丈夫。倉田には了承済みだから。むしろ倉田がお前の姿見つけて参加させるように言ったから」

「マジかよ…」

「ちなみに仕事って?」

「子供を職員室に連れて行くところ」

「うわ…誘拐?」

「ちげぇよ。迷子だって」

「だったら中庭のマイク使えばいいだろ」

「あ、そうだな」

「じゃあ、俺が紹介のアナウンスしたらあっちから中庭に出てきて」

「はいはい」


深夜は金田が指差した出入り口に秀太を連れて向かった。

中庭の様子はここからでも良く分かる。

中庭では金田がステージに上っていてマイクを手にしている。


『ようやく最後の選手が決まりました。それではまいりましょう。校内一の悪といわれたのは昔のこと!今では街一番の悪!本日はどんな悪事をするのか、山上~深夜~~』


深夜はアナウンスを聞いてこのまま逃げ出そうとも思ったが後々面倒な事になりそうだったので仕方なく中庭に出た。

中庭では深夜が歩けるように中央に道ができていた。

そこを歩いているとやはり深夜と隣で歩いている秀太に視線が集まった。

ステージに上がるとほかにも数人の生徒が立っていた。

深夜は近くに立っている生徒に話しかけた。


「あのさ、状況がつかめないんだけど選手って何?」

「アームレスリングの選手」

「は?」

「一人足りなかったんだってさ」

「少なくていいじゃんか…」

「まぁまぁ、それよりもその子は?」

「あ、そうだった。金田!」


深夜は金田に話しかけた。

金田はマイクをきって深夜に話しかけた。


「なんだ?」

「マイク貸してくれ」

「アナウンスなら俺がしてやるよ。その子の名前は分かってるのか?」

「山下秀太。柚子の弟だよ」

「そういや今年の初めに教室に連れて来てたな。よっしゃ、まかせろ」


金田がアナウンスをしている間深夜は秀太に話しかけた。


「今ママ呼んでもらってるからここにいような」

「うん!」


アナウンスをし終えた金田が生徒会役員から紙を受け取った。


『さぁ!早速試合といきましょう!一試合目は、街一番の悪!山上と柔道部主将・赤田です!』

「いきなりかよ…」


呼ばれた深夜は秀太を近くの生徒に預けてステージの中央に歩み寄った。

相手の生徒も出てきた。柔道部の主将、そして深夜よりも腕が太い。

何も言わずに深夜と赤田は中央に置かれている机に肘を置いて手を合わせた。

深夜はその状態で金田に聞いた。


「一本勝負?」

『そ。一本勝負。それではまいりましょう!レディー…ゴー!』


金田の合図と共に深夜は一気に腕を倒した。

一瞬間があったが金田が叫んだ。


『あ、圧勝~!勝者、山上!』


金田のアナウンスがあったあと中庭から歓声が上がった。

赤田と握手を交わし深夜は秀太のところに戻った。


「悪いな。見てもらって」

「それはいいけどお前腕相撲強いな」

「んなことねぇよ。あんなのと力比べして勝てるわけないだろ」

「は?でもお前勝ったじゃん」

「向こうが力入れる前に倒したんだよ。じゃないと俺の力だったら負ける」

「へぇ~、ちゃんと考えてるんだな」

「まぁな。あ、わりぃ」


深夜はそう言うと秀太を抱きかかえてステージの横に立っていた恭子の元へ歩み寄った。

秀太を恭子に渡すと恭子は申し訳なさそうに謝ってきた。


「ごめんね」

「いえ、大丈夫ですよ。すいませんけど俺まだこれに参加しないといけないんで」

「うん。頑張ってね」

「ありがとうございます」


深夜は恭子に声を掛けられてステージの中央に戻った。

結局深夜は準決勝まで進んだが負けてしまった。

決勝の結果まで見て深夜は自分の持ち場に戻った。

持ち場に戻ると大崎が暇そうに携帯をいじっていた。

深夜の姿を見つけた大崎は携帯を制服に締まって深夜に話しかけた。


「えらい遅かったな」

「アームレスリングに出てたから」

「せっけぇ…」

「俺に言うなよ。職員室に歩いてたら金田に強制的に参加させられたんだよ。最初は断ったけど倉田が了承してるって言われたら断れなくて仕方なく参加してきた」

「で、結果は?」

「準決勝敗退。ま、俺の力を考えたらこんなもんだろ」


深夜と大崎が話してると同じように見回りをすることになっている二人組みが近づいてきた。


「うっす。何かあった?」

「いんや、別に。ところでどうした?」

「倉田からの伝言。もう同じところに立たなくていいって」

「どういうこと?」

「先生と相談してもう自由にしていいってさ。ただ、何かあったらすぐに集合かかるらしいけど。それとこの腕章はつけままにしとけって」

「ふぅ~ん。分かった。わざわざサンキュ」


二人組みは伝言を伝えるとまた去っていった。

先ほど言っていた腕章とは見回りをしていることが分かるようにつけているものだ。

深夜は大崎のほうに顔を向けた。


「どうする?」

「とりあえず俺はクラスのほうに顔を出してくる」

「じゃあ、俺もそうするか」


深夜と大崎は二人連れ添って自分達のクラスが模擬店を出している教室に向かった。

深夜は大崎と話しながら歩いていたがふと気になるものがあって立ち止まった。

大崎も立ち止まって深夜に話しかける。


「山上?どうした?」

「なぁ、大崎。あれって迷子に見える?」


深夜はある方向を指差した。

深夜が指差した方向を大崎が見ると確かに迷子と思う子供の姿があった。


「迷子…ぽいなぁ」

「とりあえず行こう」


深夜が子供のほうに向かったので大崎も後を追った。

深夜は子供の視線に合わせてしゃがんだ。


「一人でどうした?お母さんは?」

「しらない。きがついたらいなかった」

「う~ん…。じゃあ、お兄ちゃんと一緒に探すか?」

「そうする」


子供がそういうと深夜は子供を肩車した。

子供は突然のことで驚いている。


「な、なにすんだ!」

「これならお母さんの顔が見えるだろ?お母さんもお前の顔が分かる。お母さんと二人で来たのか?」

「ううん、あとせいじ」

「せいじ?弟か?」

「陸!」


深夜が問いかけて子供が答える前に一人の女性が深夜に駆けてくる。

子供が女性を見て嬉しそうに声を出す。


「あ、ママ!」


深夜は子供を肩から降ろして女性に渡した。

女性は深夜と大崎に頭を下げた。


「すみません!うちの子供が」

「いえ、すぐに見つかってよかったですよ」

「智子。陸は見つかったか?」

「あ、せいじ。おまえどこいってたんだよ」

「「え?」」


陸と呼ばれた子供が聖慈と呼ばれた青年に文句を言っている。

だが聖慈はそれを無視してつい声を出してしまった深夜と大崎に声をかけた。


「すいません。助かりました。ところでどうかしました?」

「あ、いえ。この子が『せいじ』と呼んでいたのでてっきり弟か友達かと思っていたので…。なぁ?」

「あぁ。まさか父親とは」

「あぁ、俺はこいつの親父じゃないんです。俺はまだ独身。こいつは恩師の子供です。とりあえず助かりました」

「ほら、陸あんたもお礼を言いなさい」

「ありがとう」


陸が頭を下げたので深夜は頭を撫でた。


「これからは気をつけろよ」

「うん」


深夜と大崎は聖慈達に頭を下げてその場を去ろうとした。

が、深夜はポケットの中にある物を思い出して取り出し陸に差し出した。


「じゃあ、これはお前にやろう。お母さんと離れたのに泣かなかったご褒美だ」

「あめだまだ!」


陸は深夜の手から奪うように飴玉を取った。

智子は深夜に頭を下げた。


「すみません。飴玉まで」

「いえ、あれは参加賞でもらったものでタダなんで気にしなくていいですよ。それじゃあ俺らは行きます」

「ええ。何から何までありがとう」


深夜と大崎が去った後智子は聖慈に話しかけた。


「珍しいわね。陸が懐くなんて」

「あぁ。…じゃあ、俺らも雫のところに行くか?」

「ええ」


そういって聖慈たちも歩き出した。

聖慈達と別れた深夜と大崎が歩いていると前から中村が走ってきているのが見えた。

中村は深夜達の姿を見るとスピードを抑えて二人の前に止まった。

肩で息をしながら中村は二人に話しかけた。


「はぁ…はぁ…。や、山上君。きょ、教室で」

「教室?中村、息を整えてからでいいから」

「きょ、教室で外部の人が…。まだ何も起きていないけど濱田君が山上君を呼んできてくれって」


深夜はそれを聞くと大崎に中村を任せて模擬店が行われている教室に走って向かった。

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