STORY3-1 『う…。オネガイシマス』
日曜日。
柚子葉は家で秀太と恭子と一緒に朝食を食べている。
食べ終わった柚子葉が使い終わった食器を片付けていると秀太がリビングから柚子葉を呼んだ。
「ねぇねぇ、おねぇちゃん」
「秀太、どうしたの?」
「ボクこれみたい」
そういって秀太が指差したのは新聞に挟まれていた広告だった。
そこには『ヒーローショー』と書いてある。
これは秀太が好きな戦隊物のショーらしい。
場所を見ると近くのデパートだった。
「秀太これ見たいの?」
「うん!」
今日は特に友達と遊ぶ予定もない。
「よし。じゃあ見に行こうか」
「やった〜〜!」
柚子葉は残っていた食器を片付けて出かける準備を始めた。
出かける準備を終え恭子に声をかける。
「じゃあ、お母さん。行ってきます」
「いってきま〜す」
「あ、いってらっしゃい。あ、柚子葉。今日もお母さん帰ってこないから」
「分かってるよ。仕事無理しないでね」
柚子葉は秀太と一緒に近くのデパートに出かけた。
デパートまではバスに乗って15分ぐらいで着いた。
柚子葉が秀太を連れてデパートの中を歩いていると秀太がトイレに行きたいと言い出した。
「おねえちゃん。ボクトイレいきたい」
「トイレ?ちょっと待ってね」
柚子葉はトイレの看板を探した。
するとすぐに前のほうに見つけた。。
「秀太。あそこにトイレがあるの分かる?」
「え?…あ、わかる」
「一人で大丈夫?」
「だいじょうぶ」
秀太はトイレに向かって走っていった。
その後姿を見送って柚子葉は壁によりかかった。
「ふぅ〜」とため息をついて周りを見渡すと二人の男がこちらのほうに近づいてきた。
「あれ?君一人?」
「よかったらどこか遊びに行かない?」
「いえ、…結構です」
「そんなこと言わないでさ〜」
「ね?行こうよ」
男は強引に柚子葉の手をとって歩き出そうとした。
が、その前に柚子葉が横から出てきた手によって引き寄せられた。
「悪いけどこいつは俺と用事があるんだ」
「はぁ?お前誰だよ?」
「お、おい。こいつ山上じゃないか?」
「え?山上ってあの…」
「俺の名前は山上だけど何だ?」
「い、いや、何でもねぇ」
「行こうぜ」
そういって男達は柚子葉たちから離れていった。
柚子葉はまだ頭の整理ができていないようで呆然としている。
「山下?おい、山下」
「え?何で山上君がここに?」
「俺は本を買いに。そういう山下は?」
「私は秀太とヒーローショーを見に来たの」
「秀太と一緒だったのか。で、その秀太は?」
「え?あれ、そういえばトイレから帰ってこない」
『迷子のお知らせを致します。○○からお越しの山下秀太君が迷子になっています。至急ご家族の方は迷子センターまでお越しください』
「迷子だって…。あ、じゃあ迎えに行ってくるね」
「あぁ、俺も行くよ」
「え?どうして?」
「またナンパされてもいいのか?」
「う…。オネガイシマス」
そういわれたら反論の仕様がない柚子葉だった。
ということで柚子葉は深夜と一緒に迷子センターに向かった。
迷子センターはさっきと同じ階にあったのですぐに着くことができた。
「すいません。山下秀太の姉です」
「あ、少々お待ちください」
係りの人が違う係りの人に声をかけ、秀太を連れてきた。
「おねえちゃん」
「ごめんね。やっぱり一緒に行けばよかったね」
「ううん。あれ?しんやお兄ちゃんどうしているの?」
「ついさっきそこで一緒になったんだ。一緒にヒーローショー見に行こうか?」
「うん!」
「え!?」
秀太はその言葉に嬉しそうに頷いた。
が、逆に柚子葉は驚いている。
「ちょっと、山上君。こっちきて」
「ん?」
柚子葉は深夜を隅っこのほうに連れて行った。
「どういうこと?」
「どういうことってそのまま。俺も一緒にヒーローショーを見に行く」
「だからどうして?」
「今さっきからナンパされたり迷子になるのを見て二人だけで行かせるのは俺が怖い」
「う、それを言われると反論できません。でも、いいの?本買いに来たんでしょ?」
「別に明日でもいいし」
深夜は柚子葉を置いて秀太のほうに戻っていった。
柚子葉も後を追っていった。
「よし、秀太。行こうか」
「うん!」
秀太は嬉しそうに深夜と手を握っている。
それを見てもう断るわけにはいかないことを悟った柚子葉は迷子センターの係りの人にお礼を言って深夜とは逆側の秀太の手を握った。
そして、三人でヒーローショーを見に行くことにした。
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