STORY17-2 『今日はうどんです』
マンションに着くと柚子葉と秀太は着替えてとりあえず深夜の家に向かった。
当然のことながら深夜の家には鍵がかかっていた。
深夜から預かった鍵で家を開けた。
柚子葉と秀太はとりあえず深夜の家のリビングに座って深夜を待つことにした。
柚子葉が秀太と遊びながら待っていると柚子葉の携帯が鳴った。
「もしもし」
『あ、柚子か?』
「深夜?終わったの?」
『あぁ。それで悪いけど俺これからカバンを取られた女子を家まで送っていかないといけなくなった。井上さんに頼まれてな。だからもう少しかかるけどいいか?』
「うん。あ、じゃあ私今日夕飯作るよ」
『そうしてもらえると助かる。冷蔵庫の中身なんでも使っていいから。じゃあ頼むな』
「任せて」
柚子葉は電話を切ると秀太に声をかけた。
「秀太。深夜もう少し帰るまで時間がかかるって」
「え〜」
「だから、今日は私がご飯を作るからいい子にして待ってるのよ?」
「うん」
柚子葉は元気よく頷いた秀太の頭を撫でて台所に向かった。
冷蔵庫の中身を見てみると材料は豊富に揃っていた。
とりあえずメニューを決めて柚子葉は調理を始めた。
料理を始めて1時間ぐらいしたときにインターホンが鳴った。
「はい」
『深夜だけど開けてくれ』
「あ、ちょっと待って」
柚子葉は玄関に向かい鍵を開けた。
鍵を開けると深夜が疲れた顔をして入ってきた。
「ただいま…」
「深夜、どうしたの?物凄い疲れた顔してるけど」
「送っていった女子の親御さんを説得するのに疲れた」
「え?」
「送っていったら『ご飯食べていけ』って言われてそれを断るのに結構時間がかかったんだ。本当ならもう少し早く帰れるはずだったんだけどなぁ。とりあえず俺着替えてくるわ。今日の晩飯何?」
「今日はうどんです」
「うどんかぁ。いいんじゃないか」
深夜はそう言って着替えるために部屋に入っていった。
柚子葉は台所に戻り料理の続きを始めた。
深夜が着替え終わり柚子葉に近づいてきた。
「柚子。何か手伝うことある?」
「ううん。もうできたよ。後は麺を入れるだけだから。でも、まだ入れなくていいでしょ?」
「あ〜、そうだな。もう少し姉貴たちを待つか」
深夜と柚子葉は秀太が待っているリビングに向かった。
リビングに行くと秀太が寝ていた。
深夜は秀太が寝てるのを確認すると自分の部屋に向かい上にかけるタオルケットを持ってきた。
柚子葉はそれを受け取り深夜に礼を言った。
「ありがとう」
「いいって。このぐらいでお礼言わなくても」
柚子葉は受け取ったタオルケットを秀太にかけてやった。
深夜は近くの椅子に座っていたので柚子葉も深夜の近くに座った。
30分ぐらいしても忍と勇一どちらからも連絡がないのでご飯を食べることにした。
柚子葉はうどんの準備を、深夜は秀太を起こした。
「ほら、秀太ご飯だぞ」
「うん…」
まだ寝ぼけている秀太を抱きかかえて深夜はテーブルに歩み寄った。
秀太を椅子に座らせてご飯を食べようとしたときにインターホンが鳴った。
深夜と柚子葉は顔を見合わせて柚子葉はもう一人分うどんの準備を増やした。
すると勇一が入ってきた。
「ただいま」
「勇兄おかえり」
「おかえりなさい」
「お?今日は山下一人で準備してるのか?」
「はい。座って待っててくださいね」
勇一はカバンを置いてテーブルに座った。
深夜に向かって話しかけた。
「何かあったのか?」
「ちょっと警察に捕まってさ」
「は?警察?」
「あ〜、飯食った後で話すわ。そんなに問題でもないし。なぁ、柚子?」
テーブルにうどんを3人分、それと秀太用に少し少ないうどんを持ってこちらに近づいてきていた柚子葉に深夜は話しかけた。
「はい。深夜は泥棒を捕まえたんですよ」
「へぇ〜、深夜がね」
「さすがに見てみぬ振りはできねぇよ。さ、飯食おうぜ」
深夜の言葉をきっかけにとりあえず夕食を食べ始めた。
食べ終えた食器は深夜が洗うことにした。
秀太は夕食を食べるとまたすぐ寝てしまった。
深夜が洗い物をしている間、柚子葉と勇一はリビングに座って話している。
「泥棒を捕まえたってどういうこと?」
「今日午前授業だったから二人で街に行ってたんです。歩いてると泥棒が出てきたから深夜が捕まえたんです」
「へぇ〜」
「俺がしないと柚子が前に出ただろ?」
洗い物を終えた深夜がリビングに近づいてきた。
勇一は深夜のほうを向いて口を開いた。
「どういうことだ?」
「俺よりも先に柚子が捕まえようとしたんだよ。そんなの危なくてさせるわけないだろ?」
「なんだ。結局山下がらみかよ」
「いや、別に柚子がいなくても俺は捕まえたよ」
「嘘っぽいな。まぁいいや。で、明日お前らは何に出るんだ?」
「私はバレーボールに出ます。深夜は?」
「俺?俺はソフトとサッカー。翔に付き合ってな」
「深夜運動神経いいもんね」
「そうか?普通と思うんだけどな」
深夜は首を傾げた。
柚子葉の言うとおり深夜はクラスの中でも運動神経があるほうだ。
だが、深夜には自覚がない。
勇一は苦笑しながら口を開いた。
「そういうものは本人は分からないもんだよ。まぁ、明日は二人ともがんばれ」
「あぁ」
「はい」
勇一の言葉に深夜と柚子葉は頷いた。
その後、家に帰った忍も合流して話を続けた。
やはり泥棒の話になると忍も驚いた。
「柚子葉ちゃんから何かあったっていうのは聞いてたけどそんなことしたの?」
「あぁ。俺いい奴だからさ」
「でさ、柚子葉ちゃん」
「おい、無視か…」
「明日クラスマッチなんでしょ?」
「おい、こら」
忍は深夜の言葉を無視して柚子葉に話しかけた。
柚子葉は笑いながら忍に答えた。
「はい」
「何に出るの?」
「私はバレーです」
「今までスポーツとかしたことあるの?」
「無いです。中学のときは何も部活入ってなかったですし」
「へぇ〜」
「深夜は何かやってたの?」
柚子葉に話しかけられた深夜は首を横に振った。
「いいや。俺が部活やってたわけないだろ?中学の時荒れてたし」
「それよりも前は?」
「小さい頃は兄貴達に教えてもらってたけど」
「何を教えてもらったの?」
「サッカーとかバスケとか?兄貴と勇兄に教えてもらってたんだ。とは言ってもほとんど玉遊びレベルだけどな」
二人の会話に勇一が入ってきた。
「お前がまだ小学生低学年のころだったよな?」
「そうそう。だから、本格的に習ったことはないんだよ。後は体育ぐらいだよ」
「へぇ〜、そうなんだ」
話してると寝ていた秀太が起き上がった。
が、すぐにまた寝始めた。
4人は顔を見合わせて苦笑を浮かべた。
「じゃあ、私は帰ります」
柚子葉は立ち上がった。
当然のように深夜も立ち上がり秀太を抱きかかえた。
二人は連れそって柚子葉の家の前まで歩いた。
「ありがと」
「いや、最近秀太重くなったよな?」
「そういえば確かに大きくなったかも」
深夜は抱きかかえている秀太を見ながら口を開いた。
柚子葉も秀太を見る。
確かに前に比べて秀太は大きくなっている。
家に着くと深夜は秀太を柚子葉に渡した。
「大丈夫か?」
「うん」
「じゃあ、俺帰るわ」
「おやすみなさい」
「あぁ」
深夜は秀太を渡し、そのまま自分の部屋に戻っていった。
柚子葉は深夜を見送った後、秀太を布団に寝かし自分も眠りについた。
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