STORY19-1 『…祭り行くか?』
すでに深夜達の学校は夏休みに入っている。
深夜と柚子葉は深夜の家で受験勉強をしていた。
勉強をしていた深夜はふとカレンダーを見た。
「あ〜あ、今年はどこも行かなかったな」
「そうだね。海にも行かなかったし勉強ばっかだったね」
「まったくだ。来年こそはどっか行こうぜ」
「うん」
また勉強に戻った二人は街から何やら音がするのに気づいた。
深夜は立ち上がってベランダに出た。
「何の音だ?」
柚子葉も立ち上がって深夜の隣に立った。
「あ!ねぇ、今日って祭りじゃなかったっけ?」
「祭り?あぁ、そういやこの時期だったかも。…祭り行くか?」
「え?」
「せっかくだし行こうぜ。たまには息抜きも必要だって」
「うん!」
「柚子は浴衣持ってる?」
「持ってないけど何で?」
「祭りといえば浴衣だろ。じゃあ、買いに行くか」
「え?」
「持ってないなら買いに行こうぜ。真さんの店に行けば置いてあるはずだ。今から電話してみるか」
深夜はそういうと机の上に置いてある携帯を取った。
柚子葉は電話をかけようとしている深夜に駆け寄った。
「ちょっとまって!私浴衣買うってまだ…」
「俺が見たいの。…あ、もしもし。深夜ですけど」
『お〜、深夜か。どうした?』
「真さんの店って浴衣置いてましたよね?」
『あぁ。置いてあるぞ』
「柚子の浴衣を買いに今から行きます」
『柚子?あぁ、柚子葉ちゃんか。…俺が持っていってやるよ』
「は?」
『俺今から休暇だったんだよ。というわけで今から暇って言うわけだ。だから、持っていってやるよ』
「ホントに?助かる」
『じゃあ、今から持って行くけど深夜はあるのか?』
「勇兄のお古でいいよ」
『それじゃ駄目だ。柚子葉ちゃんのと合うような奴を持っていくわ。じゃあ…1時間後ぐらいにまた電話する』
「あ、じゃあお願い」
『あいよ』
深夜は携帯を切ると柚子葉のほうに向き直った。
「今から来るってさ」
「ホントに浴衣買うの?」
「当然。祭りといえば浴衣だろ」
「でも…」
「金なら俺が出す。プレゼントらしいプレゼントあまり買ってないしたまにはいいだろ」
「…うん」
「あまり納得はしてないみたいだけど確かに今頷いたな。真さんからまた電話来るからそれまでゆっくりしようぜ」
深夜はそういって勉強道具を片付けはじめた。
柚子葉も深夜の隣で勉強道具を片付けはじめた。
二人が片付け終えてゆっくりしていると勇一が帰宅した。
「今日は勉強終わりか?」
「あぁ。祭りに行こうかと思って」
「祭り?そういえば今日は祭りだったな」
「さっき真さんに電話したら浴衣持ってきてくれるって言ってくれたから」
「深夜は浴衣持ってるだろ?」
「最初は柚子が持ってなかったから電話したんだ。だったら柚子のと合うような浴衣を持ってきてくれるって」
「相変わらず商売上手だな」
勇一は笑いながらリビングに座った。
柚子葉のほうを見ると顔が曇っている気がした勇一は柚子葉に話しかけた。
「山下?どうした?」
「なんか悪い気がして」
「は?深夜、お前まさか強引に買ったんじゃないだろうな?」
「いや、まぁ。でもさ、祭りって行ったら浴衣だろ」
「だからってお前なぁ…。お前が一番山下の性格分かってるだろ?遠慮するに決まってるだろうが」
勇一は少し深夜を責めるような口調で話しかけた。
その後、ため息をついて柚子葉に顔を向けた。
「山下。お前もたまには彼氏に甘えたらどうだ?」
「でも…」
「どうせ今回は深夜のわがままなんだろ?今の話を聞く限りだと山下の浴衣姿が見たいっていう」
「グッ・・・」
勇一に図星をつかれた深夜は詰まった。
それを横目で見た勇一は苦笑いを浮かべた。
「やっぱりか…」
勇一がため息をついていると深夜の携帯が鳴り出した。
深夜は二人の顔を一度見た後で電話に出た。
「もしもし」
『お〜、深夜か?今下に着いた。お前の部屋って何号室だっけ?』
「905号室です」
『おっしゃ』
真がそういうのと同時にインターホンが鳴った。
近くに座っていた勇一が出た。
「はい」
『あれ?勇一さん?』
「真か。とりあえず鍵開けるから」
『はい』
勇一はマンションの玄関の鍵を開けた。
そして、柚子葉に向きなおした。
「残念ながら真が来たみたいだな。もう諦めろ」
「…はい」
柚子葉も渋々頷いた。
深夜は居心地が悪いようで隅っこのほうで座っている。
勇一は深夜には聞こえないように柚子葉に近寄り深夜を指差しながら話しかけた。
「ま、あいつの気持ちも分かってやってくれ。好きな女の浴衣が見たいって気持ちをさ」
「はい」
「だったらあそこに座ってる馬鹿に声をかけてやってくれ」
勇一の言葉に柚子葉は少し笑みを浮かべて頷き深夜のところに近寄った。
「深夜」
「…何?」
「浴衣ありがとう」
「迷惑だったんだろ」
「ううん。そんなことないよ。ただ、少し強引だったかな」
「…悪い」
「もういいよ。せっかくの祭りなんだから楽しもうよ」
柚子葉の言葉に深夜はゆっくりと頷いた。
勇一は二人のやりとりを見て笑い出した。
笑い声を聞いた柚子葉が勇一のほうを向くと勇一は手を上げた。
「悪い悪い。ただ、深夜がな…」
勇一はそれだけ言うとまた笑い出した。
深夜も勇一のほうを向いて話しかけた。
「俺が何?」
「はぶててる子供にしか見えなくてな。母親に甘えてる子供に」
「…うっせぇ」
勇一はその深夜の言葉にもまた笑い出した。
深夜はまたそっぽを向いた。
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