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STORY19-END 『ここで、柚子と』

マンションを出た深夜と柚子葉は祭りがおこわなれる近所の広場へ歩き始めた。

隣に並んで歩いていたが二人の間には会話はない。

二人と同じように祭りに行くのか浴衣を着ている人の姿もたくさんいる。

柚子葉が周りを見ながら歩いているとスッと深夜が柚子葉の手を握った。

いきなりのことだったので柚子葉は深夜のほうを向いた。

深夜は柚子葉のほうは見ずにずっと前のほうを向いている

柚子葉も笑みを浮かべてギュッと深夜の手を握り返した。

二人が手を握ったまま広場に着くとすでに人が大勢いた。


「うわ…。こんなに人いるのかよ。とりあえず見て周るか」

「うん」


深夜と柚子葉は手をつないだまま会場を歩き出した。

会場には出店として金魚すくいや射的などが出ていた。

その出店の周りには子供達が集まって皆で楽しく盛り上がっていた。

深夜と柚子葉は子供達を見て笑みを浮かべた。


「柚子は金魚すくい苦手?」

「う〜ん、いっつも一匹は絶対に取ってたよ。深夜は?」

「どっちかっていうと苦手だな。一匹取るのがやっと」


深夜と柚子葉は祭りの思い出話をしながら歩いていた。

いろんなものを見ながら歩いていた深夜はいきなり声をかけられた。


「山上!」

「は?」


深夜は声が聞こえたほうを向いた。

柚子葉も一緒になって声が聞こえたほうを向くと子供を連れた男性がこちらに歩いてくる。

知らない人だったので柚子葉は深夜に顔を向けた。

深夜の顔から少し嬉しさが感じ取れた柚子葉は深夜に話しかけた。


「深夜知り合い?」

「あぁ。中学校のときの先生」


男性は深夜に近づくと笑顔で話しかけた。


「久しぶりだな」

「卒業以来だから二年とちょっとですね。先生って家この辺だったっけ?」

「妻の実家がこの近くなんだよ。そういうお前こそ家はこっちじゃないだろ。なのになんでこんな小さい地元の祭りに来てるんだ?」

「高一のときに引っ越した」

「へぇ〜、でこの子は?」


男性は柚子葉に顔を向けて深夜に聞いた。


「俺の彼女です」

「そっか」

「柚子。この人はさっき話したけど俺が通ってた中学のときの担任の田口先生」

「はじめまして」


柚子葉は田口に頭を下げた。

田口は顔に笑みを浮かべて柚子葉に答えた。


「はじめまして。田口です」


田口が挨拶をすると向こうから声が聞こえた。

田口がそちらを向いて声の主を確認すると深夜達に向きなおした。


「じゃあ、俺戻るから。また中学校に遊びに来いよ。前田と一緒に」

「あぁ。気が向いたら行きます。田口先生がいる間に」


田口は深夜の言葉を聞いて笑みを浮かべ歩き出した。

深夜はその後姿を見送っていたが田口に伝えたいことを思い出して引き止めた。


「あ、先生!」


田口は深夜の言葉に足を止めて深夜の顔を見た。


「どうした?」

「俺、衛と仲直りしました」


田口は深夜の言葉に目を見開いた。

中学のときに深夜と衛のことを一番心配してくれた教師は田口だった。

だから深夜は田口に報告をしたかった。

田口は最初は驚いていたがすぐに笑みを浮かべた。


「そうか…。良かったな」

「はい」


田口はまた歩き出した。

田口の姿を見送った二人はまた祭りの中を歩き出した。

歩き出してすぐに柚子葉は深夜に話しかけた。


「ねぇ、深夜」

「ん?どうした?」

「深夜が前言ってた先生ってあの人」

「俺そんなこと言ったっけ?」

「ほら、私が初めて保育園で深夜と会った日だよ。私がS大に行きたいって行ったら深夜も同じ大学を目指してるって話ししたじゃない」

「あぁ〜、確かに言った覚えがある。そうだよ。俺が言った先生は田口先生。俺の尊敬している先生」

「そっか。じゃあ、深夜もあの先生みたいになりたいの?」

「まぁな」


二人は話しながら花火がよく見える場所を探した。

が、どこも人が多くてゆっくり見れるような場所はなかった。


「どうする?もうすぐで花火始まるけどどこで見る?」

「これだけ人が多いと仕方無いよね」


二人が話してるとまた田口が近づいてきた。

今度は田口のほかにも奥さんと思われる人と田口の腕の中にはすでに眠っている子供の姿が見える。

深夜も近づいてくる田口に気づいて手を上げた。

田口も手を上げて二人に近づくと話しかけた。


「お前らなにやってんだ?」

「いや、花火見ようと思うんだけどこれだけ人が多いとなぁ」

「だったらあそこはどうだ?」


田口はある場所を指差した。

深夜と柚子葉もその指差した方向を見る。

田口が指差した方向には団地があった。

深夜は眉をひそめて田口に話しかけた。


「あそこ?」

「あぁ。あの辺に公園がある。少し花火会場から離れるけど十分だぞ。ベンチもあるから座って見れるし」

「でも、先生は?」

「俺らはもう帰る。子供も眠ってるし」


田口はそういって自分の腕の中で眠る子供に目を向けた。

深夜と柚子葉も一緒になって子供に目を向けると子供はスヤスヤと心地いい寝息をたてて眠っている。


「じゃあ、俺らはそこに行こうか」

「うん。そうだね」

「それじゃあ先生また」

「あぁ。翔達にもよろしく言っといてくれ」


深夜と柚子葉は田口達に声をかけ公園に向け歩き出した。

公園に近づくに連れて人気は減ってきた。

田口の言うとおりなかなかいいスポットのようだ。

二人が目的の公園に着くと公園の中には人が一人もいなかった。


「誰もいねぇ…」

「ちょっと怖いね」

「まぁ、すぐ花火が始まるだろ。どうせ花火が終わるとすぐに帰るんだし」


深夜は携帯で時間を確認しながら柚子葉に話した。

とりあえず公園にあるベンチに座ることにした。

二人は座る前に下を見下ろした。公園の下には先ほどまでいた会場が確認できた。


「へぇ〜、確かにここからなら花火がいい感じで見れそうだな」

「そうだね」


深夜はベンチに座ったが柚子葉はなかなか座ろうとしない。


「柚子?座れば?」

「だって汚れそうじゃない…」


深夜は柚子葉の言葉を聞いてため息をついた。

そして、持っていた袋からタオルを取り出して自分の隣にタオルを敷いた。

タオルを敷いた後、深夜は柚子葉の手を引き寄せタオルの上に強制的に座らせた。


「これでいいだろ?」

「ごめん」

「あのなぁ、前から思ってたけど俺はごめんよりもありがとうって聞きたいんだけど」

「え?」

「柚子ってよく『ごめん』って言うだろ?俺はそんな言葉を聞きたくてやってるわけじゃないんだけど」

「そっか、ご…じゃなくてありがとう」


深夜が柚子葉の言葉を聞いて笑みを浮かべたときに空に花火が打ち上げられた。

花火が何度も打ち上げられる。そのとき深夜が何かを呟いた。

聞き取れなかった柚子葉は深夜に声をかけた。


「深夜、今なんていったの?」

「ん?来年も見たいなぁと思ってさ。ここで、柚子と。来年だけじゃなくて再来年もその後も、な」


柚子葉は深夜の言葉を聞いて何度も頷いた。

深夜はベンチの上に置かれている柚子葉の手を自分の手で包んだ。

二人は空に花が咲いてる下で口付けを交わした。

あとがきはYAHOO!blogで書いております

興味があればお越しください

URL↓↓

http://blogs.yahoo.co.jp/in_this_sky

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