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STORY20-2 『「何考えてんの?』

ある日。

柚子葉が帰り支度をしていると深夜がカバンを持って柚子葉のほうにやってきた。


「柚子。悪いけど俺今から会議あるから」

「会議って見回りの?」

「あぁ。だから、悪いけど今日先に帰っててくれ」

「うん。分かった」

「これ家の鍵。勝手に入ってていいから」

「じゃあ、夕飯作ろうか?」

「あ~、そうだな。悪いけど頼む」


二人が話してると教室のドアのほうから同じクラスで見回りになっている生徒が深夜を呼んだ。


「山上~、行くぞ~」

「おぉ~」


深夜はドアのほうを向いて返事をし、また柚子葉のほうに向きなおした。


「じゃあ、また後で」

「うん」


深夜は柚子葉に声をかけて教室のドアで待っている生徒のほうに向かった。

待たせていた生徒と一緒に生徒会室に向かっていると途中にある職員室から松田が出てきた。

そして、歩いていた深夜達に声をかけた。


「大竹先生見てないか?」

「いや、見てないけどどうかしたんすか?」

「会議の時間になっても来ないんだよ。校内放送しても」

「携帯は?」

「机の上」

「じゃあ、俺呼んでくるわ」


深夜がそういうと松田は『頼むな』といってまた職員室に戻っていった。

深夜は一緒に歩いていた生徒に声をかけた。


「悪い。先行っててくれ」

「あぁ。倉田には俺から言っておく」

「頼む」


深夜はそういって生徒と別れ大竹を探した。

一つ一つ教室を見て回るが大竹の姿はなかった。

今度は特別棟に移動して大竹の姿を探していると特別教室から話し声が聞こえた。

そこを覗くと大竹と一人の女生徒の姿があった。

深夜はドアに手をかけて大竹に声をかけた。


「こんなところにいたよ」

「ん?山上、どうかしたのか?」

「どうかしたのかって先生今日会議じゃないの?松田怒ってたよ」

「げ!?すっかり忘れてた」

「まぁ、そういうことで。じゃあ」


深夜が教室から出ようとしたら大竹に手を掴まれて止められた。


「まぁ待て」

「なんすか?」

「こいつの勉強見ててくれないか?」

「はぁ?俺も今から見回りの会議なんだけど」

「倉田には俺から言っておくから。C組のクラス平均が上がったのはお前が教えてるからなんだろ?」

「そりゃ、教えてるけど。それで成績が上がったわけでもないと思う」


大竹が言うように深夜のクラスはテストのクラス平均が上がってきている。

教室で柚子葉や翔に勉強を教えていると他の生徒、達志や真希なども教えてくれと深夜に聞いてきた。

それがいつのまにかクラスメイト全員から勉強を教えてくれと頼まれるようになっている。

そのおかげかどうかは分からないがクラス平均が上がったというわけだ。


「会議が終わったらすぐに戻ってくるから。じゃあな。伊集院、山上に教えてもらってて。こいついい奴だから」

「あ、ちょっと…」


大竹は深夜が返事をする前に教室を出て行った。

深夜はため息をついて大竹に『伊集院』と呼ばれた生徒のほうに向かった。


「えっと…悪いけど名前何?」

「伊集院雫です…」

「何の教科してるわけ?」

「えっと…数学」


深夜がプリントの除くと確かに数学のプリントだ。

だが、数箇所間違いを発見した深夜はそこを指摘した。


「ふ~ん、こことここ違う。後、ここも」

「え!?」


雫は深夜が指摘したところを見直した。

だが、自分では間違ってないと思っていたのでいきなり間違ってると言われてもどこがどう間違っているのか見当もつかない。

深夜もそれが分かったのか自分のカバンからペンを取り出してプリントに書き出した。


「今はこの公式を使って…こうしてるだろ?じゃなくて、こっちを使うと正解できる。他の問題も全部使う公式が間違ってるから答えが違うんだ」

「う、うん。やり直してみるね」


雫がプリントを書き出したので深夜はとりあえず自分のカバンから小説を取り出して読み始めた。

小説を読んでいた深夜がふと顔を上げると雫がペンを止めてなにやら考えていた。

深夜は考え込んでる雫に声をかけた。


「何考えてんの?」

「え!?べ、別に?」

「プリントとは別のこと考えてただろ?」

「あ、あの…、その…」

「別に怒ったりしないから」

「…今日の晩御飯のメニューを」

「え?お前が飯作ってんの?」


深夜が雫に聞くと雫は恥ずかしそうに頷いた。

深夜も思い当たる節があるのか共感するように頷いた。


「あぁ~、でも分かる」

「え?」

「結構献立のメニューを考えるのってきついよなぁ。俺も作ってるからすっげぇ分かる」

「え!?そうなの?」

「あぁ。まぁ、最近はもう一人作ってくれるから楽だけど。…親は一緒に住んでないのか?」

「うん。今日本にはいないの。それで、今はお兄ちゃんのところで一緒に住んでるの」

「へぇ~、でも作った料理を食べてくれる人がいるってなんか嬉しくない?」

「嬉しい。本当においしそうに食べてくれるから作り甲斐があって」

「だよなぁ。俺も一人で食うよりは誰かと食べたほうがいいし」


二人が料理話に華を咲かせていると大竹が戻ってきた。

大竹は二人が和やかに話してるのを見て声をかけた。


「えらい仲良くなったな」

「料理の話で盛り上がっちゃって」

「へぇ~」


大竹は雫がやっていたプリントに目を通した。

まだ途中だったが時間を見るともう遅い。

これ以上遅く帰すと雫の兄に怒られそうだと思った大竹は雫に声をかけた。


「途中までだけど伊集院もう帰っていいぞ」

「はい」


雫は片付けて教室を出て行った。

その後姿を見送った後、大竹は深夜に声をかけた。


「山上も悪かったな」

「別にいいよ。それよりも松田に怒られなかった?」

「…小言食らった。しっかりしてくださいって」

「うわ、なっさけない大人だねぇ」

「うるさいぞ。あ、山上。見回りの会議ももう終わってるはずだから帰っていいぞ」

「マジで?んじゃ、帰るとするか」


深夜もカバンを持って教室を出た。

下駄箱で靴を履き替えてると誰かが下駄箱に近づいてくる足音が聞こえた。

そちらに目を向けると雫だった。


「あれ?山上君のほうが早かったみたいだね」

「あぁ。お前電車?」

「ううん、バス通学」


深夜は下駄箱で雫が履き替えるのを待った。

雫が深夜の隣に立ってから歩き出した。

校門を出ると雫が深夜に話しかけた。


「山上君は?」

「俺は徒歩」

「じゃあ、今日はありがとうね」

「いや、それはいいけど遅いしバス停まで送っていこうか?」

「ううん、大丈夫。それじゃあね」


雫は深夜に手を振ってバス停のほうに歩き出した。

深夜も自分の家に向かって歩き出した。

深夜が自分の家に入るとすでに夕飯の支度が終わっていた。


「ただいま」

「あ、おかえり。遅かったね」

「あ~、ちょっとな。先着替えてくるわ」

「うん。すぐにご飯にする?」

「そうだな。姉貴達もいつになるか分からんし」


深夜は着替え終えてから三人で夕飯をとった。

夕飯後、いつも通りリビングでTVを見ていたら勇一が帰宅した。

勇一も食事を取り終えてリビングにやってきた。

深夜が勇一の分のコーヒーを入れて前に置くと勇一が思い出したように深夜に声をかけた。


「深夜。そういえばお前今日見回りの会議さぼったらしいな」

「は?」


いきなりの言葉に深夜は驚いた。

柚子葉も隣でビックリした表情で深夜を見ている。


「え、大竹に聞いてないの?」

「何を?」

「今日会議に行く前に大竹に頼まれて勉強見てたんだよ。大竹が倉田には言っておくって言ってたから安心してたんだけど…」

「勉強って?」


柚子葉が深夜に聞くと深夜は柚子葉のほうに顔を向けて答えた。


「数学。大竹を呼びに行った教室で伊集院がプリントしてたんだよ。で、会議に大竹が行くから代わりにみててくれって頼まれたってわけ」

「伊集院って、私達と同じ学年の?」

「そう。途中で料理の話になったけど」

「料理の話?」

「あいつも家で料理してるらしいんだ。それでいろいろ共感できる部分があって意気投合したってわけ」

「へぇ~、私まだ話したことないんだよ」

「多分柚子と伊集院も話合うんじゃないか?今度機会があったら話してみろよ」

「うん」


忍も帰宅してリビングで話をしていたが、秀太が眠ってしまったので柚子葉は家に帰った。

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