STORY17-END 『柚子も柚子だ』
深夜は翔に顔を向けた。
「そうだろ?柚子が俺に愛想をつかす可能性だってあるし喧嘩して別れる可能性だってある。そういうもんだろ?」
「いや、確かにそうだけど…」
「さらに言えばお前と付き合う可能性だってある。これからどうなるかなんて誰にも分からないだろ」
「じゃあ、私と…」
「それはない」
「え?」
「これからどうなるか分からないこそ俺は今一緒にいたい奴と一緒にいたい。それが柚子なんだ。だから、俺はお前と付き合うつもりはない。それにお前はさっき柚子を侮辱した。次に侮辱したら殴るぞ。だから、さっさとここから去れ。それと多分俺を好きになったのは昨日だろ?」
「はい。昨日助けてもらったときに好きになりました」
「あれは別に正義感とかそういうもんじゃない。ただ、俺が出ないと柚子が出ていったから。柚子が危なかったから泥棒を捕まえただけだ。勘違いするな」
「…分かりました」
女子高生はそのまま深夜達から離れていった。
深夜は柚子葉のほうに近づくと柚子葉のおでこをつついた。
「柚子も柚子だ」
「え?」
「お前はあいつが言ったことを聞いて動揺したんだろ?それって俺を信じてないってことだろ?」
「ち、違う!」
「じゃあ、どういうことだ?さっき言ってた俺が勉強できるとかそういうことが原因なのか?」
「原因って言うか…私と比べて深夜はなんでもできるから…」
深夜は柚子葉の言葉を聞いてため息をついた。
どういえば柚子葉に伝わるだろうと深夜が考えていると傍で聞いていた翔が柚子葉に話しかけた。
「山下は今のままでいいだろ」
「え?」
「山下だから今の深夜があるんじゃないか?例えば…深夜と衛だって山下だったからこそまた元の幼馴染に戻れたんだと俺は思う。深夜も言ったとおり勉強とかは後からどうにでもなるけどそういったその人だけしかないもののほうが大事だと俺も思う」
翔に続いて真希と圭も柚子葉に話しかけた。
「そうだよ。柚子葉は山上がどんな顔で柚子葉を見てるか知ってるの?あんな顔をさせるのは柚子葉だからだよ」
「それに山上と柚子葉って私から見たらとってもお似合いだと思うんだけど。二人ともお互いをとても大事にしてるし信頼してるでしょ?そんな関係になってるカップルってホントに少ないと思うよ」
柚子葉は翔や真希、圭の言葉を聞いた後、三人の顔を見渡した。
最後に深夜の顔を見た。
深夜は一回頷き口を開いた。
「だとさ。それにそんな釣り合ってるとか決めるのは周りなんかじゃない。俺達がどう思ってるかじゃないのか?」
「…うん。そうだよね。私は今、深夜と一緒にいたい…」
深夜はゆっくりと柚子葉に近づき抱きしめた。
「それは俺もだよ。お前と一緒にいたいから俺はお前と付き合ってるんだ。だからもうあんなことで落ち込んだりすんなよ」
「…うん」
深夜はそのまま柚子葉の頭をポンポンと軽く叩いた。
そして、柚子葉を離して翔に顔を向けた。
「さて、そろそろ試合じゃないか」
「あぁ。もういいのか?試合に出ずに山下と一緒にいたほうがいいんじゃないのか?」
「それは駄目」
深夜と翔の話に柚子葉が入ってきた。
柚子葉は深夜の顔を見た。
「私はもう大丈夫だから。深夜は試合に出てよ。ね?」
深夜は笑って頷いた。
「分かってるよ。柚子はそういう奴だろ」
柚子葉は深夜の言葉の意味が分からずに首をかしげた。
深夜はゆっくりと口を開いた。
「お前は自分よりも他人のことに気を回すだろ?風邪を引いたときも、衛のときだって自分が危ないのに俺や衛のことを一番に考える。それがお前の長所だろ。まぁ、今回みたいに相手を思いやって落ち込むこともあるけどな」
深夜の言葉を聞いて翔や真希達も周りで頷いている。
柚子葉は少し照れてるのか頬が赤くなっている。
深夜は翔に近づいた。
「よし、行くぞ」
「よっしゃ」
柚子葉は歩いて行く深夜に声をかけた。
「深夜、頑張ってね!」
深夜は歩きながら後ろ向きに手を上げた。
その日の晩。
柚子葉は深夜の家に上がっていた。
今日は恭子がいるので秀太は下の自宅にいる。
一緒に食事を作り、二人で食事を食べた後リビングで二人でくつろいでいた。
「でも惜しかったね」
「あ?あぁ、サッカーか」
「うん」
サッカーの決勝は前半後半ともに1点ずつ入ったが決着がつかず延長までもつれこんだ。
が、延長でも点が入らなかったので結局PKで決めることになった。
お互い一本外し3-3になり最後の深夜達のクラスのプレイヤーが蹴ったボールはゴールの外に飛んだ。
相手のチームは決めたので4-3で深夜達は負けた。
が、深夜達は笑っていた。
実際決勝まで進むとは思っていなかったので満足のいく結果となった。
ちなみに、外した二人はチーム全員からデコピンの刑になっている。
「でも、悪かったな。せっかく応援してくれたのに負けちまって」
「ううん。深夜ちゃんとPKで決めたじゃない」
「そういってもらえると助かる」
深夜はそういってソファに横になった。
「あ〜、しっかし今日は疲れた」
柚子葉は笑って深夜に声をかけた。
「お疲れ様」
「…」
「深夜?」
柚子葉が深夜の顔を見ると深夜はすでに寝ていた。
最初は驚いた柚子葉だったがすぐに寝ている深夜の髪を撫でた。
「…お疲れ様」
柚子葉がそういって深夜のおでこに唇を落とすと寝ている深夜の顔に笑みが拡がった。
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